上関)電力会社側と学会・研究者側の見解の相違が生じた道筋をたどる
2010/03/28
取材したいというマスコミからの質問があり、それに答えるために、情報を整理して
おきます。
1.電力会社側の資料
上関原子力発電所計画について中国電力が自社のウェブ上で公表している資料
http://www.energia.co.jp/atom/kami_menu.html
その中で、希少な動植物一覧
http://www.energia.co.jp/atom/kami_eco3_02.html
環境影響評価書などについては、電力会社自身は
ネット上で公開していません。そこで、以下に
上関原子力発電所(1,2号機)環境影響評価書、平成13年7月を掲載しておきま
す。
http://ankei.jp/yuji/?n=605 (1章から5章の5まで)
http://ankei.jp/yuji/?n=606 (5章の6)
http://ankei.jp/yuji/?n=607 (5章の10まで)
http://ankei.jp/yuji/?n=608 (5章の20まで)
http://ankei.jp/yuji/?n=609 (6章から8章)
順序は前後しますが、これに先立つ平成12年10月の環境影響評価中間報告書というの
があり、これ
は以下に載せてあります。
このような中間報告資料に基づいて、次のステップへの許可を申請した態度は、スポー
ツでいうフライングそのものですが、生態学
会の要望書でもきびしく批判されています。
http://ankei.jp/yuji/?n=740 (本文)
http://ankei.jp/yuji/?n=741 (資料 ハヤブサ・スナメリ)
http://ankei.jp/yuji/?n=742 (資料 カクメイ科貝類 と 潮間帯生物)
http://ankei.jp/yuji/?n=743 (資料 底性生物)
http://ankei.jp/yuji/?n=744 (資料 海藻草類 と 植物)
http://ankei.jp/yuji/?n=746 (資料 昆虫類 と 陸産貝類)
2.学会による批判
これらの報告の不十分さや中国電力の姿勢について、
日本生態学会は、総会の決議による要望書などの形で繰り返し批判してきました。
日本生態学会の2009年までの取り組みのまとめを以下に掲載しています。
http://ankei.jp/yuji/?n=808
2010年に入って、従来ばらばらに要望してきた日本鳥学会、日本ベントス学会と共催
して日本生態学会は、シンポジウムを催しました。
http://ankei.jp/yuji/?n=833 (1月10日 広島)
3.中電社長の最近の発言
いつもは、CSR担当の陰に隠れてでてこない社長などがマスコミの質問に答えて次の
ような見解を表明しました。
「自然に恵まれた、多様な生物に恵まれた周辺とは思っているが、そこだけがホット
スポットとは思っていない。」
詳細は http://ankei.jp/yuji/?n=852
4.三学会共同の要望書
これを受けて、3学会では、
建設予定地が生物多様性保全にとって大切なホットスポットであることを踏まえて
埋め立て工事を一時中断し、調査を行ってください、という要望をだしました。
http://ankei.jp/yuji/?n=870
2月15日に、中国電力広島本社に三学会の要望書を持参した佐藤正典・金井塚務・
安渓遊地の三名に対して、いつもは「社長に伝えます」としか言えない
担当者が、「これ以上あらたな環境調査するつもりはまったくない」と即答しました。
2度目の三学会シンポを東京の明治大学でもよおしました。日本魚類学会も後援に加
わっていただき、ほぼ四学会の体制になってきました。
http://ankei.jp/yuji/?n=890 (3月14日 東京)
5.日本生態学会の最新の要望書
ちょうど生態学会の年次大会が東大ではじまる直前であり、それまでに準備してきた
生態学会としては3度目の要望書となるものを総会で決議しました。
結論としては、以下の2点を要望しています。
1.日本国政府は、本年10月に名古屋市で開催される第10回生物多様性条約締約国
会
議の議長国として、上関周辺海域を含む瀬戸内海の環境保全を国家戦略の中に明確に
位置づけ、適切な対策を実施すること。具体的には、上関周辺海域を含む瀬戸内海の
総合的な学術調査を新たに実施すること。
2.中国電力は、上関原子力発電所建設計画にかかわるすべての工事を一時中断し、
当該海域の生物多様性に関する環境省主導の公正な調査の実施に協力すること。また、
当該海域が瀬戸内海の生物多様性ホットスポットであるという事実に照らして、本計
画の是非を再検討すること。
http://ankei.jp/yuji/?n=895
環境省に対しては、決議のあったその日の午後に、学会の重鎮が持参して田島副大臣
に手渡しました。
http://ankei.jp/yuji/?n=896
中国電力(山口支店に持参予定)と山口県庁に対しては、4月12日(月曜日)に持参
して説明をし、その後、県庁で記者会見もするということで調整しようと考えていま
す。
6.まとめ
以上の動きをひとことでまとめるならば、
上関の予定地の自然の価値について、中国電力側と学会・研究者の側の認識が非
常にかけ離れているということが指摘できます。
このぐらいのところは、瀬戸内海では他にもあるはずだ、という電力会社。
瀬戸内海全体、日本全体、世界全体の状況に目配りをしつつ、ここは生物多様性ホッ
トスポットとしてきわめて重要だとしている研究者。
こんどは5月に、光市で四学会が参加するシンポジウムを開催します。推進反対の立
場を問わず、(もちろん中国電力のみなさんも)ぜひご参加くださいませ。詳細はき
まりしだい、ここでお知らせします。
以上、文書作成は
日本生態学会自然保護専門委員・上関要望書アフターケア委員長
安渓遊地
でした。
ご連絡先は、
083-928-5496 (fax兼用)
〒753-8502 山口市桜畠3-2-1
山口県立大学国際文化学部
まで