学生レポート)自然神を信じる患者さん、外国からきた看護師はいやだという患者さん
2023/11/16
https://ankei.jp/yuji/?n=2620 で学生にした質問の答えの中から、とても感心した丁寧な回答を、御本人の了解を得て、無記名で貼り付けます。
写真は、Youtubeのトップ画面をお借りしています。
課題1 自然神に祈る人が患者さんだったら?
私と妻は、屋久島のおばあちゃんに、畑仕事をする時のお祈りの仕方をならって、うちの農園に農業実習に来る学生らとも共有しています。そのおばあちゃんのお祈りの中に「診療所の祈り」というのがあります(参考文献2)。おばあちゃんが、母親から教えられたこととして、「病気した時でも、医者ばかりにかからずに、神仏と医者と両方から攻めなさいよ、と母に言われました」と語られています。こういう考え方について、ケアの専門家をめざすあなたはどう考えますか?(正解はありません)100字以上
課題2 外国から来ている同僚について(その2)
前回は、イスラームのお祈りのできる部屋と時間の確保という課題に、好意的に答えた方が多かったようです。洗面台があれば、足を洗うのはポリバケツがあれば足りるかもしれません。それでは今回も、近未来のあなたの職場でのことを考えてください。
あなたの職場の同僚に、外国からの看護師や介護福祉士が、難関の日本の国家資格を取得して働いています。ところが、施設の利用者のお一人がこんな不満をもって、あなたに交代してほしいと言い出しました。「はあ、フィリピンから来たAさん、あんとは、わしのいうそがいっそつうじんそじゃから、やれんにーね。」つまり、方言で言っても通じないし、インドネシアからきたBさんのように、イスラムやら一夫多妻やら、日本人から見たらわけのわからん暮らしをしている国から来たような人に見てもらうのは絶対いやだ、というのです。
この利用者さんに、あなたはなんと言って説得しますか?
(「正解」はありません)字数制限なし
文中での引用の示し方は、まだ身についていませんが、こんな考え深い、やさしい感性をもった人がケアの現場にいてくれたら、どんなにうれしいでしょう。
課題①
地球温暖化や地震などの自然災害は時に私たちに不安を与え,一瞬にして当たり前を奪 う。それと同時に自然や動物は癒しを与え,私たちに何か語りかけてくれていった自然に守られているような雰囲気を感じることもある。しかし、私たちは、自然に何か与えることが出来ているのだろうか,自然の声を聴くことはできているだろうか。そのような疑問や反省を自然界に届けるため、患者さんは自然界に祈っているのではないかと私は考える。そのため、私は自然神に祈る人が患者さんの考えを尊重、共感したいと思う。また、そのうえでケアを行っていきたいと思う。
自然神に祈る患者さんの考えを聞いたとき、松下耕作曲の合唱曲「ほらね」の
「川は風と 語り合っているよ 鳥は花と触れ合っているよ 日差しは木の葉とじゃれあっているよ 雨は蛙と頷き合っているよ」
「魚は波と競い合っているよ 山は雲と呼び合っているよ 窓 はピアノと微笑み合っているよ 雪は灯りと見つめ合っているよ ほらね 僕らは一人じ ゃない きっとね 誰も一人じゃない」
という歌詞を思い出した。ほらね、の歌詞には自然 も動物や虫たちも私たちと共に生きていて支え合っていることを表現していると考えられ る。このような感覚を持つことが自然への畏敬と感謝につながるのではないかと筆者は思 う。
引用文献
“松下耕指揮「ほらね、」(信州大学混声合唱団)“信州大学混声合唱団 youtube https://www.youtube.com/watch?v=URxDb0VIoCQ (2023.11.2最終閲覧)
課題②
私は利用者の方にこのように説得しようと思う。
「私たちの教育が行き届いていないこ とや、説明不足から不安を感じさせてしまって申し訳ありません。これは彼らの責任でな く私たちの責任です。『現在、日本では、多くの外国人が介護現場で働いています。その 中には、国家資格である「介護福祉士」資格を有している方がいます。彼らは、介護福祉士国家試験に合格している、または、専門学校などで介護を学んだ人たちです』彼女もそ の一人です。日本で介護福祉士を取得するのは非常に難関といわれています。外国人労働 者が日本で働いている理由として『「家族の経済的支援」と「自身のキャリア形成」に大 きく二分され、日本での定住性が高いのは前者が動機として強い場合』が多いことが挙げ られます。また日本が外国人労働者を受け入れる理由として少子高齢化の中、「労働人口が減少し人手不足になっていること」が挙げられます。そのため、彼らは日本を支援しに きてくれているのです。しかし、今の日本では彼らの「外国人ケア労働者と介護施設との 間に立つ役割、つまり両者の文化を互いに翻訳して説明することができる人材」が十分で はありません。このような問題が利用者さんからでた不安のもとになっていると私は思う のです。当施設ではこれから利用者さんに不安を感じさせることのないよう、彼らの日本 語教育を行い、支援体制を整えていきますのでどうか、ご理解いただけたらと思いま す。」
このような説得で理解を得ることが出来なければ、私たちが、外国人労働者の心理面でのケアしていくことが重要であると考えられる。彼らをケアする中で最も重要なことは「移民の文化的背景について地域住民が理解するためには、誰かがそれを説明しなければならない。この「理解」が実現されるためには、竹内・池上がいう「文化的媒介者」の存在が欠かせない。」ことであると考えられる。文化的媒介者は、外国人労働者の日本語教育、生活面で彼らを支える人のことである。その実現のためにまず私たちが出来ることは「日本語能力によらず言いたいことが言えない環境では人間関係が築きにくい」雰囲気を作らないことであると考えられる。彼らがわからないことをわからないと言いやすい職場の雰囲気を作っていくことは私たちにとっても過ごしやすい職場ではないか。
引用文献
武内博子(2018)「外国人介護福祉士が捉えたうまくいかなかったコミュニケーションの 要因」『日本語研究』38,59–74.
高畑幸(2011)「外国人ケア労働者をケアするのは誰か―経済連携協定により受け入れた フィリピン人介護士候補者をめぐって」『社会分析』38,43-60.
対馬 宏(2021)「日本国内における外国人労働者の必要性に関する一考察――長期的, 包括的視点より」『東洋学園大学紀要』29,79–88.
専門性を活かして在留資格「介護」で働く全国で活躍する 10 名の介護福祉士を紹介します!外国人介護職員活躍事例集 公益社団法人 日本介護福祉士会(2023)(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001118251.pdf(2023.11.2最終閲覧)