とくぢ大好きサポーターズの活動が卒論になりました
2005/02/08
とくぢ大好きサポーターズの活動が卒論になりました。
2004年度 安渓研究室の卒業論文の要旨です
本文も、添付資料を除いたものをpdfファイルで載せました。
山口に桃源郷を求めて
岡村 優子
目次
Ⅰ.はじめに
A.風景について
B.ニュージーランドで見た桃源郷
Ⅱ.本論
A.徳地との出会い
B.初めての会議
C.徳地町
D.活動記録から
1. 第1回『めざせ!徳地づくり達人☆塾』
2. 第1回フィールドワーク
a.趣旨・参加者・日時
b.1日目 出雲・八坂地区
c.2日目 柚野地区
d.3日目 島地・串地区
3. 第2回『めざせ!徳地づくり達人☆塾』
4. 第3回『めざせ!徳地づくり達人☆塾』
5. 第4回『めざせ!徳地づくり達人☆塾』
6. 第2回フィールドワーク
a.趣旨・参加者・日時
b.新規就農者 浅村久志・栄子さん
c.自由創作いとう
d.伊賀地の郷 味工房
e.ねむの木
7. 第5回『めざせ!徳地づくり達人☆塾』
8. 第6回『めざせ!徳地づくり達人☆塾』
Ⅲ.討論
A.記憶の中の風景
B.人々が描いた理想郷
1.『桃花源記』
2.『桃花源記』の解釈をめぐって
3.「小国寡民」
4.ユートピア
C.サポーターズの活動から学んだこと
1. 油野の建設現場にて
2. キーワードは「交流」
3. 自然とは
D.『達人☆塾』の今後
E.桃源郷への出発
謝辞
引用文献・Webページ
資料
(本文)
2003年、ニュージーランドに滞在したことで、地元、山口を、そして山口
での自分の生活を見つめ直すことが出来た。この時から、山口で暮らすというこ
とについて真剣に考えるようになり、これからは自分の暮らす地域と積極的に関
わっていきたいと思うようになった。また同時に、私にとってこれこそ理想郷と
いえる場所はどんな所か、山口でそのような場所を見つけることが出来るのかを
追い求めるようになった。
そんな時、これから実施されるという住民主体の徳地町でのまちづくりの話を
耳にした。子供の頃度々訪れた徳地の祖母の家での思い出、それは懐かしくも幸
せなものであった。そこにあった風景は私にとって一つの桃源郷のようでもある。
そこでこのまちづくりに興味を持ち、参加することとなった。
徳地まちづくりは『めざせ!徳地づくり達人☆塾』という名のワークショップ
で進められ、2004年7月17日を第1回とし、2005年2月12日を第8
回(今年度の最終回)とする。山口県立大学の学生・教員、徳地に興味のある方、
コンサルタントの金子和男さん、徳地町役場の方が『達人☆塾』の運営・企画を
するスタッフで、『とくぢ大好きサポーターズ』(金子さんと役場の方を除く)
と名付けられた。
2005年1月12日現在まで、『達人☆塾』は6回を終えて、残すところ2
回である。第1回・第2回『達人☆塾』では、徳地町にある地域資源の確認・再
発掘をはじめ、それらをどう活用できるか、徳地の課題や何をしたいのかを話し
合った。その後しばらく期間が開いたので、各自で考えた事業提案を簡単な企画
書にして提出してもらった。第3回・第4回では、提出された提案を、行政側の
「基本計画」と照らし合わせ、表にした。表を基に徳地に必要と思うもの、自分
が参加したいものについて投票を行い、ここからグループがつくられた。第5回
では最終的なグループ決定を行うと共に、案の具体化を行いこれから何をするか
を決めた。第6回では、第8回の発表会に向けて本格的な企画書作りを進めた。
とはいえ、ほとんどのグループはワークショップの時間内に終わらせることが出
来なかったため、個別で集まることとなった。
『達人☆塾』第1回と第4回の後、『サポーターズ』を中心にフィールドワーク
も行った。1回目は地域資源発掘、2回目は徳地に住み徳地で活躍されている方
々へのインタビューだった。インタビューでは、お話をして下さった方が皆、徳
地ならではの魅力をご自身のやりたいことと結びつけておられ、とても活き活き
されていた。私が理想郷像をお聞きすると、「今暮らしているここが理想郷その
ものです。」と言われた方もおられ、それは私にとって衝撃的な一言だった。
(討論)
これまでの歴史の中、様々な人が理想郷を描いてきた。
例えば中国の詩人・陶淵明は、『桃花源記』を記した。『桃源郷ものがたり』の
中の「新たに語り伝える理想郷」で、松居直氏は以下のように述べている。
物のあふれたぜいたくな暮らしよりも、質素で心の安らぐ田園生活のなか
に真のゆたかさがあることを、陶淵明は桃源郷の物語として語っている。
『桃花源記』をめぐる解釈は研究者によって様々であるが、陶淵明が田園を、
緑を、自然を、そして田園生活を愛していたことは確かであろう。
また老子は『老子』第80章で「小国寡民」という思想を述べているが、この
思想は陶淵明の『桃花源記』に大いに影響を与えたものだと言われている。「小
国寡民」について、私は以下のように解釈した。
「老子は自然の中での質素な生活を理想とした。自然の流れの中で出来る集落
は小さく、そこに住む人口も少ない。しかしその中でこそ人は自立し、且つ自然
な姿でいられ、毎日を幸せで穏やかに過ごすことが出来るのだ。」
『達人☆塾』での活動を通して気付いたことは、「交流」の中で人と人との繋
がり、そして人と自然との繋がりこそが大きな財産になってくること。そして、
桃源郷は探して見つかるものではなく、一人一人の手と心でつくっていくものだ
ということだった。老子や陶淵明の描いた理想郷では、そういったことが自然に
生まれ、ごく当たり前の存在としてあるのではないかと思う。
自然とは何かと考え、例え人の手が加わっていようとも、それが月日を経て周
りと一体化していけば自然の一部になり得るのではないかという自分なりの結論
に達した。
人は自分たちが世界の中心だと錯覚しがちであるが、宇宙、地球、そして身の
回りの自然の中で生かされていることを忘れてはならない、そしてそれらを大切
にしなければならないと思う。そのために参考になるのが昔の人々の暮らしであ
ることは、既に多くの人々が唱えている。そして今、我々が近代化のために捨て
てきてしまったものを取り戻そうという動きが見られている。それは昔の生活へ
戻るという意味ではなく、未来へ向けての新しいライフスタイルなのである。
私も、ゆっくりと自分のペースで、新たなライフスタイルを目指していきたい
と思う。『めざせ!徳地づくり達人☆塾』の活動の中、また、そこから広がる繋
がりの中、桃源郷といえるような場がいつかつくられると信じている。
終わりに、これからの私にとって大切だと思われる、医師であった細川宏氏が
亡くなる二十八日前に残された言葉を引用する。
一、一日一日をていねいに、心をこめて生きること
二、お互いの人間存在をみとめ合って
(できればいたわりと愛情をもって) 生きること
三、それと、自然との接触を怠らぬこと
(主な引用文献)
松居直、2002『桃源郷ものがたり』福音館書店
柳澤桂子、1999『放射能はなぜこわい――生命科学の視点から』地湧社