広島県竹原市)生物多様性の宝庫・ハチの干潟のすぐ沖にLNG洋上備蓄基地と火力発電所建設_RT_@tiniasobu
2021/08/09
2021年8月9日16時 修正 1. 図とその説明を最新のものにしました。2. JBGエナジーについての説明を追加しました。3.
絶滅危惧種についての説明を少し詳しくしました。絶滅危惧種の全リストは、可能な範囲で別のページで紹介する予定です。
軟体動物多様性学会の自然環境保全委員会 委員長 および
日本生態学会の自然保護専門委員会の 専門委員(エネルギー問題担当)としての投稿です。
◎まず、新聞報道です。今のところ中国新聞だけが報道しています。
https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=751419&comment_sub_id=0&category_id=112
竹原にLNG火電計画 東京の事業者、24年末稼働目指す
2021/5/6 23:00 中国新聞
JBGエナジーが計画するLNG火力発電所の建設予定地=対岸(竹原市下野町)
竹原市内に液化天然ガス(LNG)の火力発電所を建設する計画が進んでいることが6日、分かった。LNGの貯蔵基地も設け、将来、広島県内で新設する発電所への供給を見込むという。発電事業を手掛けるJBGエナジー(東京)が県などと協議を重ね、地元住民にも説明を始めた。早ければ2024年末の商業運転開始を目指す。
計画では、出力は7万4千キロワット。関係者によると、予定地は同市下野町の海沿いの約7ヘクタールで、同社が設立した特別目的会社が市内の企業から購入した。海外から船で調達したLNGを貯蔵する施設も海上への浮体式で設け、全長約500メートルの桟橋で陸地とつなぐ。雇用は30人程度を見込むという。
JBGエナジーは17年の設立で、国内各地で小規模のLNG火力発電所を建設する計画を進めている。グループの本社機能はドイツにある。竹原市に加え、呉市や東広島市を候補として新設を模索し、竹原からLNGを陸送する将来像を描く。
同社の広報窓口となる会社が中国新聞の取材に応じ、竹原市での計画を認めた上で「電力の安定的かつ柔軟な供給体制の構築に寄与したい」とコメントした。
資源エネルギー庁によると、19年度の国内発電量はLNG火力が全体の37・1%を占めて最多で、石炭火力31・9%、水力7・8%、太陽光6・7%が続き、原子力は6・2%。LNGは石炭に比べると、発電時の二酸化炭素排出量は少ない。(渡部公揮)
◎JBGエナジー(株)
2017年に発足したばかりの、バイオガスやLNG発電などを手がける会社です。https://jbgenergy.co.jp/
JBGは、ジャパン・バイオガスの略なのですが、なぜかドイツに本社があります。https://www.northdata.com/?id=3726365194
LNG発電プラントは、海水を取り込んだり(冷取水)、温めて排出したり(温排水)することがないものだそうです。
佐賀市でのプロジェクトを計画していましたが、九州電力がはるかに大きなLNG発電所の計画を発表したので撤退しています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e7dee899d35f02a33cfee1852162170551d5c105
◎ハチの干潟の自然と生物多様性
広島県竹原市の「ハチの干潟および賀茂川河口」は、環境省の「生物多様性の観点から重要度の高い湿地」No.
389に指定されています(全体のサイトマップは、http://www.env.go.jp/nature/important_wetland/sitemap.html)。
素晴らしい自然が残された場所です。その風光は、以下のサイトなどでご覧いただけます。https://umi-kaido.com/west1027
上関原発予定地のある周防灘と並んで、瀬戸内海の生物多様性の復活のための種子となる場所の一つとして、生物の研究者にとっても、非常に大切な場所で、最も絶滅のおそれが高い絶滅危惧
I類として環境省レッドリスト2020または環境省海洋生物レッドリスト2017に掲載された種が少なくとも14種、次に絶滅のおそれが高い絶滅危惧II類として掲載されたものが少なくとも16種、準絶滅危惧種として掲載されたものが少なくとも36種棲息していることが、広島大学や岡山大学等の研究者によって明らかにされています。具体的に軟体動物だけに注目しても、イソチドリ・イセシラガイ・オキナノエガオ・イソカゼ(以上すべて、環境省レッドリストで絶滅危惧I類
(CR+EN))、サナギモツボ・ヤセフタオビツマミガイ・ヌノメホソクチキレ・シナヤカスエモノガイ(同、II類
(VU))など、多数の稀少種の棲息が確認されています(CR: critical, EN: endangered, VU:
vulnerable)。
◎開発の影響を考える
添付の図とその説明の作成者は岩崎敬二氏(日本貝類学会多様性保全委員長)です。
図1Aとその拡大B(pdfの1ページ目と2ページ目)
JBGエナジー社によれば、LNG運搬外航船の長さは250メートル、LNG浮体係留設備(FSB)の大きさは長さ120メートル・幅50メートル、桟橋の長さは全長500メートルとのことです。そこで、JBGエナジー社が作成した資料に基づいてその位置と長さ・大きさを空中写真に描きこんでみました。
これらの施設はハチの干潟の沖合に大きく被さって賀茂川から流出する河川水の流路の障害となり、沿岸流の流路や流量も変えてしまい、ハチの干潟での砂泥の流出と堆積のバランスを崩して、干潟生物にとって大変に重要な底質の粒度組成を大きく変えてしまう可能性があります。
図2(pdfの3ページ目右側)
2021年5月6日竹原市産業振興課が地域住民の方々への説明のために配布した資料から切り抜いたもので、LNG外航船の大きさが約300メートルの長さで描かれています。
図3(pdfの3ページ目左側)
海図から読み取った現地の水深。赤丸あたりはFSBが係留される予定の位置で、水深7.3メートルであることを示しています。15とは水深15メートルであり、ここに喫水(水面からの深さ)15m程度となるLNG運搬外航船が停泊するため、かなりの規模での浚渫は必至と思われます。
◎参考文献:大谷公哉(2018)浮体式LNG受け入れ基地の現状と付随する技術について.IEEJ,
2018.3 (以下のリンクをクリックすると、会員Noの入力を求めるページにジャンプすることがありますが、その場合は、URLを直接ブラウザにコピペしてみてください。どのような技術体系なのかあらましがわかると思います)
https://eneken.ieej.or.jp/data/7848.pdf
◎現在、5つの学会の環境保全・自然保護の委員会が合同で要望書を出す準備中です。上関原発予定地の自然環境の保全をめぐって学会が合同で動いた経験を生かしつつ、
「はやく行きたいなら一人で行きなさい。遠くまで行きたいならみんなで行きなさい」(アフリカのことわざとよく言われています)
という知恵の出どころを考えたりしてます。https://andrewwhitby.com/2020/12/25/if-you-want-to-go-fast/
続報はまたお知らせします。
軟体動物多様性学会・自然環境保全委員長
日本生態学会・自然保護専門委員(エネルギー問題担当)
安渓遊地