2024/10/14) 上関でシンポジウム 「奇跡の海」を未来の子どもたちに の記録
2024/10/14
2024年10月18日
安渓の発表は、中野さんの発表に「世界の約束」という言葉がでてきたので、急遽谷川俊太郎さんの詩、木村弓さんの作曲の「世界の約束」(アニメ「ハウルの動く城」の主題歌)を出囃子としめくくりに加えました。前日の10月13日に見た「夢みる給食」の映画に出てきた、大分県さいき市の、「オーガニック憲章」も紹介するプレゼンになりました。pdfを添付します。ロビーでは、写真展や、定置網でとれたお魚の即売もあって、賑やかな会になりました。動画が整理できたら、またお知らせします。
10月8日 詳しい発表予定と当日配布予定の資料集(20ページカラー)をpdfではりつけました。
祝島の島民の会の代表の としちゃん、こと 清水敏保さんが、亡くなられました。まだお若かったのに、残念です。山秋真さんが『地球号の危機ニュースレター』No.532(2024年10月号)に発表された追悼文を共感をこめて読ませていただきました。https://ohdake-foundation.org/%E3%80%8C%E6%B0%B8%E9%81%A0%E3%81%AE%E9%9D%92%E5%B9%B4%E3%80%8D%E6%B8%85%E6%B0%B4%E6%95%8F%E4%BF%9D%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%AE%E3%81%94%E9%80%9D%E5%8E%BB%E3%82%92%E6%82%BC%E3%82%93%E3%81%A7/
上関町でシンポジウムがあり、そこでお話します。チラシを共有しておきます。
挿絵の出どころは、幕末に瀬戸内海の旅を許された植物ハンター ロバート・フォーチュンです。https://www1.edogawa-u.ac.jp/~tokim/shohyobakumatunihon.htm
日時:2024年10月14日(月・休)13:30
場所:上関町総合文化センター 多目的ホール
参加費: 無料
講師:中野恵(なかの めぐみ)さん公益財団法人日本自然保護協会 生物多様性保全部所属
演題:「世界が目指す《人と自然の共生社会》とナメクジウオから見た海の生態系保護の必要性 」
講師:武石全慈(たけいし まさよし)さん 北九州市立自然史・歴史博物館名誉館員。日本鳥学会会員。
演題:「カンムリウミスズメからタヌキまで:上関の生態系を考える」
講師:安渓遊地(あんけい ゆうじ)さん 人類学・地域学を研究。アフリカの物々交換研究で京大理博。山口県立大学名誉教授
演題:「上関中間貯蔵施設への日本生態学会要望書と《生物多様性やまぐち戦略》」
ホワイエ(ロビー)にて上関の自然を写した写真コーナーも同時に開設します。シンポジウム終了後、展示写真の紹介を実施。
主催: 上関の自然を守る会 / 共催:(公財)日本自然保護協会
安渓遊地がお話するレジュメ(Wordファイル)と資料集に掲載される抜粋のスライドを添付しておきます。
レジュメの内容
上関中間貯蔵施設への日本生態学会要望書と《生物多様性やまぐち戦略》
安渓遊地・安渓貴子(生物文化多様性研究所 )
一般社団法人日本生態学会の自然保護専門委員会は、上関町に計画案がある「使用済み核燃料の中間貯蔵施設」について、2024年6月に要望書をまとめて、中国電力と関係省庁に提出しました。「生物多様性を回復できなければ人類は滅びる」という強い危機感にもとづいて設定された世界目標を、日本政府も是認し、各都道府県で地域目標が定められる中、その目標と相容れない可能性の強い中間貯蔵施設建設計画については、慎重な環境影響評価とプロセスの透明性と公開が求められるという内容でした(別紙 https://ankei.jp/yuji/?n=2897 をご覧ください)。
2024年7月31日に、山口県は、環境基本計画を改定し、「生物多様性やまぐち戦略」を発表しました。そのなかに、「いのちと暮らしを支える生物多様性の保全」という項目があります。以下は、その抜粋です。現在の保護区を倍増するという山口県の目標にとって、環境省指定の「生物多様性の観点から重要な海域」の長島・祝島の重要性は明らかです。
「法令等による保護に加え、⺠間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」である上関での、国際社会との約束と矛盾する、生物多様性・いのち・暮らしの破壊につながる計画を山口県が承認しないよう働きかけましょう(以下、山口県県環境基本計画 https://ankei.jp/yuji/?n=2902 からの引用)。
世界では、2022(令和4)年12 ⽉に新たな生物多様性に関する世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、2030(令和12)年までに生物多様性の損失を止め回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ(自然再興)」の実現、2050(令和32)年までに「自然と共生する社会」の実現を目指し「30by30 目標」などが設定されました。国においても、2023(令和5)年3 ⽉に、「生物多様性基本法」に基づく「生物多様性国家戦略」を改定し、「30by30 (2030年までに陸と海の30%以上を保全する)目標」の達成に向け「自然共生サイト」の認定等の取組が進められています。
このような情勢を踏まえ、本県において、生物多様性が豊かに維持され、その恵沢を私たちや将来世代があまねく享受できるよう「多様な生態系の保全と健全性の回復」、「自然資源の持続可能な利用と地域の活性化」、「多様な主体による理解促進と⾏動変容の実践」を柱とした取組を総合的に進めます。
○ 本県の豊かな自然環境を保全し、県内に生息・生育する野生動植物の保護等を図るため、8 箇所の自然公園 、10 箇所の緑地環境保全地域、33 箇所の自然記念物、82箇所の⿃獣保護区等の指定が⾏われており、法令や制度等に基づく陸域の保護地域66の割合は14.2%となっています(注、安渓の発表スライドの地図=後掲=参照)。
○「生物多様性国家戦略」において重要な目標である30by30 の達成のためには、こうした法令等による保護に加え、⺠間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域を「自然共生サイト」として登録を進めていくことが必要です。
○ なお、海域については、県単位での保護地域の⾯積は算出が困難です。現在、国において、海域におけるOECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)に該当する地域の検討が⾏われています。
なお、シンポジウムで配布される資料集にも印刷される 日本生態学会自然保護専門委員会の要望書を以下にはりつけておきます。
瀬戸内海(上関)における使用済み核燃料中間貯蔵施設の建設計画に関する要望書
瀬戸内海西部の周防灘にある山口県上関町周辺海域は、瀬戸内海本来の豊かな自然環境と生物相が残された大変貴重な場所である(1, 2, 3)。スナメリ(水棲哺乳類)、カンムリウミスズメ、オオミズナギドリ、ハヤブサ、カラスバト(鳥類)、ヤシマイシン近似種やナガシマツボ(軟体動物)、カサシャミセン(腕足動物)、ヒガシナメクジウオ(原索動物)、多種類のミミズハゼ(魚類)、ビャクシン(植物)など、他にも数多くの希少種・絶滅危惧種・天然記念物に指定された種が生息することから、わが国の生物多様性国家戦略に掲げた「健全な生態系の確保」を実効する上でも非常に重要な地域と考えられる。
ところが、2023年8月23日、当該地域において島根原発と関西電力からの使用済み核燃料を受け入れる中間貯蔵施設の建設が新たに計画され、予定地のボーリング調査がおこなわれることとなった(4)。同予定地では、2001年から上関原子力発電所の建設も計画され、原子炉設置申請に向けた詳細調査の一部としてのボーリング調査が2005年に行われたが、作業時の汚濁水が漏れて付近の潮間帯上部に流入・沈着し、水質階級Ⅰ(きれいな水)の指標生物であるケガキ(5)の死骸が確認されるなど、生物相の変化をもたらしたことが知られている(6)。したがって、今回の新たな核燃料中間貯蔵施設の建設に伴うボーリング調査においても、同様の被害が起こる可能性が高い。
今回の長島における中間貯蔵施設の建設計画は、2011年から準備工事が中断している上関原子力発電所(7)の対象事業実施区域内で新たに提案された事業であり、開発の内容および規模等に照らし、環境影響評価法の定める環境アセスメントが求められる事業の対象外と位置づけられている。しかし、本事業が実施された場合、莫大な切土工事や埋め立て工事が必須であることから、上述した貴重な生態系への負の影響がはかり知れない。自然環境に対する一層の配慮が求められる昨今、環境影響評価法の対象にならない開発行為であっても、環境負荷が大きいと想定される場合には、環境アセスメント制度を参考に、事業者が自主的に環境に関する調査や影響予測・評価を行い、環境に配慮した開発を実現するために必要な環境アセスメントを行う事例が増えている。中国電力は環境影響評価法に準じて、科学的な調査・予測方法に基づき、その影響を定量的に調査し、透明性と公開の原則に基づいた環境アセスメントを実施すべきである。こうした手続は、上関のみならず瀬戸内海全体の環境保全のために不可欠である。
2022年12月に開催された生物多様性条約締約国会議(COP15)では、昆明・モントリオール世界生物多様性枠組みの中で「30 by 30 (陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全するという目標)」が設定され、日本政府としても、自然を回復軌道に乗せ、これ以上の生物多様性の損失をくい止め反転させるとしたネイチャーポジティブの方針が示された。今後、海域と陸域の生態系保全の重要性がますます高まる中、瀬戸内海西部の海域に対し、上関使用済み燃料中間貯蔵施設建設の環境影響を適切に評価することは、ネイチャーポジティブの観点からも強く求められる(8)。
以上のことを踏まえて、日本生態学会自然保護専門委員会は、予定地とその周辺海域に形成される多様かつ貴重な生態系を損ねないようにするため、中国電力(株)、利害関係者、および関係省庁に以下のことを要望する。
1.中国電力は、上関使用済み核燃料中間貯蔵施設の立地可能性調査にともなう伐採とボーリング調査そのものが環境に及ぼす影響を低減するために、上関原子力発電所の「工事期間中の環境保全措置」(9)に準じて、泥水等が海に流出しない工法をとること。
2.中国電力は、上関使用済み核燃料中間貯蔵施設の建設計画について、環境影響評価法に準じて、科学的な調査・予測方法に基づき、その影響を定量的に調査し、透明性と公開の原則に基づいた環境アセスメントを実施すること。
3.山口県・上関町・経済産業省・環境省・文化庁は、自治体および日本政府の生物多様性保全と文化財保護の方針にそって、当該の環境アセスメントが適正に行われ、その過程および結果が公開され、事業影響が適切に判断できるよう事業者に助言すること。
2024年6月20日 一般社団法人日本生態学会 自然保護専門委員会 委員長 関島恒夫
引用文献
1) 日本生態学会中国・四国地区会(2001) 『長島の自然』地区会報 No.59,
<http://www.esj.ne.jp/chugokushikoku/file/nagasima1.pdf#page=7>
2) 日本生態学会中国・四国地区会 (2006) 『長島の自然 (その2)』地区会報No. 60
<https://esj.ne.jp/chugokushikoku/file/nagasima2.pdf>
3) 日本生態学会上関要望書アフターケア委員会 (2010) 『奇跡の海: 瀬戸内海・上関の生物多様性』南方新社
4) Ankei, Y. & T. Ankei (2024) Biocultural Diversity of Suōnada in the Seto Inland Sea: Toward the Survival of the ‘Sea of Miracles’. 『山口県立大学大学院論集』 25: 1-18
5) 瀬戸内海環境保全知事・市長会議他編(2014)『瀬戸内海の海岸生物調査マニュアル』
<https://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000172374.pdf>
6) 日本ベントス学会 (2000, 2005, 2009) 上関原子力発電所建設計画に関する意見書および要望書,
<http://www.benthos-society.jp/kaminoseki-2015-10ver.pdf>
7) 上関原子力発電所・準備工事中断前の状況, 中国電力ウェブサイト
<https://www.energia.co.jp/atom/kami_jyunbi2.html>
8) 環境省(2023)「生物多様性国家戦略 2023-2030」<https://www.env.go.jp/content/000124381.pdf>
9) 上関原子力発電所・工事期間中の環境保全措置, 中国電力ウェブサイト
<https://www.energia.co.jp/atom/kami_eco2_1.html>
提出先
中国電力・山口県・上関町・経済産業省・環境省・文化庁
配布資料集サンプル.pdf (10,226KB)
上関の自然と中間貯蔵計画20241014 .pdf (5,595KB)