飯田哲也さんの判定は?)「処理水放出は安全で問題ない」対「汚染水放出は危険で問題」 RT @tiniasobu
2023/08/26
誤変換修正します(^^;) 汚染水保守派危険・問題だ → 汚染水放出は危険・問題だ
環境エネルギー政策研究所(ISEP)所長の
飯田哲也さんがツィッター(X)およびfacebookに流した処理水/汚染水問題の構図の考察です。
飯田さんの写真は、ISEPのホームページから。ゴミを捨てないでという2番目の写真は、@bib311lio さんのツイッターからいただきました。
「エコーチェンバー」というのは、自分たちの声だけがひびく小部屋というような意味のようです。その外側から、お互いの主張をバランスさせてみたら、6つの論点のすべてで、汚染水保守派危険・問題だ という主張に理があると判断されました。
以下引用
▪️全体構図
・完全に二極化してそれぞれがエコーチェンバーに入って、双方を「非科学的」と見做している
・日本政府が丸ごと一方のエコーチェンバーに入っている。
以下、双方のエコーチェンバーを私見と独断で対比してみる。
・「処理水放出は安全で問題ない派」を「処理水派」(処)と呼ぶ。
・「汚染水放出は危険・問題派」を「汚染水派」(汚)と呼ぶ。
▪️主要論点と双方の食い違い
(1)廃炉に必要?
(処)福島第一原発の「廃炉」には避けて通れない
(汚) 「廃炉」には無関係、むしろ優先度の高いことが数多くある(地下水流入の防止や水冷却から空気冷却への転換など)
・デブリ取り出しが可能か、可能だとしてそれが「廃炉」か?そもそも「廃炉」の定義もなく、「廃炉の在り方から再検討が必要
(評価)
「汚染水派」の批判が妥当
(2)代替案
(処)他にスペースもなく、放水が最も低コスト
(汚)すでに放出案は風評被害対策評価を考慮すると高コスト。水蒸気放出、コンクリート化、巨大タンク化など多くの代替案がある。
(評価)
「汚染水派」の提案が妥当かつ合理的
(3)安全論
(処)トリチウムは安全、濃度も告示限度以下に抑えている
・IAEAも安全と評価している
(汚)トリチウム以外の多種多様な放射性物質核分裂生成物(約200種)が含まれており、多くは計測すらされていない
・トリチウムも有機結合型トリチウムは生物濃縮を起こす可能性がある
・告示限度は敷地境界1mSv/年以下に過ぎないが、こうした一般環境への放出には、長期かつ集団被曝の確率的な影響を考えて少なくとも100倍の安全余裕度が必要
・IAEAは日本政府と東電の出したデータと評価を承認しただけ、そもそも原子力推進機関で、チェルノブイリ事故後にも被害を大きく過小評価した前科がある。
・人類が過去半世紀以上の公害、オゾン層破壊、気候変動などを引き起こす中で学んだ予防原則に立てば、未知・不可知のリスクを恐れるべき
(評価)
「汚染水派」の批判が真っ当で人類の叡智を踏まえている。
(4)他もやっている
(処)中国、韓国の原発からもトリチウムは大量に出ている
(汚)原発から必然的に出るトリチウムと、メルトダウンデブリの核汚染水とは根本的に違う。
・排水口から「出てしまう」トリチウムと、いったん地上で保管している「核汚染水」をわざわざ放出する行為は、意味合いが全く違う。
・再処理工場の排水は、トリチウム以外の汚染も懸念されるが、そもそも破綻した核燃料サイクルも再処理工場も止めることがベスト。
(評価)
「汚染水派」の批判が真っ当
(5)呼称
(処)処理済みであり「処理水」と呼ぶことが妥当
・汚染水と呼ぶと風評被害を招く
(汚)処理しても、なお汚染しており、正しく呼ぶことが重要
・風評被害以前に実害リスクも考慮すべき
・国がメディアに「処理水」と呼ばせる言論ファシズムの気配がある
・海外メディアは汚染水(Radioactive contaminated water) と呼んでいる
(評価)
「汚染水派」の主張が真っ当
(6)風評被害
(処)汚染水と呼んだり被曝リスクの主張は風評被害を招く
(汚)「風評被害」という言葉でリスクの問題定義を封じ込めることは実害リスクの隠蔽に繋がる
・汚染水放出そのものがすでに中国や韓国など海外による輸入規制など経済的実害を生んでいる
(評価)
「汚染水派」の主張が真っ当
引用終わり
引用者 安渓遊地@生物文化多様性研究所
有機結合トリチウムが生物濃縮されるという報告は、例えば以下にあります。
https://www.cnic.jp/wp/wp-content/uploads/2018/08/FUKUSHIMA-tritiated-water-releases-final.pdf
これには批判もありますが、例えばGooglescholar で organically bound tritium をキーワードに検索すると、たくさんの論文(多くは査読付き)が検索できます。とても、全部を読んでレビューすることはできませんが、レビューのいくつかを読んでみることぐらいはできそう。
以下は、今朝のお勉強の一部です。有機結合トリチウムのことは、まだまだよくわかっていない、ということがわかっているということが、わかりました。
検索結果のひとつで、2022年に出たミニレビューという、九州大学の紀要に載ったものは、核融合などを研究するグループも含む、エネルギー科学部門の研究者が入ってまとめたものです。どちらかといえば、推進側と想像されますが、それでも、植物内や土中のOBD(有機結合トリチウム)まだまだわからないことばかりだ、と正直に書いています。
https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_detail_md/?lang=0&amode=MD100000&bibid=5909112
以下は、その報告の要旨をDeepLで機械翻訳したものです。
要旨:有機結合型トリチウム(OBT)は、その難分解性と比較的長い有効半減期(80日)により、放射線防護の目的で放射線学的に重要である。OBTによる線量を推定するには、摂取経路となる主要な環境マトリックスの分析が必要である。トリチウムや重水素に曝された植生や土壌に関する研究は、将来の線量を予測するためのモデルを用いて行われてきた。トリチウム水は生体組織に取り込まれやすいため、関心のある化学種として特定されている。トリチウム線量の推定は、液体シンチレーション計数法、質量分析法などの様々な技術を用いて行われてきた。BIOMOVS、BIOMASS、EMRASなどの環境トリチウムモデルは、放射線安全評価のために各国で広く採用されている。
日本語によるレビューもあり、こちらでも有機結合トリチウムについてはまだまだわからない、としています。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjb/60/9/60_537/_pdf
その本文からの抜粋です。
「その他の局所的にトリチウムが放出された
事例として,イギリスのカーディフ(Cardiff)湾におい
て,アマシャム(現:GE ヘルスケア)の放射性化合物の
製造工場からトリチウムが放出されたものがある。この
放出の特徴は,原子力発電や再処理工場の放出と比較し
て OBT としての放出が大きいという点である。環境に
おいて水の形で存在するトリチウムは基本的に濃縮が起
こらないとされている。しかし OBT としてトリチウム
が海洋へ放出された結果,一部の水生生物(カレイ類,甲
殻類,軟体類)で水と有機物の代謝速度の違いから高濃
度の OBT が観測された。この時水生生物の海水に対す
る見かけの濃縮係数は 100-1000倍[安渓注、原文では
10の2乗から10の3乗]
と高いものであった。」
このイギリス・カーディフ湾の高濃度にOBTを含む、シタビラメを
ボランティア5人に食べさせて、その排泄物のトリチウムを150日にわたって
測った、という論文が、イギリスで出ているのですね!
Hunt, J., Bailey, T., & Reese, A. (2009). The human body retention time of environmental organically bound tritium. Journal of Radiological Protection, 29(1), 23–36. doi:10.1088/0952-4746/29/1/001
この場合の排出の半減期は、4日から11日で、案外速かったという内容です。その理由として、トリチウムを含む有機物の加水分解が速かったのでは、と推測しています。
要旨のDeepL翻訳をつけておきます。
概要
英国環境中のトリチウムは一般公衆に低線量被曝をもたらすが、トリチウムの有機結合成分(OBT)の線量係数には不確実性が存在する。このことは、代表的な人に対する実効線量の評価に影響を及ぼす可能性がある。この不確実性の一因は、OBTの体内滞留時間や、食品中の異なるOBT化合物に対してこれがどのように変化するかについての知識が乏しいことである。この研究は、GEヘルスケア社の工場からの排出によるOBTを含む可能性のあるカーディフ湾のヒラメを食べた後のボランティアによるトリチウムの保持時間を測定するために実施された。5人のボランティアが、摂取後150日までの排泄物のサンプルを提供した。この結果は、独自の分析が可能なように生の形で提示されているが、体内半減期が4日から11日の範囲にある全トリチウムの保持を示唆しており、半減期が長い保持による有意な寄与を示す証拠は(実験ノイズの影響を受けるが)ない。この範囲は、ICRPがトリチウム水に用いている半減期10日をカバーしている。この短いタイムスケールは、本研究で使用された特定の形態のOBTが体内組織で速やかに加水分解されるためである可能性がある。OBTの線量係数に示唆されることは、ICRPの値4.2×10-11[10のマイナス11乗] Sv Bq-1の使用は、この特定の状況では慎重である可能性があるということである。線量係数に関するこれらの見解は、トリチウム放射線の加重係数を1から2に引き上げるべきかどうかに関する最近の議論の意味とは別のものである。
以上、安渓遊地でした。
OBTminireview2022_p330.pdf (418KB)
トリチウム概説2018年60_537.pdf (1,202KB)
hunt2009人間にOBT舌平目を食べさせて半減期を測った.pdf (430KB)