暮らしの人類学)3回にわたって大学院生たちがいろいろな話を口頭発表しました
2009/01/29
安渓遊地です。
暮らしの人類学という授業をやっています。
http://kyoumu.ypu.jp/o.php?code=G120600&field=ngrad&kiso=off&gakki=2
地域の女性も加わってにぎやかなゼミなのですが、おわりの3回にわたって大学院生
たちがいろいろな話を口頭発表しました。
大学院生のNさんが、こんなすてきなレポートを読んでくださいました。ほかのみな
さんのもすばらしかったのですが、
遊児 という新しい名前をもらいましたので、ご本人のお許しをえて、掲載させてい
ただきます。
「自給自足の生活を楽しむ」というタイトルです
【学び】
この授業を通して大切なことを学んだような気がする。
「あなたはどう暮らしますか?あなたはどう生きますか?あなたは本当の豊かさとは
どう思いますか?」とアンケイ先生は、授業を通して一貫してそのように語られたの
だと思う。
先生はふんわり、遊ぶように、子どもが内緒の楽しいお話でも聞かせてくれるように、
授業を進められた。まるで名前の遊児のように。だけどなぜか、しばしば胸キュンと
なった。なぜだろうと思ったが、先生はいつも私達の心の内へ入って来て「こんにち
わ」と「本質」を問われていたのだ。だから心のドアをノックされたら「あらこんに
ちわ」と答えるべく「胸キュン」になったのだろう。
【気づき】
食品添加物
「マク△ナルド」や、添加物を通して、食の安全の問題について考えさせられた。と
ても強い衝撃を受けた。日常茶飯事に危険がいっぱい潜んでいる事を実感した。まず
我が家で出来ることは、インスタント食品はなるべく使わない、食べないということ
である。即、実行していることは今までの「出しの素」を廃止し、「いりこ・昆布」
からすべて出しを取り、既成食品は買わないようにしていることである。
自然の声を聞く
宮本常一先生、耕さない農業、沖縄の染色、山尾三省さん、みんな求道的に自分を突
きつめ、その中で一番大切なものに気づき、それが「自然」であると私たちに教えて
くれた。
西岡常一さんは「2000年経った木は、2000年持つように造らなあかん。命の
移し変えや」と言われた。
染織家の石垣昭子さんは、化学薬品ではなく、西表島の自然の植物から、えもいわれ
ぬ美しい色(藍、黄、桃など)を紡ぎだし布を染めていた。これも命の移し変えだと
思う。そしてまた、
地球交響曲のDVDの中で、宇宙飛行士の方が「地球は青くて美しい。大丈夫だ未来
はきっと守られる」と言われたことが心に残っている。
自然を破壊するのも守るのも人間である。海、山、川、動物、植物、人間、みんな繋
がっている。みんな自然の命の連鎖の中でそれぞれの命の営みをしている。
野菜づくり
昨年から、夫はアメリカ人の同僚が街中の小さな畑で野菜づくりを楽しんでいるのに
刺激を受け、我が家の持て余している畑を、綿密なスケージュールを立て、図面まで
描き、多くの種類の野菜を植えた。野菜づくりは土作りだと言い、牛糞や有機肥料を
これでもかと言うほどたっぷりやっている。そのせいか、土がふかふかで柔らかく、
大根、じゃがいも、里芋、白菜、小松菜、ほうれん草、レタスなど、とてもよくでき
ている。
特にじゃがいもは、ほれぼれするほど立派な姿で現れてくる。里芋も「中山一だ」と
近所のお百姓さんに褒められ、夫はさらに勢いを増して畑づくりに精を出す。
あまりにたくさん出来たので、友人知人に配ったり、娘や母、遠くの親類にも送った。
そして、白菜漬けやたくわん漬なども作って保存食を常備した。
しかしそれでも到底二人では食べきれない。それでとうとう、朝市に出してみる事に
した。
平成21年1月17日、徳地朝市へ初出荷!生産者ナンバーも貰って、一人前の「農
家」としての扱いに、夫はいたく満足気であった。
【これから】
私は最初、たった夫婦二人所帯なのに、わざわざ野菜を作らなくても、食べるだけ買
えば良いと思っていた。夫のあまりの本格的な野菜作りに、種や肥料代の経費や労力
を投資することも含め、内心快く思っていなかった。
我が家で食べるのは、ほんのわずか、ほとんど人に上げるために作っているようなも
のである。無駄なことをしていると、批難までしていたのであった。
しかし、この授業を受けて、夫の野菜づくりを素直に喜べるようになった。むしろ誇
らしく思えるようになった。自分の家で作った物、しかも有機野菜である。採れたて
の自然の恵みの果実を口にすることができるのである。
夫はまた魚釣りも趣味であり、よく釣って帰る。そんな日は魚に野菜、他に何も買う
ものはない。まさに自給自足の生活である。この上なく豊かな気持ちになる。
母は言った。「ひとみのところは宝の山がいっぱいある」と。何のことかと思ったが、
畑のことであった。畑を掘れば、野菜という「お宝」がたくさん出て来るというので
ある。
なるほど、私はお宝山を持っていた。自然というお宝に囲まれていた。このお宝を大
切にし、星を眺め、鳥の声を聞き、風の音に耳を傾けよう。そして、できる範囲でゆっ
くりと自給自足の生活楽しみたい。