上関埋め立て工事中断を!)3学会合同要望書は、2/15日付けで提出が決定
2010/02/14
安渓遊地です。
生物系の3学会合同で上関原発予定地の自然の保全についての要望書を決議しまし
た。
2月15日づけで、中国電力と 環境省に 持参することにしたいと考えています。
さっそく明日は、午後1時に 佐藤正典さんと安渓遊地が、広島市の中国電力本社
に持参し説明します。マスコミにも呼びかけます。
中国電力に電話してもファックスしても、担当者にメールをしても、休日というこ
とで返事がありませんが、
お仕事でこのページを見に来てくださっている、中国電力の担当の方、できる
だけ早めに対応してくださいますよう、お願いします!
2010年2月15日
中国電力株式会社取締役社長 山下隆様
上関原子力発電所建設工事の一時中断と生物多様性保全のための適正な調査を求める
要望書
生物学研究者の組織である3つの学会(日本生態学会・日本ベントス学会・日本鳥
学会)の環境保全関係委員会は、2010年1月10日、広島市の広島国際会議場で、「瀬
戸内海の生物多様性保全のための三学会合同シンポジウム」を開催いたしました。こ
のシンポジウムでは、「上関(かみのせき):瀬戸内海の豊かさが残る最後の場所」
という主題のもとに、中国電力の上関原子力発電所建設計画に対して3つの学会が提
出した合計10件の要望書が総括され、以下の点の重要性が改めて確認されました。
1)瀬戸内海西部の周防灘、とりわけ上関周辺海域は、瀬戸内海の本来の自然環境
と豊かな生物相が今なお良く残っているという点において、たいへん貴重な場所であ
る。ヤシマイシン近似種などの巻貝類、カサシャミセン(腕足動物)、ナメクジウオ
(原索動物)、ミミズハゼ類(魚類)、スナメリ(水棲哺乳類)、カンムリウミスズ
メ(鳥類)などの様々な生物群の希少種・絶滅危惧種が、この海域から相次いで発見
されているという事実は、他の場所ではすでに失われてしまった瀬戸内海の生態系の
本来の姿が、この海域にまだ保持されていることを示すものである。これは、瀬戸内
海全体の現状からみれば、「奇蹟的」とすら言えることである。したがって、今日の
国際的合意である「生物多様性保全」の見地から、ホットスポットとしての上関周辺
海域の環境保全には格段の配慮が必要である。我々の生存基盤を支えている生物多様
性を次世代に引き継がねばならないことは、生物多様性基本法(添付資料1参照)や
瀬戸内海環境保全特別措置法(添付資料2参照)にも明記されている。
2)中国電力による上関原子力発電所建設計画に係る環境影響評価(2001年)は、
この海域の特殊性に配慮したものとは言えず、問題の多いものであった。私たちは、
これまで一貫して、科学的により説得力のある環境影響評価を求めてきた。しかし、
中国電力は、私たちの要望を考慮することなく、海域埋め立て工事を着工しようとし
ている。
3)原子力発電所は、通常の運転にともない、同規模の火力発電所に比べて、より
大量の熱を海に捨てる。この過程(冷却水の取水•;放水)における急激な水温
上昇と付着生物防止剤(=殺生物剤)によって、水中の小さな生物(魚類の卵•;
稚仔を含む各種のプランクトン)が大量に死滅する。このため、原子力発電所の建設
は、海の生態系に対して、単純な海域埋め立てよりも、はるかに大きな影響を及ぼす。
上関は、半閉鎖的でかつきわめて生物生産力の高い内海に位置するので、この問題が
一層慎重に検討されねばならない。しかし、中国電力は、この点に関して十分な調査
と検討を行わないまま、「影響は少ないものと考えられる」と結論している(添付資
料3参照)。海外の研究例では、二枚貝の幼生プランクトンは付着生物防止剤に特に
弱いという知見がある。したがって、この問題に対する慎重な影響評価とそれに応じ
た対策を怠ったまま計画を進めれば、上関周辺だけでなく広島湾のカキ養殖等にも影
響が及ぶような漁業被害が発生する恐れがある。また、それに加えて、恒常的な温排
水の放出による局所的な水温上昇は、イカナゴに代表される冷水系の生物を減少させ、
熱帯性外来生物の瀬戸内海への侵入を促進する恐れもある。このような漁業被害が発
生した場合の社会的損失ははかりしれなく大きい。そのような被害を未然に防ぐこと
は、何よりも重要である。
4)カンムリウミスズメは、国の天然記念物であり、きわめて生息数が少
ない「絶滅のおそれがある種」として、世界的に注目されている海鳥である。中国電
力による調査結果を含めて、最近の研究によって、上関周辺海域が本種の周年生息域
である可能性が高まった。この地では、2008年以降、育雛中の家族群が毎年確認され
ているが、そのような場所は、他には全く知られていない。中国電力は、カンムリウ
ミスズメの保護のためにも上関周辺海域の自然環境保全に最善の努力をすべきである。
以上のことから、私たちは、中国電力に対して、次のことを要望します。
上関原子力発電所建設計画に係わる海域埋め立て工事を一時中断すること。
3学会から提出された要望書の内容に沿った適正な調査を実施すること。
以上。
日本生態学会・自然保護専門委員会 委員長 立川賢一
日本鳥学会 鳥類保護委員会委員長 早矢仕有子
日本ベントス学会 自然環境保全委員会委員長 逸見泰久
三学会からの要望書(日本政府)Ver11.pdf (119KB)