土と健康)やまぐち有機農業公園の夢 という原稿が掲載されました
2024/11/11
日本有機農業研究会の機関誌『土と健康』No.528 2024年11・12月号 に掲載されました。
やまぐち有機農業公園の夢
山口市有機・環境保全型農業公園を造る会・代表 安渓遊地
足立区都市農業公園の実践に学び、夢実現へ!
私たち「山口市有機・環境保全型農業公園を造る会」は、18haを超える山口県農業試験場跡地を農業公園にすることを提案しています。有機の農地が広がり、ハウスもあって、動物たちとふれあえる。循環型の堆肥づくりから収穫された食材を食べるところまで体験して、学び、遊び、自然とともに生きる。研修・宿泊棟やテント村があり、県産材の本館棟は地域のコミュニティセンターを兼ねる。子どもたちが朝から晩まで過ごしたくなるそんな農業公園の夢を一枚の地図にまとめました。(https://ankei.jp/yuji/?n=2899)
「造る会」の代表をお引き受けした私は、四〇歳になる息子を中心に、島根県の津和野町まで一〇キロほどの山口市北端の高原にある「阿東つばめ農園」(写真1)で二〇一二年から有機の家族農業を実践している、もと大学教員です。「やまぐちの種子を守る会」の世話人である妻の安渓貴子とともに、瀬戸内海の生物多様性を守るために「奇跡の海」上関町での原子力施設計画への保全活動も続けています。
昨2023年4月、山口市大内地区の山口県農業試験場は、防府市にある県立農業大学校敷地へ合同移転し、跡地の再開発計画策定を山口県と山口市がコンサルタントに委託。参入したい企業の希望を聞く「サウンディング型市場調査」によって、同年11月に脱炭素のスマートシティとしての商業施設と住宅地開発の計画案が発表されました。この案に、山口市の中心商店街の店主たちは怒りました。1997年に大内地区に郊外型ショッピングセンター・ゆめタウンが進出したあと、商店街の人出は半減し、歴史ある百貨店も2008年に閉店に追い込まれました。この計画は、商店街にとって死活問題であるだけでなく、郊外への人口流出を加速します。人口減少と空き家の激増が進んでいる地方都市で、市民の意見でなく企業の希望だけを聞いた結末の昭和のバブル期のような計画案は、山口商工会議所を通じた強硬な反対で頓挫しました。
市民サイドからの提案を模索する中で、有機農業公園のアイデアが浮上。いまある農地やハウスや林地をできるだけ活かし、生物多様性国家戦略の「保護区」にもなりうる案を、今年8月に山口市と山口県に申し入れました。同時に開始した署名活動には、子どもたちが自然の中で自由に遊べるプレーパークを求めてきた人たちも賛同し、共感が広がっています。
時代を吹く風は変わったのです。有機給食への要望も高まっています。2050年に農地の4分の1を有機にするという国の目標に沿うオーガニックビレッジ宣言へ向けて、県内の市町が取り組む起爆剤にしたいですね。10月12日には、日本有機農業研究会理事長の魚住道郎さんを山口市にお迎えして、足立区都市農業公園での長年の実践を「『有機農業公園』にかける夢」としてお話していただきます。有機農業なんて非現実的と思ってきた山口県民の意識が変わることを楽しみにしています。
図1 わくわくしていつまでも見ていられると市民に好評のやまぐち農業公園(仮称)見取り図(©芥川愛子)
写真1 山口県初の営農ソーラーを導入した阿東つばめ農園での水田の除草(©岡本公一)
写真2 山口市中央商店街での署名活動に参加した市民たち(2024年9月27日)
写真3 筆者近影(©全京秀)