連載)阿東つばめ農園おひさま便り2022年4月 #戦争と真実 #有機給食_が開く未来 #津野幸人 #鮫田晋 #ロシナンテ社 #月刊むすぶ RT_@tiniasobu
2022/05/02
つばめ農園おひさま便り (28) ロシナンテ社の 『むすぶ』615号
内容の紹介はこちらから http://www9.big.or.jp/~musub/index2.html
安渓貴子・安渓遊地
戦争と真実
雪が少なく晴れた日が多いねと、田んぼの準備を始めているなか、ウクライナで戦争が始まってしまいました。「戦争の最初の犠牲者は真実だ」と言われるように、ニュースでもSNSでもプロパガンダの影響を受けていないものがなかなか見つかりません。戦争こそは最大の環境破壊であり、地球温暖化防止、SDGs等々というかけ声を吹きとばしてしまいます。チェルノブイリ原発をはじめ、稼働中の原発もロシア軍によって攻撃され、外部電源喪失も伝えられることは、福島の原発震災を経験中の日本として重くうけとめざるを得ません。阿東つばめ農園では、市民科学者・高木仁三郎さんが創設した#原子力資料情報室(https://cnic.jp/)を確かな情報源としています。
インターネットもスマホもなかった昭和一九年の冬、わたしたちの鳥取・大山山麓での初めての稲作の師匠だった#津野幸人先生(当時鳥取大農学部長)は、中学二年生の愛国少年でした。彼は、政府の発表を信じて特攻隊を志願。その時、四国松山の片田舎の一介の老農夫であった彼のおじいちゃんがこう言いました。「日本は負ける。お前らみたいな子供までが死ぬことはない。明日これで小指を切れ。小指がのうても百姓はできる」と牛の飼い葉を切る押し切りを指さしました。当時、国際的な情報を一切もたないおじいちゃんが、大本営発表などの圧倒的な世論工作とマインドコントロールに抗して、日本は負けるということが的確に判断できた根拠は、アメリカ移民の知人にもらった古い剪定鋏でした。
二〇年も使っているのに切れ味は新品同様、バネはびくともしていません。「百姓道具にこれだけのええ鋼鉄を使う国なら、兵器も日本のものとは較べもんにならんぞな」というのです。そして、中学校の宿題で集計をやらされている、敵の軍艦と戦闘機の被害数が本当ならば、日本まで敵の爆撃機が飛んでくるはずがあるまい、と付け加えたというのです(津野幸人、一九九一『小農本論―誰が地球を守ったか』農文協)。
津野先生のこの本には、日本列島で一億二五〇〇万人の食料が自給できるという計算も示されています。いま日本の食料自給率は三七%といわれますが、その生産を支える化学肥料の多くは中国からの輸入です。そして、カリ肥料の四分の一は、ロシアとベラルーシからです。いのちの支えを輸入に頼ってきた日本は、コロナと戦争と経済制裁で激化する食料・飼料・肥料の獲得競争で「買い負け」始めています。以下は、二〇一一年一月の津野先生の言葉です(http://ankei.jp/yuji/?n=1242)。
戦争のためだけに核武装があるのではない。核兵器は、経済行為における国際ルール違反を強行する後ろ盾となっているのである。……武器で食糧を生産することは絶対にできない。自国の国土を大切にして、そこから食べ物を生産するのがまっとうな道である。わが国土は、地下資源こそ乏しいが起伏に富んだ地形は、多様な風土と食糧生産に必要な面積、そして十分な降水を恵んでくださっているのである。国土のあらゆる起伏を利用して、皆で小さい農業をやろう。
有機給食がひらく未来
本当の平和を求めて、日本でいま私どもに何ができるのか。阿東つばめ農園では、食料とエネルギーの地域自給を主な目標にしています。有機農業は化学肥料の輸入に頼らないぶん、より安定した食料の国内自給につながる可能性があります。その未来へ向けた確かな道筋と考えられるのが、有機給食の導入です。
二〇二二年二月二六日に、山口環境保全型農業推進研究会(山口かんぽ研)等の主催で第三一回#山口県環境保全型農業フォーラムを開催しました。有機給食の導入で最先端を走る#いすみ市の具体的な様子を、山口市の会場といすみ市職員の#鮫田晋(さめだ・しん)さんを遠隔で結んで、詳しくうかがうい、質疑もかわしました。鮫田さんは、東京での会社勤めのころから房総半島の南の方へ趣味のサーフィンをするために通ううちに移住して、いすみ市の公務員になりました。「学校給食を地元の有機食材で」という、市長発案の取り組みのたった一人の担当になりましたが、いずれも一年でやめた三人の前任者のあとを継ぐ四人目でした。しかも、いすみ市というところは、有機農家がまったくいなかったのでゼロからの
出発となりました。
すべてが手探り状態におかれた鮫田さんは、農家を見つけて説得し、除草剤をまかないでも草に負けない稲作の方法を、#民間稲作研究所の稲葉光圀さんに師事して、それを伝えました。三度代掻きをして深水にすればヒエを抑えられるというのですが、忙しい農家の代わりに、毎朝水深を確認して回る「水まわり」を四〇日間やり抜いたりしました。とり組んで五年目の二〇一七年、ついに、いすみ市の学校給食に必要な四二トンの有機米を全量地元で生産できるところにこぎつけました。野菜にも広げて移住者も増えている現状は、当日の動画(http://ankei.jp/yuji/?n=2560)をご覧ください。材料はそろうの? 誰が払うの? などの疑問が解け、農協の巻き込み方などもわかります。
この連載の一五、一六、二五でお話してきた子どもたちの食の安全と、私たちの未来のために、平和への祈りをこめて種子をまき、育てていこうと思いを新たにしています。
(つづく)
