山口市とくぢ)口頭伝承と文化創造――重源上人を例に @tiniasobu #chogen #tokudi #manga #history
2011/03/02
奈良の東大寺と大仏殿が源平の戦いで焼けたあと、その再建を託された僧・重源の徳
地での足跡を追った修士論文を、安渓の指導する大学院生の中島美帆さんが書き上げ
ました。
それに関連して、口頭伝承を親しみやすいマンガにするというとりくみをしてくれま
した。ここではサバをめぐる奇瑞の物語ですが、こうしたものがまだまだできれば、
崩壊しそうな地域の伝承を未来につなげ、地域の自信をとりもどすためのひとつの手
がかりにもなるものと期待されます。
中島さんは、いま、紙芝居の作り方を習って、重源の紙芝居づくりに挑戦中です。
大学や大学院を出ても、地域に関わり続ける若者を送りだすという意味で、中島さん
の活動に注目しています。
以下が、修士論文の目次などです。
徳地の重源上人――文字に書かれた歴史と口伝
山口県立大学大学院 国際文化学研究科 中島 美帆
私はこれまで、大学での講義や地域での活動を通じて、山口県の歴史や文化に触れ
る機会があった。その中で、私は今日に伝えられてきた文書や伝承が抱える、いくつ
もの問題に気づかされてきた。それは、今日の歴史に対する関心の薄さ、口伝の伝承
者の高齢化、地域の過疎化等、関わる人が減っていくことで、歴史や伝承の存続がし
だいに困難になる重大な問題である。地域の財産でもある歴史や伝承を守り、生きた
ものとして後世に伝えていくにはどうすればいいのか、また、文書によって「裏付け
られた」歴史と、人々の間に「口頭で伝えられてきた」伝承の間にあるへだたりは何
なのか、それぞれの位置づけを、12世紀に今日の山口県徳地地域で活躍した、俊乗房
重源の事跡を例に考察する。
目次
Ⅰ はじめに
Ⅱ 研究の目的
A 歴史・口伝のおかれた現状
B なぜ今重源か
Ⅲ 実態
A 重源を知る
1 歴史の中の重源
2 伝承の中の重源
B 歴史と口伝の立ち位置 仮説――徳地の昔話と史跡、記録
C 口伝の力――地域の語り部
研究者や関係者、地域の方の意識――土地で研究活動を行った人々
Ⅳ 歴史と口伝の両立・保護
A 歴史が残すものの意味
B 口伝の意味と価値
Ⅴ 考察
謝辞
引用文献