文化人類学)お金って何? コンゴ河上流で物々交換の市場に出会って考えた #DR_Congo_#money_#barter_RT_@tiniasobu
2020/12/13
2021年秋学期、心理学を学ぶ学生向けの授業の課題です。
シラバス上のタイトルは、以下の通りです。
文化人類学第9回 お金が通用しない暮らし──贈り物・物々交換・地域通貨・仮想通貨
なぜ、いつまで、こんな見も知らぬアフリカでのフィールドワークの話を聞かされなきゃいけないのだろう? という率直な疑問を持たれた方があります。そもそも心理学と文化人類学になんのかかわりがあるのかな? と思われた方も多いと思います。
こころ(と体)の健康に不安を覚える方へのケアができる専門家に必要な資質はなんでしょう?
マニュアルにそってできるだけ速く診断を下し、それにあった薬を処方することでしょうか。ちなみに、薬はみんな副作用がありますから、精神科医であり、ユング派の分析心理を学んだ私の兄は「健康保険で点数がつくなら、イワシの頭3つとか処方するけどなぁ……」と言っていました。
日本のように「がんばる」ことに高い価値をおき、しかも相互監視がきびしい社会で暮らしていると、心が不調になりやすいのではないでしょうか。「みんな違ってみんな変」が当たり前の、コンゴの森で出会った異文化に驚く経験は、「常識」を一度捨てて、自分とは違う相手と向き合い、それを受け入れるという「こころのケア」のための基礎的な訓練として大切なものを含んでいるかもしれないと思います。
課題0 あなたが「こころのケア」の専門家になったときを想像してください。
みかけが山口県でよく見かける人たちとは違う(例えば肌の色など)人が、心理相談に来られた時、どんなことに気をつけて対応しますか? 言葉・態度・その他の3つについて、対応の注意を日記風に書いてみてください(同僚に、例えば東南アジアから来ているスタッフなどもいるかもしれません)。
「20??年?月?日。私の職場にこんな人が現れた。その人は……(どんな見かけか、あなたの設定を書く)。私は文化人類学で学んだことや、心理学のカウンセリングの基礎などを思い出しながら、次のように対応した。……」字数は自由です。引用文献はいりません。
私がパリのタクシー運転手に、いきなり”Est-ce que tu as de ceci
quelconque?”(なにか心配事でもあるの?)と訊いたときの返事は、異文化を生きる人の悩みの例としてご参考になるものがあるかもしれません。
http://ankei.jp/yuji/?n=467
課題1 今回はお金について考えます。あなたの暮らしている社会で、「お金では買えないことになっているもの・こと」を2つ以上挙げてみましょう。それぞれ、なぜ「買えない」とされているのか、そこでお金を使うとどのような社会的な制裁(刑事罰を含む)などを受けるのかについて説明してください。みかけ上ばらばらでも、共通の背景があると説明できる材料が選べると「私にとってお金とはなにか」という問いが、より深まると思います。新聞などのマスコミ報道の引用の練習として取り組んでみてください。150字以上。
引用文献(参照したけれど文中で具体的に引用しなかった、参考文献は、リストに加えません)
『〇〇新聞』何年何月何日、何面、地方版、などの情報が必要です。ネット上の情報の場合は、
無料では全文読めない場合もありますが、URLの最後に(2021年12月10日最終閲覧)などと付け加えてください。
前回の自給的食文化の豊かさにつづいて、今回は、お金が通用しない社会で暮らした衝撃です。
安渓遊地の博士論文となった研究の紹介で、79分の動画です。
https://youtu.be/q3rCMwzDJFo
課題2 この動画を見て、1)1980年頃のソンゴーラ人社会の経済活動のあり方のまとめ、2)「私にとってのお金」との違い、3)両者を比較して、「地球1個分」以下の暮らしを可能にするようなお金とのつきあい方について、あなたなりのアイデアを述べなさい。。150字以上。引用文献が必要で、googlescholarで「お金+心理」「エコロジカル・フットプリント」「エシカル経済」「物々交換」などを検索してごらんになると、面白いアイデアがみつかるかもしれません。
付記
プレゼンの最後のページの文字が切れていましたので、以下に貼り付けます。
コンゴ民主共和国・ソンゴーラ人の経済人類学(和文)
安渓遊地、1984「『原始貨幣』としての魚」『アフリカ文化の研究』アカデミア出版会
安渓遊地、1984「ザイール川上流部の物々交換市」『民族學研究』49(2): 169-173
安渓遊地、1991「再訪・ソンゴーラの物々交換市」『ヒトの自然誌』平凡社
読むのはたいへんですが、
英語の博士論文とそのその和訳を、以下に掲載しました。
http://ankei.jp/yuji/?n=2498
1995年に勃発したコンゴ内戦後は、トラックの通る道路や汽船や椰子油を絞る工場などのインフラがすべて崩壊したコンゴ民主共和国の田舎では、お金を手に入れるためには農産物を担いだり自転車に載せたりして1週間も歩かなければならないという現状があります。それをなんとかしようと、研究者がひとはだもふたはだも脱いで800キロも下流の都市・バンダカまで交易船を仕立て、16人で乗り組んで旅をするという、『コンゴ・森と河をつなぐ』
(明石書店)は、フィールドワーカーが地域おこしに乗り出してしまった例としてたいへん面白く読みました。その著者たちが 躍動するコンゴの人々と自然の現状を熱く語っているサイトがあります。興味のある方はのぞいてみてごらんなさい(講義のビデオがすでにとても長いので、義務ではありません)。
https://www.youtube.com/watch?v=03MEWumWeE0
安渓遊地