食べ物やの話)青年失業家の誕生秘話
2019/12/25
自然豊かで巨木が魅力のある島に通っていた頃の話です。
島でいちばん大きな町で、お昼に食堂へ行くとしたら、まよわずに、まず第一はラーメンやなのですが、ここのカレーも実においしい。ラーメンにするかカレーにするかが悩みの種だったのです。
厨房で話をきいたところ、例えば豚骨ラーメンのスープは、ガスの火で3時間炊くのですから、燃料費だけでもたいへんなものでした。
さて、この食堂のシェフやかいがいしく働いている女性達の住む中天の村でのこと。インドの旅からもどった青年が、下界の街角の小さな喫茶店を改装してあたらしくカレーやを開くというのです、村中の人たちがあつまって話を聞いています。もちろん、ラーメンとカレー屋のシェフもいます。
シェフ「どんなカレーにするつもりなの?」
青年「野菜カレーです」
シェフ「肉とか海鮮とかはない?」
青年「一切ありません。ベジタリアンカレー単品です」
シェフ「それでもだしが効いているとか?」
青年「いや、味は薄めです」
シェフ「お値段は?」
青年「やや高めで考えてます」
シェフ「ここに、業務用の寸胴鍋がある。これを君にプレゼントしよう。青年失業家の誕生を祝って!」
……シェフの言葉どおり、開店から2か月目には、店はなくなっていました。
ラーメンとかカレーとか沖縄スバとか甘い物とかの単品で勝負するお店は、その一品で客をまいった! と言わせる 力 が必要で、ヘルシーな家庭料理とは違う「魔力」のようなものをもっていなければいけないのだと思います。