上関)詳細調査をめぐる意見(2005年3月2~4日、中国新聞の山口版)
2005/03/16
「インタビュー上関原発 詳細調査を前に」
として、上・中・下の3回にわたって、中国新聞柳井支局の島田俊之記者が記事を書いています。
安渓は、3度目に登場しました。
相互にインタビューが影響しないように、独自に話をきいて、次々に載せるという形式の記事でした。
(上)は、山口県が環境に配慮するすばらしい県であるということが伝わってくるような知事さんのご発言ですが、例えば、詳細調査をどうするかを考える実際の現場のお役人たちとお話した感触とはずいぶん異なる所もあります。
(中)は、事業者の責任者です。原発を進める理由として、二酸化炭素削減しか言えないというのは、そうとう追いつめられた状況でしょうね。
ご参考までに、星川淳さんのMLより引用。
> 温暖化を理由にした原発推進論は、ほかに根拠のなくなった政府や電力業界が90年代から付け焼刃的に主張しはじめており、と
> りたてて新しいものではないし、ウラン採掘から稼動や廃棄物処理まで化石燃料がなければ動かない原子力発電システムが二酸化炭素削減になるかどうか自体、
> 大いに議論の余地があるところです。 http://www.melma.com/mag/06/m00067106/a00000105.html
以下は安渓がでた本文です。
―詳細調査について、研究者としてどう考えますか。
私も一員である日本生態学会は、二〇〇三年五月の中国四国地区会の総会で詳細調査に着手しないよう求める決議をしている。中国電力の環境影響評価(環境アセスメント)は海の生態系調査がないなど、不十分だからだ。県にも調査を認めないでほしいと継続して要望している。
―建設予定地はどんな自然環境ですか。
研究者がみんなびっくりしている。レットデータブックに載っている
多数の貝類、絶滅寸前の腕足類の一種カサシャミセンなど世界に誇る生き物の宝庫だ。脊椎(せきつい)動物の祖先に当たるナメクジ
ウオの実物を初めて見たという学者もいる。
―中電は調査による自然環境に大きな影響はないとしていますが。
島根原発での調査経験を引き合いに出しているが、ここには、スナメリクジラなど島根にはいない生物がたくさんいる。その生物にどんな影響があるのかをわれわれに
示せないということは、把握していないとみられてもやむを得ないだろう。
―スナメリクジラへの影響が問題なのですか。
この海域の食物連鎖の頂点にいるのがスナメリクジラ。瀬戸内海全域では激減しているのに、ここは減っていない。頂点が元気ならその下に位置する動物も元気だということだ。しかし、スナメリクジラは音に敏感。海域によりつかなくるなど調査による影響は否定できないだろう。
―陸地部は、どうでしょうか。
この地域では貴重なハヤブサが生息しているが、人間の凝視に神経質だ。調査にともなう監視などの影響も懸念される。
―中電の環境保全措置は評価できませんか。
中電はハンドブックを作って「貴重な植物は移植」「昆虫は作業範囲外に移動」な
どしている。しかし、生き物は、餌の確保や子育ての場所としてその場を選んで生きてい
るので、移したからといって守れる保証はない。移植した生きられない貴重な植物もある。
―今後はどう活動しますか。
田ノ浦の自然を継続的に検証していくため学会はアフターケア委員会を設けてい
る。豊かな自然を今後も見守っていきたい。