受賞)10月20日鳥取市で、地方出版文化功労賞の特別賞を『奄美沖縄環境史資料集成』がいただきます
2012/10/15
ブックインとっとり という催しです。
2012年10月20日(土)鳥取県立図書館で
13:30~15:30第1部 表彰式・受賞スピーチ
15:30~17:00第2部 交流会
安渓遊地・貴子、沖縄から当山昌直さんが参加します。
受賞作3つとその受賞理由(奄美沖縄は最後に載っています)
http://www.bookin-tottori.co.jp/25.html
FBにも載っています。
https://www.facebook.com/events/284726924967203/
第25回 地方出版文化功労賞受賞作
第25回地方出版文化功労賞は、昨年の10月20日から10月25日、倉吉市立
図書館で開かれた「ブックインとっとり2011」に出品展示された全国の地方出版物(
対象約650点)の中から、各地区の推薦委員および一般の来場者による会場での投票
により13点を最終候補作として挙げ、11名の審査員が持ち回りで数カ月にわたっ
て審査し、本年7月1日の最終審査会において決定した。
その結果は以下のとおりです。
●第25回地方出版文化功労賞 奨励賞
『東北 ダイコン 風土誌』
著者 佐々木 寿(ささき ひさし)
[著者紹介] 佐々木 寿氏、1950年岩手県一関市生まれ。岩手県立一関第一高等学校、
東京農業大学卒業後、茨城大学大学院終了。76年から宮城県加美農業高等学校、宮城
県農業高等学校教諭を経て宮城県河南高等学校校長、宮城県石巻北高等学校初代校長
に就任し2011年定年退職。その間、文部省科学研究費奨励研究、宮城県教弘研究論文
最優秀賞二回受賞。文部省教科書検定調査審議会調査員、農水省東北農政局東北地域
農政懇談会及び食農教育懇談会委員・東北農政アドバイザー、全国高校農場協会東北
支部長、文部省学習指導要領改訂調査研究協力者、文科省生涯学習教材調査員、東北
大学非常勤講師、大学等での講演、各種研修会講師に従事。
現在、東北大学非常勤講師、日本農業教育学会、アジア太平洋農環境教育学会日本
支部、農耕文化研究振興会、生き物文化誌学会、良い食材を伝える会、山形在来作物
研究会、未来開拓者共働会議代表。
主な著作『ダイコン学級』(富民協会)『ダイコンの絵本』(農文協)他多数。
発行所 東北出版企画
山形県鶴岡市北区日枝鳥居上49-6 電話0235(23)9122
発行者 田村茂廣
体 裁 402頁 定価2,625円(税込)
発 行 2011年7月31日
<選考理由>
著者は昭和51年から農業科教諭として奉職され、昨年、石巻北高等学校校長を最
後に退職された農業教育のプロであり、農業に関連する研究や著書も多い。
東北の地ダイコンの多様さ豊富さに着目した著者は昭和60年から2年にわたり農
業学習プロジェクトとして、東北各地に残る地ダイコンを踏査し、それから20年を
経て各地を再度訪問し、かつてダイコンの資源としての貴重性や民俗などにおける存
在感が維持され、発展することを期待した結果と向かい合う。そして、失われたもの
もある一方、保存に尽力する多くの人との出会いに期待しつつ存続を願う。
また、ダイコンについての幅広い知見の提示に、東北のダイコンの多様さ(色、形、
大小、用途などの多様さはもちろんだが、葉しか食べないものまである)に驚かされ、
また、農耕にとって厳しい環境の中で、ダイコンを副食でなく「糧(主食の一翼を担
うもの)」として、その多様さを生みだし、さまざまに利用し、作り続けてきた東北
の懐の深さにも気付かされる。
文章は必ずしも達者でないところもあるが、そのダイコン(およびそれに象徴され
る食文化や風俗、それを作り続ける人々や地域、さらにはともに調査、栽培をおこなっ
た生徒たち)に対する強烈な愛情が端々から感じられる。
この本の帯に『ダイコンの秘密と魅力!!東北は「野菜の王様ダイコン」の宝庫。
その食文化と民族を解き明かすダイコン物語!』とあるが、まさに東北の各地で作ら
れ、糧を支えてきた多種多様なダイコンの栽培、特徴、用途、それを作り続けている
人々を長い期間をかけて調査し、守ろうとしてきた著者の集大成とも呼べる作品であ
る。
●第25回地方出版文化功労賞 奨励賞
『愛だ!上山棚田団-限界集落なんて言わせない』
編著者 協創LLP 出版プロジェクト
著者略歴
発行所 吉備人出版
岡山市北区丸の内2丁目11-22 電話086(235)3456
発行者 山川隆之
体 裁 196頁 定価1,575円(本体1,500円)
発 行 2011年6月25日
<選考理由>
岡山県北部の美作市(旧英田町)上山の農耕放棄された棚田が、LLP(有限事業責任
組合)の創立メンバーの一人の父親が田舎暮らしを始めたことをきっかけにして、プ
ロジェクトの一つとして生まれた英田上山棚田団(あいだうえやまたなだだん)によっ
て再び元の姿を取り戻していく過程と、それによって新たに英田の住民となるメンバー
が生まれたりする展開が軽妙でテンポの良い文章と写真でつづられている。
インターネットを通じて知り合ったメンバーの「やる前からあきらめるほどつまらん
やつはおらん」「やらんと後悔するより、やってから後悔したほうがナンボかましや」
というあまり肩に力を入れず、トラブルさえも楽しみながら乗り越えていく「おもし
ろがり」とノリの良さ,「上山の千枚田」を核として楽しむだけでなく地域の資源を
多角的にとらえ、ビジネスモデルとして持続可能なプロジェクトとして展開させる企
画、その展開と有りようで地元の住民とも信頼関係を築いていく過程など読みどころ
がたくさんある。
しかし、限界集落や農耕放棄地を知る人にとっては読後感が分かれるかもしれない。
たとえばこうしたノリの良い集団がそう多くない中で、問題を抱える地域は全国どこ
にでもあること、この本の中で地元に住みついて行う仕事が国の緊急雇用政策で賄わ
れ、今年を時限とした施策であることなど突っ込みどころは結構ある。それでもこの
本の中で展開されていることは地元にとって歓迎されており、こうした地域を維持発
展させることができる方法論のうち有力な一つであることは間違いない。
また、全体が関西風の軽妙さでつづられていることに、「そんな簡単なことではない」
と思われる方もあるだろう。しかし、プロジェクト全体を貫くこのノリの良さがこの
本の特徴であり多くの人が楽しみながらはたから見ると大変そうな事を継続できる力
の源でもある。
これからのこのプロジェクトの発展を願うとともに、この本に触発されて田舎を楽
しみながら守り、発展させていく人たちがたくさん生まれることを期待する。それが
なんだか出来そうに思われるところがこの本の魅力である。
また、この本は吉備人出版創立15周年記念公募作品優秀賞に選ばれたことによっ
て発行された。その顛末が巻末に期されている。これ自体もワイワイ騒ぎながら、新
たな才能が登場して本が作られていく過程と、選考されるかどうかの不安、選考され
てからのドタバタなど関西ノリで描かれていてクスッと笑わされる。楽しい本である。
●第25回地方出版文化功労賞 特別賞
『奄美沖縄 環境史資料集成』
編著者 安渓 遊地(あんけいゆうじ) 当山 昌直(とおやままさなお)
[編著者紹介]
安渓遊地(あんけいゆうじ)氏 1951年富山県生まれ。母方は加計呂麻島西阿室出身。
人類学・地域学専攻。山口県立大学国際文化学部教授、理学博士(京都大学)。
当山昌直(とうやままさなお)氏 1951年沖縄県那覇市生まれ。動物学専攻。
(財)沖縄県文化振興会史料編集室室長。
発行所 南方新社
鹿児島市下田町292-2 電話099-248-5455
発行者 向原祥隆
体 裁 842頁 付録資料DVD1枚 定価10,290円(本体9,800円)
発 行 2011年3月10日
<選考理由>
琉球弧の広い意味での環境に関する自然科学、人文科学両面からの幅広い論文集で
ある。
この本は大学共同利用機関法人・人間文化研究機構・総合地球環境学研究所の研究
プロジェクトの一環として行われた調査研究の論文集であり、こうした出版物が当賞
の対象として適当か、あるいは他の出版物と比較して選ばれるべきものかという疑問
もあった。
こうした本であることから八百ページ余りの分厚さ、論文テーマの幅広さと、中に
はディープなもの、硬い文章のものもあることなど読んで評価するのに苦労した審査
員も多かった。
特別賞に選ばれた理由は
1.こうした地方のさまざまな分野をまとめた本はその地域を様々な角度から理解す
る上で貴重な資料でありながら、なかなか簡単には発行されないものであり、地域に
とっての財産であること。
2.そうした意味で、編著者以外にも出版社が相当の覚悟と見通しを持たないと発行
されるものではなく、その意味で評価されるべき面があること(この辺りはあとがき
にも記載されている)
3.一部が印刷されているが、添付されたDVDに収録された沖縄戦前後に米軍によっ
て撮影された琉球弧の各島々の空中写真1439枚がその貴重さ、済州島で保存され
るにいたった過程を含めそれが残され、活用されるにいたる「物語」だけでなく、地
域のさまざまな場面での利用可能性があることである。
とくに図書館関係者からはこうした本の有用性が高く評価されたことを付け加える。
第25回 審査員 11名
審査員長 齋藤 明彦(鳥取県東部総合事務所長、元県立図書館長)
副委員長 北尾 勲 (鳥取県歌人会会長)
審査員 岩田 直樹(鳥取県立鳥取商業高等学校教頭)
金澤 瑞子(倉吉市文化団体協議会)
上田 京子(鳥取短期大学講師)
松本 薫 (作家・NHK文化センター講師)
松田 暢子(日野町立図書館長)
岡本 康 (元高等学校長)
田中 玄洋(学生人材バンク代表理事)
金田 倫子(情報誌『鳥取Now』元編集者)
真嶋 朋枝(前鳥取県立図書館長)
