連載)阿東つばめ農園おひさま便り2020年9月_動物たちとのおつきあい 安渓貴子+遊地 #ロシナンテ社 #月刊むすぶ RT_@tiniasobu
2020/10/10
京都のロシナンテ社の 月刊『むすぶ』596号に掲載されました。
つばめ農園おひさま便り (9)
安渓貴子・安渓遊地
動物たちとのおつきあい
阿東高原では、コシヒカリの収穫がたけなわですが、つばめ農園のイセヒカリの稲刈りは一〇月の予定です。畑ではキュウリ、トマト、ナス、ピーマンに続いて、カボチャやミョウガがとれてきました。まもなく大豆を枝豆で食べられるのではと楽しみです。
今回は田畑に出没するけものたちのおつきあいの話です。
モグラは、なぜかトマトの畝に穴を明けるのが大好きで、今年はトマトの半分以上が青い実をつけたまま次々に枯れました。いろいろな品種を種から育てて四つの畑に分散して育てているので、食べるにはこまりませんが。春先にはエンドウをやられました。モグラはミミズを食べようと穴をあけるのですが、その通路を通ってネズミもやってきて、サツマイモが毎年かじられます。今年の春はジャガイモ、そして玉ねぎも食べられていました。
モグラは振動が嫌いというので、カラカラという音が出る風車をあちこちに立ててあります。ペットボトルでカラフルな風車を作るのが農園主の安渓大慧(だいえ)の趣味で、畑に並んだ風車が回るのはかわいらしい光景ですが、馴れてしまってあまり効き目はないようです。また、雑誌で読んだ「お百草」をモグラの穴に入れることを試みていますが、なかなか被害は減りません。
やわらかな大豆の苗がおいしそうに生えそろったころ、畑の山側の大豆の葉や茎のきれい食べられているのに気づきました。ノウサギです。畑の山側にネットの垣をまわしました。跳びこえる力はあってもこれで防げたようです。以前、冬に雪が積もったあと畑に行ってみると、大根の地上部分だけすっかり食べてありました。ネズミや虫たちと違う無駄のないノウサギの食べ方は、なんだか、許せる気持ちになりました。
イノシシには、サツマイモの芋が大きくなり始めた頃株ごとひっくり返されたりします。うちの田んぼのお師匠さんのところでは里芋も毎年きれいにやられて気持ちがふさぐとおっしゃいます。また稲が実る田んぼを走り回られた時は、稲が泥だらけになって泣きました。イノシシは、集落全体の山際に垣をつけたり、夜中も点滅する光を置いたりして防ぎます。猟をする人に誘われ、大慧が解体を手伝ってお裾分けをいただいたりもします。耕作放棄地がふえ、ことに山裾が耕地ギリギリまで森になっていて、イノシシもノウサギもキツネもタヌキも、そして所によってはシカやニホンザルも、森が「住み処」ですから、垣こそあれ美味しいものが目の前にあれば、食べたいだろうなと思います。
「昔はイノシシ垣の向こうのスギやヒノキの人工林のところは草原だったんだ。木を植えてしまって、動物は出てくるし、田畑は日陰になってしまっていいことはない」とお師匠さん。こういった人工林の持ち主は、今では街にお住まいで、田舎で暮らす人の困りごとは届いていないのでしょう。
ここは、中国山地の西の端にあたり、ツキノワグマもやってきます。お師匠さんはニホンミツバチの巣箱を置いています。ネオニコチノイド農薬が撒かれるようになって、ミツバチの群れがほとんど居なくなるまでは、クマが蜜を食べに時々やってきたそうです。山裾の農舎ではいつもラジオをつけっぱなしにしています。たがいに不意打ちで出会うと事故になるので、いきなり驚かさないことが大切といいます。師匠は家の入り口の角でばったり出会ったことがあるけど、腹に力を入れて威厳を持って、コラァッ!! と大声で言ったら引き返していったそうです。それをやたらに怖がって、行政はクマが出たら必ず殺してしまうから、クマとは静かにつきあうようにしてるんだとのこと。
物々交換から地域循環へ
前号に書いた、草刈り草集めの上手なSさんに、その時々の農産物をさし上げながら、堆肥をつくって土石流の入った田んぼの地力造りをしなければ、という話をしていたところ、耳寄りな情報を下さいました。ご自分の愛馬マロンが預けてある乗馬クラブの馬糞堆肥を使ってみませんかとのこと。軽トラックでいただきにいってみたところ、この道五〇年というご夫婦によって二〇頭の馬たちが大切に世話されていました。そこでは馬糞を高く積み上げて発酵させ、半年ほどたったものは、直接畑にすき込んでも大丈夫な完熟堆肥になるので、秋野菜の準備をする近くの方が次々にもらいに来ておられました。
馬は草が主食で、牛とちがって反芻しないため、牛やニワトリのような食用肉の家畜の糞より環境によい草を食べているはずです。
(あんけいたかこ・
あんけいゆうじ)
y@ankei.jp
http://ankei.jp