20 年前の問い)2012年には「 #いのち と #環境 」は、どうなっているか #鬼頭秀一 さんとの問いを検証する RT @tiniasobu
2012/02/02
文一総合出版からでている、地球研列島プロの最終報告論文集全6巻のはじめの1冊
シリーズ 日本列島の三万五千年──人と自然の環境史
『第1巻 環境史とは何か』
http://bun-ichi.seesaa.net/article/182437069.html
に安渓遊地が書いた、
「足もとからの解決――失敗の歴史を環境ガバナンスで読み解く」
の冒頭部分を紹介しておきます。ちょうど問いかけから20年がたち、検証すべき時が
きました。
以下の答えをみて、絶望にひしがれる気持ちもしますが、それでもできることを求
めて懸命に取り組んできたことは間違いないのです。
現状の一部で、例示にすぎません。小出裕明さんのおっしゃるように、敗北につぐ敗
北のようですが、最終的な敗北とはおもっていません。絶望的であることを直視せず、
できもしないこと(エントロピー増大の法則を無視した「徹底的な除染」など)に夢
を託すことこそが絶望です。その意味で、
絶望的と認めて行動にたちあがることと、
絶望して座り込むこと
はまったくちがいます(文末のメイシーさんの本を参照してください)。
1.福島第一原発事故
2.辺野古の海を埋め立てさせない
3.TPPはいかんだろう
4.手前味噌ですが『奄美沖縄環境史資料集成』などはそのためにつくりました。
5.http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090221/1235205500
6.年越し派遣村を応援する
7.限界集落と人間らしく暮らせない「限界都市」
8.9・11と「テロとの戦い」でも、合州国も国防費削減せざるを得ないところ
に
いのちの危機の時代を生きる
かつて私は、一二人の仲間とともに、若者たちに次のように問うた(安渓・鬼頭、
一九九二)。
0.今日うまれた子どもたちが成人する二〇一二年に、われわれの地球はいったい
どうなっているでしょうか。
1.そのとき、われわれは、健全な水と空気と土を、彼女らや彼らに手渡せるでしょ
うか。
2.緑なす熱帯の森とそこに住む人々や動物たちは、その時も生き残っているでしょ
うか。
3.日本の農業はまだ元気でいるでしょうか。田舎の村々には老若男女の声が響い
ているでしょうか。
4.自然を畏怖し、その自然に生かされてきた人々の知恵はしっかりと受け継がれ
ているでしょうか。
5.今、世界中で話されている二千とも三千ともいわれる言語のうち、はたしてい
くつがしゃべられ続けているでしょうか。
6.ゆたかな、おもいやりのある心のひろがりが、人と人の間にも地域にも満ちて
いるでしょうか。
7.さまざまな差別と貧困や病いに苦しむ人々はもういなくなっているでしょうか。
8.もう戦争の不安におびえることはなくなっているでしょうか。
今まさに、われわれは、「いのちの危機」の時代を生きています。二一世紀の到来
を目の前にして、この地球にともに生き、これから生を享けていくことになる、人間
を含むすべての生命にたいして、わたしたちはどのように考えていったらいいのでしょ
うか。
これは、コロンブスの新大陸到達から五〇〇年という節目の年に、世界各地の文化
と自然の多様性の破壊の歴史への反省にたって、あらたな五〇〇年をいかに生きるべ
きかを問うたものであり、私にとっては、単に考えるだけではなく、そのはじめの二
〇年間の具体的な行動計画を見いだすことを自らに課した問いでもあった。
二一世紀に入ってから、例えば九・一一事件後の「テロとの戦い」の中で起こった
様々なできごとや、気候温暖化二酸化炭素主犯説の「不都合な真実」の報道などのた
めに、平和や人権や環境の、そして何より人類と地球の未来について、最近、すっか
り弱気になっているかもしれないあなたとともに考えてみたい。環境問題の深刻化で、
人類のおかれた状況が、霧の中の氷山にぶつかる寸前の巨大船に乗っているような状
態だとしても、破局を回避するさまざまなシナリオは理想主義的なもので、経済成長
を前提としたさまざまな活動をやめるわけにはいかないのが現実だ、と考えるかもし
れない。そうした考え方を政治学者D・ラミス(二〇〇〇)は、破局にいたるまでそ
れぞれの持ち場だけを見て日常生活を続けようとする「タイタニック現実主義」と呼
んで批判した。むしろ、状況が絶望的であることを正直に認めあうとき、そこから目
を背けていたときには得られなかった新しい希望がわいてくる(メイシー、一九九二)
。そして、自分の生きる場所である足もとこそが、問題解決の最前線なのだと気付く
のである。
(中略)
引用文献
安渓遊地・鬼頭秀一、一九九三「この講義のめざすもの」安渓遊地編『いのちと環境』
山口大学教養部総合コース一九九二年度講義録、山口大学教養部、山口
メイシー、ジョアンナ・R、一九八六『絶望こそが希望であるDespair and personal
power in the nuclear age』カタツムリ社、仙台
ラミス、ダグラス・C、二〇〇〇『経済成長がなければ私たちは豊かになれないのだ
ろうか』平凡社(二〇〇四、岩波書店から再刊)