#広島県_#竹原市_)#LNG基地_と_#発電所 #ハチの干潟_#保全_をめざす生物系 5_#学会_から_#広島県海域利用審査会 への_要望書 _RT_@tiniasobu
2022/02/21
English version is available in http://ankei.jp/yuji_en/?n=2529
以前に
http://ankei.jp/yuji/?n=2523
http://ankei.jp/yuji/?n=2524
でもお知らせしておりました、ハチの干潟の保全をめぐる学会の要望書が、2021年9月9日 関係者に郵送されました。
http://ankei.jp/yuji/?n=2528
これから、この事業について、広島県海域利用審査会でに審査が始まるということで、5学会(うち4学会は各委員会)として、以下の要望書を提出いたしました。
以下に関係省庁向けの要望書を添付します。pdfでは、関係省庁と事業者向けの要望書および、参考資料を添付します。jpgは、参考資料と同じものですが、スマホで見やすいようにjpgにしています。文字化けする旧漢字などは、修正してあります。pdfが正式のものです。
2022年2月18日
広島県海域利用審査会
委員 各位
日本貝類学会多様性保全委員会 委員長 岩崎敬二
一般社団法人日本魚類学会 会長 瀬能 宏
一般社団法人日本生態学会中国四国地区会 会長 永松 大
軟体動物多様性学会自然環境保全委員会 委員長 安渓遊地
日本ベントス学会自然環境保全委員会 委員長 佐藤慎一
広島県竹原市「ハチの干潟」の生物多様性の保全に関する要望書
広島県竹原市竹原町の地先に広がるハチの干潟は、海浜性生物の種の多様性が著しく高い極めて貴重な干潟であり、環境省によって「生物多様性の観点から重要度の高い湿地」に選定されています。さらに、この干潟の周辺海域は「大崎上島北」として「生物多様性の観点から重要度の高い海域(略称「重要海域」)」に指定されています。特筆すべきは絶滅危惧種の多さであり、この干潟と周辺海域には、環境省レッドリスト2020または環境省海洋生物レッドリスト2017で、最も絶滅のおそれが高い絶滅危惧
I類として掲載された種がカブトガニやオキナノエガオなど少なくとも15種、次に絶滅のおそれが高い絶滅危惧II類として掲載されたものが少なくとも18種、準絶滅危惧として掲載されたものが少なくとも37種棲息していることが、広島大学や岡山大学等の研究者によって明らかにされています。
かつて、瀬戸内海の各所に存在した干潟のほとんどは、埋め立て、干拓、海域での人工構築物の設置や陸域の開発等によって消失または往時の姿が失われてしまいましたが、ハチの干潟は、瀬戸内海の沿岸生物のかつての豊穣な多様性が大変に良好な状態で残されている数少ない場所の一つであり、日本の沿岸生物の多様性保全の観点から最も重要な保全対象地域の一つと言えます。そのため、広島大学をはじめ、国立科学博物館、北海道大学、京都大学、岡山大学、高知大学、九州大学、国立米子工業高等学校、ドイツのAlfred
Wegener
Instituteなどの教育機関の研究教育の場となっており、この干潟の生物を扱った学術論文は近年だけでも20編以上が出版され、我が国の海洋生物学研究の大きな財産となっています。さらに、この干潟は、地域社会の環境教育の場として、広島県や竹原市などによって頻繁に活用されてきた場所でもあります。
現在、貴審査会の事前審査の対象となっているJBG Power
GmbH社と株式会社JBGエナジー社によるLNG火力発電所建設及び浮体式LNG貯蔵施設・桟橋設置に関わる計画は、事業者が、上記のようなハチの干潟の生物多様性の高さと絶滅危惧種の多さ等自然環境保全上の重要性を適切に評価しないまま策定されたものです。私たちは、本計画が実施された場合、ハチの干潟および周辺海域の生態系と生物多様性に、以下のような悪影響が及ぶ可能性があると考え、2021年9月に、事業者および環境大臣、広島県知事、竹原市長宛に別添の要望書を提出しました。
1:建設途中で発生する砂泥等の巻き上がりや陸地から海域への流出が、干潟を含む沿岸海域の生物の棲息場所や摂食活動に大きな影響を与える可能性がある。
2:建設途中に、外来海洋生物の移入手段として最もリスクが高い工事用台船等によって外来生物が持ち込まれ、絶滅危惧種を含む在来生物を減少させる可能性がある。
3:「火力発電所の冷却水はクローズドシステムとする」とだけ公表されているが、永久に同一の冷却水を使用するとは考えられない。海域に廃棄された場合、腐蝕防止剤等の汚染物質が水生生物に悪影響を与える可能性がある。
4:500
mもの桟橋とLNG貯蔵施設となる浮体物を設置した場合、沿岸流の流量や流向が変化し、わずかな変化であっても干潟の侵食や砂泥質土壌の粒度組成の変化が生じ、そこに棲息する生物たちに大きな影響を及ぼす可能性が高い。特に、カブトガニの産卵地は底質が限定されており、大きな影響を受ける可能性が極めて高い。
5:水深7 m ~ 15 mの浅海域に、喫水が5 m以上と想定される浮体式のLNG貯蔵基地を設置し、喫水が15
m以上と想定されるLNG運搬船が寄港するには干潟の沖数百メートルでの大規模な浚渫が不可避であり、上記と同様の沿岸流の変化が生じて干潟生態系に大きな影響を与える可能性が高い。
6:LNG運搬船によって、海外から外来海洋生物が自然度の高い海域に持ち込まれ、在来生態系を大きく改変する可能性がある。
7:LNG運搬船による座礁等の海難事故が生じた場合、干潟生態系に甚大な被害が発生する可能性がある。
特に、事業者宛の要望書では以下の4点を要望し、かつ計画の詳細を知らせるよう求めました。
A:一旦事業の進行を中止して、絶滅危惧種や希少種への影響を検討するための科学的に妥当な環境影響評価を実施すること。
B:その結果を公開して、第三者として、海岸工学、流体力学、保全生物学、底生生物学、プランクトン学等の専門家の判断を仰ぐこと。
C:その環境影響評価の結果、ハチの干潟とその周辺海域に棲息する生物への影響が予測された場合、計画を変更してその影響を回避する方策を講じるか、回避できない場合には計画そのものを中止すること。
D:上記の要望3点に関する貴社のお考えを、書面にて、早急にご連絡いただくこと。
しかし、事業者からの回答はありませんでした。
「広島の海の管理に関する条例」によれば、海域の使用許可に関する広島県知事の許可または不許可の処分に際しては貴審査会の意見を聴かなければならないこととされています。貴審査会におかれましては、「瀬戸内海環境保全特別措置法」(下記参照)の第二条に明記されている瀬戸内海の環境保全の基本理念に則り、当該海域が瀬戸内海の環境保全上きわめて重要な特別な場所であるという観点から、事業者に科学的に妥当な環境影響評価を実施するようご指導いただきますよう、要望いたします。また、火力発電所建設時及び稼働時の海洋生物への影響、賀茂川からの流出水・潮汐流・沿岸流の動態の把握と計画実施後の変化、干潟底質粒度組成の場所ごとの動態の把握と計画実施後の変化、遊泳・浮遊・底生生物への影響(特に
少種への影響)、外来生物侵入の影響、LNG運搬船座礁事故の発生リスクとその影響、などに係る客観的なデータに基づいて、上述の1~7の可能性についてご検討いただき、今回の計画について厳正に審査していただきますよう、要望いたします。
以上
この要望書に関する連絡先
日本貝類学会多様性保全委員会 委員長 岩崎敬二(奈良大学文学部地理学科教授)
〒631-8502 奈良市山陵町1500 奈良大学
E-mail: iwasaki(a)daibutsu.nara-u.ac.jp、Tel: 0742-41-9591
日本生態学会自然保護専門委員会 中国・四国地区委員 伊谷 行(高知大学教育学部教授)
〒780-8520 高知市曙町2-5-1高知大学教育学部
E-mail: itani(a)kochi-u.ac.jp、Tel: 088-844-8415
【参考】 瀬戸内海環境保全特別措置法(抜粋)
(目的)
第一条
この法律は、瀬戸内海の環境の保全に関する基本理念を定め、及び瀬戸内海の環境の保全上有効な施策の実施を推進するための瀬戸内海の環境の保全に関する計画の策定等に関し必要な事項を定めるとともに、特定施設の設置の規制、富栄養化による被害の発生の防止、自然海浜の保全、環境保全のための事業の促進等に関し特別の措置を講ずることにより、瀬戸内海の環境の保全を図ることを目的とする。
(瀬戸内海の環境の保全に関する基本理念)
第二条の二
瀬戸内海の環境の保全は、瀬戸内海が、我が国のみならず世界においても比類のない美しさを誇り、かつ、その自然と人々の生活及び生業並びに地域のにぎわいとが調和した自然景観と文化的景観を併せ有する景勝の地として、また、国民にとつて貴重な漁業資源の宝庫として、その恵沢を国民がひとしく享受し、後代の国民に継承すべきものであることに鑑み、瀬戸内海を、人の活動が自然に対し適切に作用することを通じて、美しい景観が形成されていること、生物の多様性及び生産性が確保されていること等その有する多面的価値及び機能が最大限に発揮された豊かな海とすることを旨として、行わなければならない。
2
瀬戸内海の環境の保全に関する施策は、環境の保全上の支障を防止するための規制の措置のみならず、地域の多様な主体による活動を含め、藻場、干潟その他の沿岸域の良好な環境の保全、再生及び創出等の瀬戸内海を豊かな海とするための取組を推進するための措置を併せて講ずることにより、総合的かつ計画的に推進されるものとする。
3
瀬戸内海の環境の保全に関する施策は、瀬戸内海の湾、灘その他の海域によつてこれを取り巻く環境の状況等が異なることに鑑み、瀬戸内海の湾、灘その他の海域ごとの実情に応じて行われなければならない。
以上、情報共有は、
軟体動物多様性学会・自然環境保全委員長
日本生態学会・自然保護専門委員(エネルギー問題担当)
安渓遊地 です。