文化人類学・地域学)武器をもって闘ったお坊さんたち──幕末長州の真宗僧の活躍_RT_@tiniasobu
2021/01/08
通説を疑い、足もとの歴史や自分史と向き合ってみる、という内容です。
1.前回は、500年以上前に生まれて、聖人に列せられている フランシスコ・サビエルがどんな人だったか、ということを感じていただきました。サビエルほど昔の人ではないのですが、山口で神格化され、その弟子たちまでが神社に祀られている、吉田松陰のことを考えてみましょう。
「松陰先生の『斬れ』と松下村塾の柱の傷」という記事を読んでください。塾に入った子どもの目に、先生がどのように映ったかが書かれています。
http://ankei.jp/yuji/?n=2138
その記事の最後のところに、松下村塾の増築を先生も塾生も総出でやったことが書かれています。歴史研究家の一坂太郎氏によれば、品川弥二郎が壁を塗り、松蔭先生が壁土を差し出すという役をしている時に、泥が落ちて先生の顔を直撃したのだそうです。その時の先生の言葉「おい弥二(やじ)よ、あまり師の顔に泥を塗るものでないぞ」。これが長州ギャグの始まりであり、後に親父ギャグとよばれるようになるものだという説もあります。
さて、課題1は、吉田松陰はどういう人だったか、ということを日本の歴史を知らない外国人に説明するというものです。twitterみたく本文140字以内で書いてみましょう。文献は必要ですが、wikipedia以外にしてください。
2.吉田松蔭を倒幕論者にしたのは、聾唖の真宗僧・宇都宮黙霖(うつのみや・もくりん)だったと言われています。また、同じく真宗僧の月性(げっしょう)が、萩の近くで説教をするときは、松蔭は塾生たちに、自分の堅苦しい話より、月性の説教を聞きにいけと勧めました。今で言うプレゼンの達人であり、人を動かす力があったのでしょう。月性とその流れを汲んだ僧たちの活躍を語る講義の動画を見て、幕末から維新にかけての激動の時代を生きた庶民の生活を思ってみましょう。
幕末維新の長州僧一月性・島地黙雷・大洲鉄然・赤松連城・香川葆晃 (動画77分)
https://youtu.be/PU7FrrLnb8Y
課題2.
名前というのは大切なものです。アメリカの偉大な文化人類学者アルフレッド・クローバーの娘のアーシュラ・クローバー・ル・グインが書いた『ゲド戦記』(岩波書店)には、相手の本当の名前を知れば、その相手を支配できるので、魔法使いはみな本名でなく「ハイタカ」や「ノコギリソウ」などの通称で通している、と描かれています。同じ名前をもつものは、体は別でも同一人格である、という考え方は、ソンゴーラ人の神話の講義で紹介しました。ジーン・ウェブスターの『あしながおじさんDaddy-Long-Legs』の主人公のジューディは、拾われた子だったので、電話帳のはじめのへんのAbbotという、ぱっとしない姓を付けられてしまいました。修道院長という意味ですものね。講義のビデオの中に、私の名前の「安渓」や「遊地」がどこから来たのか説明している部分があります。あなたは、ご自分の名前の由来や意味をご存知ですか? 私は魔法は使いませんから、差し支えのない範囲で、教えてください。名前でなくてもあだ名でもけっこうです。私は、運動神経がなくて、体の動きがのろいというので、中学・高校生のころは家族から「牛(ぎっ)たん」と呼ばれていました。もしもまだご存知でなかったら、名前を付けてくれた人に尋ねてみましょう。
課題3 僧月性が、今の時代に生きていたら何を考え、どのように行動するだろうか、という動画中の私からの問いかけを参考に、日本(または中国)では忘れられた人を思い出してみましょう。もう亡くなったあなたにとっての身近な人をひとり選んで、その人の人生を200字以上で紹介してください。もしもその人がいま生きていたら、現在われわれが直面している課題(例えばコロナ禍の中での貧富の差の拡大)にどのように立ち向かっただろうか、についてのあなたのお考えも含めて書いてください。プライバシーの問題がある場合は、設定を若干変えるなどしていただいてかまいません。名前も匿名等でけっこうです。字数は自由です。文献不要です。
主な参考文献
安渓遊地他、2012「明治初期に仏教を救った山口の四傑僧:島地黙雷・大洲鉄然・赤松連城・香川葆晃の研究」(英文)山口県立大学学術情報5巻:31-51
家近良樹、2015「敗者の側から幕末維新史を振り返る 会津藩や徳川慶喜はなぜ敗れたのか」『経済史研究』18 巻 p. 1-36
岩田真美、2011「幕末期西本願寺と『仏法護国論』をめぐって――月性「護法意見封事」との相違について」『仏教史学研究』53(2):41-61
香川静爾、年代不明「政所山善宗寺系図」善宗寺
児玉識、2005「長州藩上層と真宗――『蓮茎一糸』を中心に」『近世真宗と地域社会』84-105、法蔵館
田中彰監修・田村哲夫校訂、1998『定本 奇兵隊日記 下』マツノ書店
徳応寺、1992『寺史』浄土真宗本願寺派竹園山徳応寺
村上護、2011『島地黙雷伝――剣を帯した異端の聖』ミネルヴァ書房
森川地聞、1970『維新百年・傑僧大洲鉄然の生涯』久賀町役場
リンク
越の国巡礼 https://ankei.jp/yuji/?n=1668
明治初期に仏教を救った山口の四傑僧(英語)
http://ypir.lib.yamaguchi-u.ac.jp/yp/metadata/1095
リンク切れの場合は、firefox限定で 以下からごらんいただけます。
https://www.yamaguchi-pu.ac.jp/li/ai/
安渓 遊地