山口県農業試験場跡地)山口市議会への請願
2025/06/13
https://ankei.jp/yuji/?n=2899 にこれまで経緯があります。
山口市議会への請願の趣旨 議員への説明のための お話メモ
長い名前の会の代表をしている、安渓遊地です。
「自然や文化」といったもっとも大切なものは、お金では買えないということを実証する研究所を妻と二人でやりながら、阿東徳佐で、家族農業をやっています。
私達は、30年度以上前から、化学物質に依存しない、持続可能性のある農業を求めて実践してきた農家です。
ただし、有機農業にこだわっているのではありません。会としては、農業の現場から見る持続可能な山口市・山口県の未来へ向けて、活動しています。
山口市民として「まちづくり」に参加したいという気持ちで、意見を提言し、情報の公開を求めていますが、山口県・山口市の回答は、一貫してゼロ回答でした。自ら定めた条例に反するやり方と言わざるを得ません。多くの市民から、署名が寄せられている実情を住民の代表である議員のみなさんに知っていただきたいという趣旨で今回の請願を提出いたしました。
請願書にも書いてありますが、山口市には 協働のまちづくり条例 というすばらしい条例があります。
第4条 市民は、まちづくりに参加する権利を有する。
2 市民は、市政に対して意見を提言する権利を有する
3 市民は、市の保有するまちづくりに関する情報を知る権利を有する。
第22条 市は、施策の立案から実施及び評価に至る過程の各段階において、その内容、効果等を市民にわかりやすく説明するよう努めなければならない。
2 市は、市民からの市政に関する質問、意見、要望等に対し、適切にこたえるよう努めなければならない。
国の法律でも、公共サービス基本法で、国民への情報公開を定めています。
現在から近未来にかけての市政の課題はなんでしょう?
全国的な昨年からの米不足と米の価格高騰などは、米どころ阿東でも例外ではなく、台湾米がスーパーに並んだりしました。
稲作農家をやっていたのでは、食っていけない、結婚もできなければ、子どもを大学に通わせることもできないという状況の中で、農家が激減しました。とくに山口県は、一経営体あたりの所得が、全国で下から5番目より上にあがったことがない、という最下位のグループに属しています。
そこへ、異常な夏の高温によって、お米の歩留まりが悪くなりました。作況指数101だから米はある、というのは田んぼしか見ていない調査不足で、未熟米などを取り除くと、6%ほど収穫は落ちています。
さらに、物価高騰で、肉や魚が買えない家庭では、米の消費が増えました。気づいておられるかわかりませんが、振りかけの需要が伸びています。
そして、備蓄米をすべて放出するという方針によって、輸入米に頼らざるを得ないというのが、政府の方針のようですが、有事の際に輸入できるという保証はありません。
そういう生存の危機を目前にして、県の農業試験場をどんどん縮小していく、という、山口県の間違った施策の末に今回の問題があるというのが、私どもの基本理解です。
山口県の風土の多様性に応じて、例えば阿東徳佐には、寒冷地分場がありました。それらを次々に閉鎖して、このたびは、瀬戸内海に面した防府市に集中し、なぜか大島柑きつ試験場だけは残されています。
大内の農業試験場跡地利用は、こうした、これまでの誤った施策の転回点になるか、農的にみれば自殺行為につながるかの分かれ目です。
われわれの提案の中に、大内地区住民の洪水への不安に対応するために、地下の貯水池をというものがあります。大きな予算が必要な貯水池がむずかしければ、現在の水田を、洪水の時期の遊水地とするという方法が、もっとも経済的で、河川管理の最近のトレンドにも一致しています。
現在求められている、未来のまち のそなえるべき課題は、
1)気候変動と生物多様性の喪失という危機(昨年7月「やまぐち生物多様性戦略」が公開されています)
2)人間社会においては、貧富の差の拡大により、誰もが幸せに暮らせるまちでなくなっていくという危機
3)子どもたちが、食べることや農山漁村の現場にふれる機会がないために、後継者が生まれないという危機 ではないでしょうか。
2023年2月発表の山口県総合計画「やまぐち未来維新プラン」(22~26年度)でも、
1 安心・安全、
2 デジタル、
3 グリーン、
4 ヒューマン
の4分野に力を入れる方針(朝日新聞2023年2月)
デジタルになれば、どれほど幸せになれるかは、かなり眉唾ものと私は思いますが、一方、山口市の「未来のカタチ」としては、5Gだの、水素利用だのが、柱になっていて、跡地利用のコンセプトは、
1.新しい価値観やライフスタイルに基づくまち
2.将来にわたり、自立発展できるまち
3.若者・子育て世代を惹きつける、山口の未来を牽引するまち
となっています。
失礼ながら、絵に書いた餅です。
安心できる食の確保ができなくて、どこに自立がありえますか? 新しい価値観やライフスタイルが支えられますか? 若者や幸いにして子どもがさずかった世代の求めているものは、何でしょうか?
先日、山口市の庁舎とのお別れの会で、「おむすびをつくって食べよう」というワークショップを開催しました。2日間とも満員で、子供連れの方が多く参加費を払って参加してくださいました。
その中で、阿東つばめ農園での農業のようすを聞かれた親子が、バケツで稲を育てたい、とわざわざ苗と土をもらいに来られました。
東京足立区には、都市農業公園というものがあって、わずか7ヘクタールと狭いのですが、人気のスポットです。子どもたちが牛の代わりにマグワを引いて、田を耕すなどのワークショップは、抽選でないと体験できないほどの人気です。
こうした、食べ物の生まれる農の現場に直接触れることなしに、子どもたちが未来の食を支える人材になることはありません。
そもそも、デジタル化推進の部局であった、未来のまち開発室に跡地利用計画を任せたことが、ボタンのかけちがえの始まりだったのではないでしょうか。
企業の参入希望をつのるサウンディング市場調査の結果は、昭和のバブルの金儲けのような、集合住宅と大規模商業施設だったではありませんか。中央商店街の人たちが怒るのも無理はありません。
このたび、山口市が実施したパブコメにも、一行だけ、「商業施設がほしい」と書いた市民がおられることは否定しません。
金のある人は、広島でも福岡でも、東京でも外国へでも買い物に行けるでしょう。そんなお金がない市民は、デジタル完備のりっぱな住宅や商業施設が出来ても、指をくわえて見ているしかないのです。それよりは、ありあまっている空き家を直してすまうとか、自分で作物を育てられる菜園教室のようなプログラムが必要なのです。昨年小鯖で実施した、肥料がいらない菌ちゃん農法の実習には、ひとり3000円の参加費を払って、老若男女70人もの参加者がありました。需要はあるのです。
だれひとり取りこぼさない、インクルーシブな山口市づくりと、持続可能な生活を軸に、計画を抜本的に見直す機会になりますよう、山口市議会のみなさんに請願を申し上げるしだいです。