上関)日本鳥学会の決議文(9月14日の総会決議を経た、正式のもの)
2008/09/23
あんけいゆうじ@石垣島です。
鳥学会の決議ができあがったという知らせがありました。以下、本文と添付のワードファイルでお知らせしておきます。
以下引用
環境大臣 斉藤 鉄夫 殿
上関原子力発電所建設計画に係る希少鳥類保護に関する要望書
日本鳥学会2008年度大会総会決議
2008年9月14日
日本鳥学会会長 中村 浩志
山口県熊毛郡上関町の長島は、瀬戸内海の西部に位置し、豊かな自然に恵まれ、周辺海域での漁業が営まれるなど、人間活動と自然との調和を保ってきた地域です。現在、長島においては中国電力株式会社により、上関原子力発電所建設計画が進められ、その一環として田ノ浦の水面の埋め立てについて山口県に許可申請が提出されています。
長島および田ノ浦とその周辺においては139種の鳥類の生息が記録されており、その中には国のレッドリスト(絶滅のおそれがある生物種のリスト)に掲載されている鳥類種も少なくありません。とくに絶滅危惧II類のカンムリウミスズメと準絶滅危惧に位置づけられているカラスバトは国の天然記念物にも指定されています。両種は最近までこの地域での生息が知られておらず、2001年6月に中国電力株式会社が経済産業大臣に提出した「上関原子力発電所(1,2号機)に係る環境影響評価書」には、両種に関する記述が認められません。しかし、2005年以降、新たに生息が確認されたことから、日本鳥学会は、上関原子力発電所建設計画に関する環境影響評価の改めての実施が重要であることを強く認識しています。
カンムリウミスズメは日本近海と韓国南部のみに生息し、暖海域で繁殖する唯一のウミスズメ類で、総個体数は4,000~10,000羽と推測されています。長島周辺における生息状況はほとんど解明されていませんが、幼鳥を含む複数個体が繁殖時期にこの海域で活動していること、および発電所計画区域内に繁殖に適した環境が存在することから判断すると、発電所計画区域内で繁殖している可能性があります。また、本種は繁殖期・非繁殖期を通じて、この付近の海域を行動域の一部として利用している可能性があり、発電所の建設後の稼働による温排水が本種の食物資源に影響を与えることが懸念されます。発電所建設の環境影響評価にあたっては、まずカンムリウミスズメの繁殖状況および海域利用の現況を明確にすることが必要です。
カラスバトについては、中国電力株式会社(2005~2006年)や最近の学会員による調査結果から推測すると、発電所計画区域内が、周辺島嶼も含めたカラスバトの地域個体群の生息場所の一部として利用されている可能性があります。地域個体群を保全するためには、繁殖集団が確認されている島に加えその周辺の生息環境も含めた保全が重要です。
日本鳥学会は、この発電所建設計画およびその環境影響評価に関して、以下の事項を要望します。
カンムリウミスズメについて、中国電力株式会社は詳細な生息状況調査を実施し、調査結果を開示するとともに調査結果に基づいて環境影響評価を行うこと。環境省、経済産業省、文化庁、山口県、上関町はこれらが適正に行われるよう、指導すること。山口県は、カンムリウミスズメに関する環境影響評価と必要な保全措置の計画立案が行われるまで、公有水面の埋め立てを許可しないこと。
カラスバトについて、中国電力株式会社は実施した調査結果の詳細を開示すること、ならびに調査結果に基づく環境影響評価を実施すること。環境省、経済産業省、文化庁、山口県、上関町はこれらが適正に行われるよう、指導すること。
○提出先: 環境大臣、経済産業大臣、文化庁長官、山口県知事、上関町長、中国電力株式会社社長
○連絡先: 佐藤 重穂(日本鳥学会鳥類保護委員会副委員長)
独立行政法人 森林総合研究所 四国支所
流域森林保全研究グループ
〒780-8077 高知市朝倉西町2-915
TEL 088-844-1121 FAX 088-844-1130
shigeho@affrc.go.jp (@を半角にして送信)
○添付資料 (1) 上関町・長島周辺で記録された鳥類
(2) 建設予定地周辺図
(添付資料は、ここでは省略)
以上、引用終わり