問い合わせ)コンゴ川の「船長」という魚について #生物学御研究所
2024/03/27
コンゴ・ザイールのモブツ・セセ・セコ・クク・ンベンドゥ・ワ・ザ・バンガ大統領と日本の皇太子がコンゴ川に浮かべた船で食事することになった時、西田睦(後に琉球大学長)さんの紹介で、宮内庁から山口大学教養部の安渓研究室にかかってきた電話。
宮内庁職員「・・・・・・昼食会で供される食材に『船長』という名前の魚があるらしいのですが、殿下は生物学者であられるので、ご専門の魚のことなどを話題にできれば良いなと思うところですが、『船長』とはどのような魚かわからないのですけれど、お教えいただけないでしょうか?」
安渓「これは、フランス語でcapitaine(カピテーヌ)と呼ばれる魚です。この言葉は「船長」の意味もありますが、1番美味しくて大きくもなる、白身の最高級魚とされており、ラテン語のcaput =頭= から来た、「魚のかしら」というような語感の名付けでしょう。スズキ科の淡水魚です。英語ではNile perchとよび、学名はLates niloticusです。コンゴ川・ナイル川、最近はビクトリア湖にも生息しています。ザイール共和国の東の端にあるタンガニイカ湖には、同属の別種が3種生息しています。ナイルパーチは、日本では高知沖あたりで捕れる アカメと同じ属ですので、生物学御研究所でもお調べになって話題を膨らませられてはいかがでしょうか。」
アカメ属やフグ属が海にもコンゴ川にも生息しているように、タンガニイカ湖にはイワシの仲間も2種生息していて、それを干して流通させているのですよ、と教えてあげればよかったけれど、いきなりの電話だったので、聞かれたことだけを答えました。
答えた内容の元ネタは以下にあります。
日本語で1982年に、『アフリカ研究』に載せてもらいました。
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/africa/1982/21/_contents/-char/ja
フランス語で1986年にベルギーのテルビューレン中央アフリカ博物館から
https://ankei.jp/yuji/?n=1875
決定版は、1989年に京大から英語で出しました。 https://www.researchgate.net/publication/32171146_Folk_Knowledge_of_Fish_among_the_Songola_and_the_Bwari_Comparative_Ethnoichthyology_of_the_Lualaba_River_and_Lake_Tanganyika_Fishermen
おまけ
2006年に日本で公開された映画『ダーウィンの悪夢』でいっぺんに悪者あつかいされた、ナイルパーチ。逆境にめげないアフリカの人々のポジティブなパワーがまったく描かれていない、暗い場面だけを集中してみせようという悪夢のような映画でした。https://ankei.jp/yuji/?n=350