地域共生)阿武町・あったか村の温かさ+民宿樵屋で山口定住を意識
2007/01/31
環境問題という山口県立大学の授業の受講者で、2006年11月に阿武町を訪ねたこと
をある学生がレポートに書いてくれました。匿名なら公開してよいという了解をもら
いましたので、以下に2つ掲載させていただきます。
4月から始まる地域共生演習という実習の受け皿としてもお願いしようとおもって
いる「あったか村」。一度訪ねれば忘れがたいところになります。きっと。
http://ankei.jp/yuji/?n=263をご参照ください。
1.阿武町こそ私たちのふるさと
あったか村は化学物質過敏症の人でも住めるような環境であった。家も自分たちで
建てるのだ。ここで面白いことがある。窓のサッシに合わせて家を建てるということ
だ。窓のサッシを壊す家から貰ってきているということでそれを再利用する、という
リサイクルも行われている。あったか村が目指しているものは、人の健康・地域の健
康・地球の健康である。あったか村は物をリサイクルして家を建て、人の健康を考え
ながら家を建てている。こんなに健康に気を使っている場所は他にあるだろうか。
実際に行ってみて、人の温かさというものを感じた。本当に温かい方たちで、初め
て行った私でも前に会ったことがあるような感じになった。本当に自然が大好きなん
だなということが伝わったような気がする。
あったか村のある阿武町では、体験交流もできる。農家に泊まったり、漁家に泊まっ
たり、パンを作ったり、フラワーアレンジメントができたり。他には、日本の四季を
感じることができる季節別の体験ツアーなどがある。都会に住んでいれば絶対に体験
できないことばかりである。
私たちは今回、農家民宿「樵屋」を営んでいる白松さん宅でお昼ご飯をいただいた。
釜で炊いたご飯や野菜たっぷりの味噌汁、たまねぎをそのまま焼いたものなど、いつ
も食べているものなのにこんなに違うものなのかと思えるほど美味しかった。
現在の日本はとても便利になっている。しかし「人のふるさとはどこ?」という問
いかけに私たちは答えられるだろうか。今の日本は上京後の場所であるように私は思
う。ではふるさとは何処なのだろうか。まさに阿武町こそが「ふるさと」という言葉
に適している場所ではないだろうか。人の健康・地域の健康・地球の健康の大切さを
知っている阿武町、四季を感じ体験できる阿武町こそが私たちのふるさとではないだ
ろうか。
2. 白松さんの家を訪問して気づいたこと
私は、環境問題の授業を通じて、田舎の環境に対する考え方が大きく変わった。私
は周南市のなかでも比較的山の多い地域に住んでいて、近くには畑や田んぼがあり、
空気もきれいなところである。長い間そのような環境で育ってきたせいか、交通の便
が悪いことや衣料品を買う場所が遠いなど、不便な面しか見えなくなってしまってい
た。また、この先山口県にとどまらず、将来は福岡や広島など、もう少し都会に住み
たいと思っていた。しかし、この環境問題の授業で自然の中で生活すること大切さを
感じることができた。そのなかでも最も影響したのが白松さんの家を訪問したときで
ある。
バスで阿武町まで向かっている時、周りには田んぼしか見えなくなり、途中からスー
パーなども見当たらなくなって、そのときはとても不便なところだと思った。これほ
ど不便なところに住んで、どのような利点があるのだろうと思った。また、阿武町に
到着したころには携帯電話も電波が入らず、使用できなくなっていたので、今でも電
波の入らないところがあることに驚いた。
しかし、白松さんの家にお邪魔して、釜で炊いたご飯や野菜たっぷりの味噌汁をい
ただいたりしたことももちろんであるが、人間が開発してきた機械の少ない、多くの
自然に囲まれた中で一日を過ごして、確かに移動するときなど多少の不便はあるけれ
ども、自然に囲まれて暮らすことがとてもすばらしいと思うようになった。また、大
きな畑の中で、きれいな空気を吸って、多くの自然の中で過ごしている間、自然と寒
いことも気にならず、とてもリラックスした開放的な気分になっていた。
今回白松さんの家や畑(写真,ウェブページ「農家民宿 樵屋」より)を訪ねて、
やはり、自然の中で生活することが、人間にとって最もよいことであると思った。もっ
と自然に目を向けるべきであると思った。自然の中で暮らすといっても、今の生活を
180度変えるというわけではなく、身近にある無駄をなくしていくことから始めれば
いいのではないだろうか。例えば、自分の家での野菜の栽培がある。自分で栽培した
野菜ならば、過剰な農薬を心配することもなく、安心して食べることができる。さら
にスーパーで買うときの包装のごみも出さずに済み、環境を守ることにもつながる。
難しいことのように思われるけれども、ただ本来あるはずの生活に戻るだけである。
今の私たちの生活は、人間の作り出した機械などに頼りすぎている。そして、過剰に
消費し、それがごみとなって捨てられている。この状況がこのまま続けば、将来日本
にはごみしか残らず、私たちの体にも大きな影響を及ぼすだろう。
日本基礎科学教育学会名誉会長である宮田光男氏は、物を燃やしたときに発生する
ダイオキシンは、その影響を受けた人の体だけではなく、その子や子孫にまで影響を
及ぼすと述べている(宮田、2000)。現在ではそのものを燃やす時点でダイオキシン
が出ないように工夫されてきてはいるが、そのような技術の開発に力を入れるのでは
なく、これ以上そのような害を及ぼす物質を出さないために、無駄なものの生産をな
くしていくことなどを考えていくべきであると考える。また、影響を受けているのは
人間ばかりではない。ともに生きている動物や植物なども影響を受けているのである。
私は、今の生活への利便性ばかりを考えず、将来のためにも、今の生活を見直し、自
然と共存していけるような生活を目指すべきであると考える。
本来の自然の中での生活は、私たちの体にとってだけよいものではなく、他のさま
ざまな面において有益なものではないだろうか。日本では、高度経済成長などもあり、
目覚しい経済発展を遂げてきた。しかし、それが本当によかったのかどうかは疑問で
ある。確かに、日常生活を送る上で非常に便利になったが、その一方で環境破壊が進
んでいるのも事実である。私は、今まで生活していく上での便利さばかりを気にして
いて、田舎は交通の便が悪いなど、何かと不便で住みにくいと思ってきた。しかし、
実際には機械などに囲まれた生活のほうがよっぽど生活しにくい環境であると思った。
これから、もう一度環境について見直し、自然とともに生きていると実感しながら生
活できるような環境で生活して行きたいと考える。
引用文献
宮田光男編著,2000,『環境 話の泉―みんなで考えよう76のトピックス―』
引用ウェブページ
農家民宿 樵屋
http://www.haginet.ne.jp/users/kikori/(2007年1月20日参照)