上関原発予定地)公有水面埋め立てに関する意見を山口県知事あてに郵送しました
2008/08/01
8月4日必着ということなので、以下のような意見を書いて
〒753-8501 山口県山口市滝町1番1号 山口県土木建築部港湾課港政班
あて郵送しました。
2008年7月31日
山口県知事・仁井関成様
熊毛郡上関町大字長島地先公有水面の埋め立てに関する意見
長島の生物多様性研究者グループ・世話人
安渓 遊地(あんけい・ゆうじ)
私どもは、このたびの埋め立て申請が出された、長島の田ノ浦とその周辺の生物多様性に学問的な重要性を認め、多大の関心をよせている研究者グループです。これまでに何度も現地調査を重ねてきた結果をふまえて、この地域の生物多様性を十分な調査もなされないまま、埋め立てによって破壊することに反対します。
最近その存在が報告された、山口県絶滅危惧種ⅠA類のカンムリウミスズメについては、事業者が依頼した「学識経験者」と称する人物による判断だけで、問題はないとする事業者の態度、また、県民の財産であり世界の宝でもある上関原発予定地の生物多様性を、守るべき行政が、事業者まかせで、主体性のある指導その他をおこなっていない現状については、非常に遺憾に思っております。
埋め立てによる改変区域内での繁殖の可能性があると、生態学会会員で、カンムリウミスズメの産卵地の調査の経験がある研究者は指摘しています。また、周辺住民からの聞き取りによれば、冬季には、田ノ浦の海では、多数のカンムリウミスズメがみられるとのことです。
このようなカンムリウミスズメが繁殖している可能性を調べるためには、最低でも1年間の追加調査をすることが必要と考えられます。
結論として、長島田ノ浦の公有水面の埋め立てに関しては、この場所の研究・教育の場としての高い価値をみとめ、これが失われることについて、利害関係を有する教育・研究者グループを代表して、反対意見を表明します。なお、われわれの意見をふまえて、日本生態学会自然保護専門委員会が山口県知事および中国電力その他に提出した要望書を参考資料として添付いたします。
上関原子力発電所建設計画に係る希少鳥類への影響評価に関する要望書
提出先:環境省、経済産業省、文部科学省・文化庁、山口県、上関町、中国電力株式会社
2008年6月30日日本生態学会自然保護専門委員会・委員長 立川賢一
2000 年10月18日、中国電力株式会社は「上関原子力発電所(1,2号機)に係る環境影響調査中間報告」を通商産業省に提出しました。通商産業省は環境審査顧
問会・原子力部会を2000年11月9日に開催し、その内容を了承しました。さらに山口県知事は、2001年1月29日、この中間報告書においては、
「1999年11月25日付けの知事意見は、基本的に尊重されている」との見解を経済産業省資源エネルギー庁あて送付しました。
日本生態 学会は、2001年3月、この「中間報告書」に認められる5項目の問題点を指摘しました。そして、日本で唯一残されたと言える内海の貴重な生物多様性とそ
の関係の総体としての生態系に対し、不十分な環境影響評価に基づく開発が実施された場合、取り返しのつかない悪い影響が及ぶことが懸念されるとして強い危
惧を表明しました。
2001年以降、さらに多くの綿密な調査を行った結果、原子力発電所建設予定地である山口県熊毛郡上関町長島の田ノ浦
およびその周辺において、国指定の天然記念物である鳥類のカンムリウミスズメSynthliboramphus wumizusumeとカラスバト
Columba janthinaの生息が新たに確認されました。これら2種類に関して上記の環境影響調査中間報告ではその存在さえ記述されていません。
カ ンムリウミスズメは日本特産種で、推定生息個体数が最大でもわずか約10,000羽であるとされており、世界のウミスズメ類の中でも極端に生息個体数が少
なく、かつ最も絶滅に瀕している海鳥と言われています。そのため国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、日本で繁殖する海鳥の中でアホウドリ
Phoebastriaalbatrusと同一ランクのVulnerable(絶滅危惧第Ⅱ類)に指定されています。このようにカンムリウミスズメは日本で最も緊
急に保護が必要とされている海鳥であり、日本の海鳥の代表として強く保護が叫ばれている国際的な保護鳥です。また、繁殖期以外は常に海上で生活し、岩の隙
間などの小空間で営巣するなど、普通に見られる鳥類とは大きく異なる極めて特異な生態を持っています。そのため、生息状況が極めて把握し難い種類でもあり
ます。従って、この海鳥について研究実績のある研究者でなければ十分な調査も正当な評価も不可能であると思われます。
カンムリウミスズメ もカラスバトも共に国の天然記念物に種指定された国際的にも極めて貴重で重要な種類であることから、これらの鳥類の生態に精通した専門家により十分な時間
をかけた調査が行われる必要があります。その調査結果をもとに原子力発電所建設計画に基づく田ノ浦の埋め立て等による影響評価が行われ、その上で繁殖個体
群として存続するに十分な保全措置がとられなければなりません。特に、国・山口県・上関町・中国電力株式会社は、2008年6月6日に施行された「生物多
様性基本法」を忠実に履行して、必要な保全策を早急に講じる義務があります。したがって、我々は環境省、経済産業省、文部科学省・文化庁、山口県、上関
町、中国電力株式会社に対して、以下に記した対応を要望するものです。
1)カンムリウミスズメが原子力発電所予定地の改変区域内で繁殖し
ている可能性があります。そのため、これまでにカンムリウミスズメの巣や卵等を見て繁殖を確認した実績を持ち、本種の営巣環境と繁殖生態に精通した研究者
の参加を得て、さらなる調査を重ね、将来の潜在的な生息可能性をも含めた十分な保全計画をたて、影響評価を実施してくださることを要望します。
2) カラスバトが原子力発電所の予定地周辺で繁殖している可能性があります。そのため、過去にカラスバトの繁殖を確認した実績を持つ研究者の参加により、さら
なる調査を重ね、潜在的な可能性も含めて個体群維持に十分な保全計画をたて、影響評価を実施してくださることを要望します。
(注)郵送したものには、住所とサインが入っていますが、ここでは省略しています。