本作り)InDesignなんて手に負えるかしらと途方にくれているあなたへ
2024/04/21
学術出版を自分でDTPするという難題を背負ってしまいかけている方への励ましです。
パソコンの前で気絶している猫をみて笑っているうちはよろしいですが、徹夜は美容にも悪いので、おすすめしません。ストレスは心臓にも悪いことは私の場合立証済みです。
さて、以下はマニアックな話です。
西夏文字などのややこしいフォントの学術出版で定評のある中西印刷の社長の中西秀彦さんが、以下の博士論文を執筆するために、メールで問い合わせてこられたことがあります。それで、安渓遊地のワープロとDTPの歴史を書いてお送りしたことがあります。2011年8月15日づけのメールの写しです。
https://researchmap.jp/hidecon/books_etc/10909294
お便りありがとうございました。
お問い合わせありがとうございます。
山口の安渓遊地・貴子です。
自分で版下をつくって本を、というのはいろいろ手がけていますが、いずれも安渓遊地が手がけましたので、安渓遊地が代理で申し上げます。
ワープロ歴は、1983年 富士通の OASYS 100J が始まりで、二つの研究室で1台を買ったのですが、130万円しました。
1986から88年にかけて、1年半パリにいましたが、そのときは、 MyOasys という、1行だけのディスプレイのポータブルを使用しました。
1988年ごろから NECのPC9801 を使い始めました。
(1)1989 African Study Monographs の Supplement 9 (Yuji ANKEI, アフリカの魚類の認知)
図は、ベルギーの博物館の出している魚の図鑑から線画をコピーして (c)Tervuren Museum をいちいち手で貼り付けたものを張り込んでいます。
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/68349
(2)1990年 同じく Supplement 13 (Takako ANKEI ソンゴーラ料理帖)
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/68357
この二つは、Koa-Technomate というソフトで書きました。OSはMS-DOSで
プリントアウトは24ドットのプリンター。フォントが自由につくれ、テキストファイルで運用できるところがよかったのです。柱は、自分で貼り付けましたが、そこだけは業者がやってくれました。
図をプラスチックのトレーシング紙にロトリングで書いたものを貼ったものでしたので、青焼きのゲラではうまくわからず、印刷上黒くつぶれてしまったものがあったのは残念でした。
(3)1993年3月31日発行で
山口大学教養部「いのちと環境」研究会編著『いのちと環境』山口大学教養部総合コース講義録第7号をだしました。
B5サイズ174頁の本文です。NECのPC9801RA2 と松ver6.0で、版下をつくってエプソンLP-3000で作ったと奥付にあります。アウトラインフォントの登場です。
図は紙をはりこみです。
本文用紙は SKリフレッシュ 55kg
表紙は レザック 175kgです。
(4)2001年10月30日発行の
日本生態学会中国四国地区会編『長島の自然――瀬戸内海周防灘東部の生物多様性』地区会報No.59:1-64
A4サイズで、これは ワード97を使いました。画像もワードで張り込んだものですが、CDのファイルが読み出せず、わたしどもがガボン共和国へいってしまったために、プリントアウトしたものから印刷されました。 https://www.esj.ne.jp/chugokushikoku/research.html
(5)2009年3月3日
安渓貴子『森の人との対話――熱帯アフリカ・ソンゴーラ人の暮らしの植物誌』AA研のアジア・アフリカ言語文化叢書47で、B5版 614頁。
https://ankei.jp/takako/?n=1880
作成したソフトは LaTeX2e
プリントアウトは、EpsonのLP-S5000、コクヨのLBPーFH1800というセミ光沢の用紙に打ち出して、pdfとともに提出しましたが、藤原印刷(株)東京支店さんは、紙からの印刷を選ばれました。
初めてのソフトで500枚を越える図(図は、主として鉛筆画スケッチから、Canon Lide50 や、キャノンのA3サイズが使えるスキャナーでスキャンして、フォトショップver7で汚れを取り、フリーソフトでeps化してはりこみ)や何ページもある表を打ち込んでいくのはたいへんで、編集にまる1年以上を要しましたが、Bantu語のセディラとアクセントが両方ついたフォントをウィンドウズ上で打てるソフトがないために10年の沈黙を余儀なくされたアフリカ研究の再開となりました。元データの整理には、桐 Ver9 を主につかい、Excel や OpenOffice、 置換のためのエディターとしてはMifes8を使用しました。
表紙はラフスケッチをしめして印刷業者に依頼しました。
(6)2010年に出した、『奇跡の海』http://www.nanpou.com/book/bok_300.html
です。使用したソフトは AdobeInDesign CS4 で、イラストレータCS4 フォトショップCS4も当然ながら少々つかっています。2晩ならって、いきなり本番で、カラー口絵までつくり、業者には、中扉と表紙だけを依頼しました。
生物多様性締約国会議COP10にまにあって 2ヵ月でできたので、「奇跡の本」といわれました。
(7)『奄美沖縄環境史資料集成』です。 http://books.amamin.jp/e99444.html
10人の仲間とともに、約3000通のメールをMLで交換しつつ突貫工事で仕上げたもので、(6)は実はこの作業のためのOJTであったのでした。InDesignが使える人4人が組んで編集作業をしました。
Adobe InDesign CS5 を使用し、たくさんの空中写真と、DVDもつけています。奥付にいたるまで自作で、業者さんは表紙を作っただけです。フォントは主に 小塚明朝 と イタリックの高さを合わせるために CenturyOldSt。小塚ゴシックとはMyriadProを組み合わせています。
あとは、安渓遊地・貴子が中心になってやったのではありませんが、安渓遊地が、いちおう全体のリーダーシップをとりましたので書いておきます。
(8) 沖縄のボーダーインクという会社から出している、7冊のブックレットで、これは表紙デザインも帯もやっていて、業者さんは、ISBNを取るだけという究極の自炊?本。フォントは、MS明朝とMSゴシックです。理科系のミンゾク学ということで、あまり体裁にはこだわっていません。湿気の多いところなので、つくる季節によって表紙のPP張りが反る傾向がありますが我慢しています。
http://borderink.shop-pro.jp/?pid=12109730
(9)昨年は、名古屋で開かれた生物多様性条約締約国会議COP10に合わせて、美しいビラをつくったりしましたが、これは、デザイン系の学生にイラストレータでかいてもらって、・日本語と英語の2種類でネット印刷をしたものです。
http://ankei.jp/yuji/?n=1159 に表紙の雰囲気を示す図をのせています。
ヒラギノや Ryumin などのフォントも安く使いたいものとおもい、昨年度から macをノートとデスクトップと2台入れて練習中です。
追伸
よろしければお教えを賜りたく存じます。
Windows7 または Mac 10 Snow Leapard 上で
i + アクサンテギュ + セディラ
u +
I +
U +
とIPAと日本語、フランス語を同時に打てるソフトでLaTeX以外のものがありますか? ソンゴーラ語による神話、語彙集 (ソンゴーラ語、スワヒリ語、フランス語、英語、オランダ語、日本語が必要です)
必要ならLinuxも使えないわけではありません。
2024年4月21日追記
最後の質問は、ワードやてディターで動くソフトで、実現できることが2023年に、やっとわかりました。
画像で添付しています。インデザインファイルは、zipで添付していますから、解凍すればごらんいただけます。以下は、『アフリカ研究』への投稿の中でわかったことです。
(ソンゴーラ語表記のフォントについての追加情報です。
i í u ú の下に セディラを付けることがワードやエディターでも可能ということを教えていただいてたいへんうれしく思いました。
一般的に組版に用いられるAdobe InDesign で試しましたところ、欧文用フォントの多くで、重ね書きが可能ですが、等幅フォントでないと、重ね書きの結果、文字の中央にセディラが来ません。
いろいろ試してみた結果、等幅フォントの中で、Courierのみがうまく使えそうでした。ゴシックやイタリックも使えます。)
安渓遊地でした。
CombiningCedillaCourierFonts.zip (1,040KB)