知られざる奄美・沖縄)ランドマクナリー社の世界地図を読む(第2版)
2006/09/29
2000年のこと、西アフリカのガボン共和国を訪ねた時、国立図書館で調べ物を
させていただいたことがある。
そこに一枚物の世界地図があり、広げてみると「日本海じゃなくて東海!」運動推
進会(大韓民国)から贈られたものだった。なるほど、日本海という名前もまわりの
国から見れば失礼な言い方なのだな、と気づいて、創元社の世界児童文学集で読んだ、
アンドレ・モロアさんの「デブの国ノッポの国」を思い出した。二つの平和な国が、
海をはさんで間にある島の名前のことで戦争になるというお伽話だが、「ノッポデブ
島」か「デブノッポ島」かが争いの中心であった。
やがて戦いは、双方の全軍が相手の虜になるという結末を迎え、和平ののち、肩を
並べて散歩しながら、デカデブ大公は、「バラ島はどうじゃ?」といい、カミナリノッ
ポ閣下が、「まことにけっこうでございます」と答えるというところでハッピーエン
ドとなっている(現在の訳では、登場人物は違う名前になっているようですが、昔読
んだものの記憶のままに書いています)。
さて、一昨日のこと、萩の中小企業を訪ねるという大学主催のもよおしに、大学院
生や教職員あわせて9名と参加した時のこと。シソワカメというふりかけを開発した
メーカーの壁に、世界地図が貼ってあった。
ちかごろ22年ぶりに奄美大島と加計呂麻島と与路島・請島を訪ねて、4週間かけ
てほぼ全集落をまわったので、そのあたりに目をやった。ところが、なんと、
間違いだらけなのである。
アマミオ島というのは、奄美大島を「奄美大」と「島」で、切ったものだろうし、
名瀬の中の小字である古見があるのに、なぜか名瀬はなく、宮古はないが、イリオモ
ト島がある、といったぐあいである。
これは、日本部分の情報を選んだ担当者の責任だろうけれど、本州などの北の島々
の地名には綴りの間違いもほとんどないようだ。鹿野政直さんの『鳥島は入っている
か』(岩波書店)にあるように、ヤポネシアのしっぽの島々のことは、忘れても、正
確でなくてもいいという、そんな意識が読み取れるといっては、あまりに厳しすぎる
だろうか。
2006年9月29日しるす
安渓 遊地
参考ウェブページ
韓国は『ミサイル』よりも『日本海表記』のほうが気になる?(2006年07月07日)
http://specificasia.seesaa.net/article/20399498.html
日本海呼称問題に対する日本政府の取り組み
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/nihonkai_k/torikumi.html
デブの国ノッポの国
http://www.amazon.co.jp/gp/product/408274018X
鳥島」は入っているか―― 歴史意識の現在と歴史学
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/00/8/0014970.html
改訂1) 朝、うろおぼえで書いて間違いがあったので、訂正し、引用を付けまし
た。
改訂2) さらに、大学の同僚で政治学者のIさんから、次のようなコメントをも
らいました。了解をもらったので、以下にくっつけておきます。
前略
地名は重大な国際紛争の要因です。「独島」か「竹島」かも、これは領有権がから
んでいます。「日本海」と「東海」も、国際紛争になっています(外務省は「日本海」
というタイトルのパンフレットまで出してます)。国境のほうがしっかり捉えられて
いる場合があります。「北方領土」か「南クリル」か。ここらへんは岩下先生にお聞
きください。「フォークランド」と呼ぶか「マルビナス島」というかもありますね。
呼び名の背後に権力やイデオロギーが隠れてますから…。近くだと「台湾」か「中華
民国」か「台湾省」か。
ただ、外国の辺境については、恐らく関心も知識もさほどない場合もあるでしょう。
私たちの使っている地図の表記も、ひょっとしたら相当間違っている危険性がありま
す。最近、『小笠原クロニクル』(中公新書ラクレ)を読んで、私はいろいろと驚かさ
れました。日本で一番の辺境は東京にあったとは。アジアの隅っこのことは、ヨーロッ
パの人には意外とわかっていないのかもしれません。
追伸
小笠原のことは、ちょっと地名とは違う話(欧米系住民がいる、などのこと)ですが、
(ホームページに)入れていただいてもいいです。沖縄・奄美と並んで軍事占領され、
完全アメリカ化した占領統治がなされていたというのは全然知らなかったのです。こ
のとき、日本系住民は排除され、欧米系住民だけが居住を許されていたことや、日本
語完全撤廃政策が実行され、住民は英語で授業を受けてグアムの高等学校へ進学し、
アメリカのデパートの通信販売でものを買っていたなどなど、驚きの連続です。日本
本土は「三丁目の夕日」の時代ですよ。