フィールドノート)アフリカの場合 RT_@tiniasobu
2023/02/27
郷に入れば郷に従えと申します。当時ザイールと呼ばれたコンゴ民主共和国で暮らしていたころは、スワヒリ語を話して、800もあるというバンツー語のひとつソンゴーラ語を勉強する毎日でした。
そんな時のフィールドノートは、当然、スワヒリ語とバンツー語で書くわけですが、辞書もなく、文法書も、音声教材もない言語の場合は、始めは母音の数もわからず、ノートを書くことにまず難渋します。ここに示すのは、動物の名前を何と呼んでいますか?
という一見単純な問いです。こうした生物文化の勉強は、理科系の目と文科系の耳の両方がいるので、ひとりではなかなか難しいです。
左ページは、スワヒリ語で chimba-udongo
すなわち「土掘り」と呼ばれているツチブタは、首長の食べ物なので、女はたべられない。十字架にかけ、その前で踊ってから食べたものだというのは面白い。右頁は、temboゾウですが、これは、アルコール度10%近い強いビールの銘柄にもなっているスワヒリ語なので常識として、ノートにかいてありません。食べないのはタバコだけ、有毒なキャッサバも食べるそうです。ソンゴーラ語は、バンツー語祖語のンジョウnjouとほとんど同じで、スワヒリ語でも巨象はndovuです。ンジョウとゾウ。案外象のバンツー祖語の単語と日本語の単語には類縁関係があるのかも。トールキンの「そのホビット 行きて帰りし物語(邦訳・ホビットの冒険)」には、oliphaunt
なる怪物がでてきます。同じような例ですが、森にはいないけれど、スワヒリ語でライオンは
simba、サンスクリットのsimhaは同じ語源で、その頭の音に師をあて、それに子をつけて獅子になったといわれています。与那国島のチチが、スワヒリ語のシンバと同根だと知れば、ダウ船に乗ってインド洋の両岸の世界を結んでいた交易ネットワークの重要性がわかってきて、言語からみえてくる歴史は今の世界のなりたちを理解するにも役立つかもしれない。
話はもどって、動物名の民族間比較は、バンツー語のCゾーンとDゾーンの境界に位置するソンゴーラ人が、実は二つの異なる言語を使う集団から成っているけれど、動物名は共通の語源のものが多いという論文になりました。フランスで発表したのでフランス語です。http://ankei.jp/yuji/?n=1876
その聞き取りの中で出てくる植物関係の話しは、安渓貴子の植物と人間の関係の大報告に提供したので、カード記入済の印に、赤線で消してあります。貴子の本は、以下にあります。 http://ankei.jp/takako/?n=1880
もうひとつの例は、アフリカ内水面漁労の研究で、わたしの後に研究をしていた、今井一郎さんに、たぶん日本アフリカ学会で出会って、ザンビアで湖での交換経済とくに物々交換の担い手と、扱われるものの、1987年当時の状況を尋ねた時のメモです。今井さんは、昨年、マラウィのチルワ湖で船が転覆して、現地のスタッフとともに亡くなられたので、その追悼を兼ねて、ここに載せておきます。このお話を踏まえた報告は書いていませんが、今井さんのことは、アフリカで何が危険? という講義中の質問へのこたえとして、書いています。http://ankei.jp/yuji/?n=2627
安渓遊地