到来物控え)煤竹のペーパーナイフをいただきました #susudake #paperknife RT @tiniasobu
2011/12/06
twitter仲間からプレゼントがとどきました。
手作りのペーパーナイフです。
ていねいなつくりで3種類。材料は、囲炉裏の上なので何年もすすけた、通のお茶
杓とかをつくる煤竹製の高級品です。
ありがたくいただきました。太めのものは、本の虫のわが家の守り神であるチセコ
ロカ
ムイにお酒を差し上げるときのトゥキパスイ(アイヌ民族の奉酒箸)に使えるかもし
れません。
最近では、ペーパーナイフの必要なフランス装の本を読むことはあまりありません。
でも、ふと、こんなエピソードを思い出しました。昔、岩波書店の月刊雑誌『図書』
あたりで読んだのだったか、それともルーマニア語の新聞を読んでいた河野与一先生
の『学問の曲り角』だったか、思い出せませんが、
むかし、授業で使うフランス語の本のページを、ペーパーナイフで切りながら講義
した先生の話です。
徹夜で必死の下調べをしてきた学生たちは、先生は未見の文章を辞書もひかずにあ
んなにさらさら
とお読みになれるのだ、と信じて、ますます勉強したのでしたが、実は先生の家にも
う一冊同じ本があったのでしたとさ。
頭の引き出しのめちゃくちゃになった索引に、あらためて、「ペーパーナイフ」と
入力したら「辰野」と変換されましたので、東京帝大初のフランス語の日本人助教授
となった辰野隆先生のエピソードだったかと思いますが、違っていたらお教えくださ
い。彼の一高時代の話だったかもしれません。
辰野先生の思い出が
小林秀雄の「ヴアレリイの事」からに出てきます。
http://yomimonoweb.jp/tsubouchiyuzo/p8_4.html
学生時代小林秀雄はヴァレリーの本を読みたくて仕方なかった。しかしその原書は
日本には殆どなく(東大の図書館は関東大震災で「趾かたもなか」かった)、持って
いる人たちも、小林青年のような「自他の見境(みさかい)の甚だ薄弱な男には、なか
なか貸してくれない」。
丁度そんな時、大学の辰野先生が、先生の手元にあるヴアレリイに関する本を全部
貸て下さつた。これは実に嬉しかつた。今でもさうだが、私には本を読む時に、無暗
と煙草をすつて頭の毛を挘;(むし)る奇妙に執拗な悪癖がある。従つて読む本に
は、一頁毎(ごと)に髪の毛と煙草の灰がはさまつて行くわけになる。貸す奴はいい災
難だが、私の方でもかういふ明瞭な証拠があるから、読まぬ本を読んだと言つて返せ
ない不便がある。辰野先生は私から本を受け取ると、窓の処でパラパラとやつて掃除
する。偶々(たまたま)汚れてゐないと、読まなかつたな、と言ふ、それは家でよく払
つて来た奴ですなどと弁解しても、一向信用してもらへない、さうなるとこつちも馬
鹿々々しいから、勇敢に汚してお返しする事にしてゐた。今でも先生のとこのヴアレ
リイには全部、先生の払ひのこした私の頭の毛がはさまつてゐる筈である。想へば感
謝の念に堪へない。