島の知恵)#正しい盗み方_と_#正しい盗まれ方 どんなに貧しい境遇でも飢えて死なせることは絶対にいけない #与那国島 RT_@tiniasobu
2020/01/20
http://ankei.jp/yuji/?n=362 にほんの少しだけ触れている、与那国島での作物の「正しい盗み方と正しい盗まれ方」ということに興味をもってくださる方があるので、少しくわしく載せておきましょう。
簡単にかくと次のようになってしまいますが、そのおおもとの対話篇を再現しておきましょう。
気をつけていないと、夜の間に畑からイモかずらを盗まれることがあった。家庭の事情などで、どうしても食べていけなくなったような場合などは、他人の畑からイモかずらを盗むこともあったが、サツマイモの成長に響かない範囲で少しずついただく、というのが与那国島での「正しい盗み方」の作法であり、また、その現場を発見しても、遠回しに持ち主が来たことを悟らせるのが「正しい盗まれ方」とされている。
島の伝承者 N子さん との対話から
◎正しい盗み方と正しい盗まれ方
――(質問)『南島の稲作文化』(法政大学出版局、1984)にのせてもらった「与那国農民の暮し」をまとめていて気付いたんだけど、与那国では、遠い所に野菜畑をもつと野菜を盗まれるとか、刈った稲束を盗まれないように夜は泊って番をするとか、農民の生命線のサツマイモの蔓までも盗まれることがあったってね。ところが、八重山一般どこもそうだったと思うけど、例えば波照間島では、道に財布が落ちていたら近くの石垣の上に載せるけれど、財布の色があせるまで置いてあっても誰ひとり盗る者はいないというでしょ。この2つのことはどういう関係になるんでしょうか?
それはね、両方ともあるわけ。矛盾はしないのよ。畑のものは、人の命を支えるものでしょう。これには、正しい盗み方と正しい盗まれ方があるのよ。
あなたが、畑をもっているとして、その畑に出かけてみたら、誰かがあなたの畑のものをとっていたとするでしょ。その時は、面とむかって叱ることはできないのよ。呟払いとか大声で歌をうたいながら近づくとかして、相手に持主がきたことをきづかせるようにしないといけないのよ。それが正しいとられ方。
わたしが、父に連れられて、初めて正しい盗み方をならったのが、小学校の2年生くらいの時だっかしら。台風で枯れてしまったイモカズラを畑に植えるために盗みにいったことがあったわ。被害を受けている所は多いのでなかなか捜せないけれど、よく考えて切り取るわけ。とってもドキドキしたけれど、父が「どうせとるなら、ちゃんといただくのだ」と励ましたので、そういうものかと思って、一生懸命にとった。
その後、ひとりでヤギの餌をとりに行ったときの話。なかなか草が捜せないので、ある人の畑でイモの蔓をとらせてもらうことにしたのよね。長さ2尺ぐらいずつ、あちこちからイモの成長に響かないように、切りとっていたら、持主が出てきて、いきなり「コラーッ」と叱るのよ。正しいとられ方を知らない人だと思って、私も腹がたった。それから畑の両側に立って押問答したわ。
「ちゃんととらんか!おまえは」と大声で叱られるから、
「ちゃんととってるのに!」と言い返したら、持主が、
「これが、ちゃんとか!?」とどなるので、見にいったら、幅1メートルぐらい、長くビーッと鎌で刈り取られているわけ。でも、
「これは、私のしたことじゃあないわよ!」と言って反論して、いつまでも言い合いをしていたことがあったわ(笑い)。
これはね、どんなに貧しい境遇にある人でも、その人を飢えて死なせるようなことをしては絶対にいけないということを教える、すばらしい与那国の智恵だと思うな。