国際文化学研究会)2007年1回目「フィールドワークと研究のモラル」の記録
2007/04/27
山口国際文化学研究会がいよいよ立ち上がって、2007年4月27日の19時30分から県立
大学C号館1階の国際文化学部会議室で開催されます。
その時の配付資料(図解)と上映される予定のパワーポイントファイルを添付して
おきます。
図解の裏には、以下のような文章などが貼り付けられます。
『沖縄民俗事典』(吉川弘文館、2007年刊行予定)原稿
調査地被害(ちょうさちひがい)
沖縄や奄美の島々で、度重なる民俗調査や方言調査などにうんざりしているという
率直な声を耳にすることがある。こうした「調査される側の迷惑」を、宮本常一は「
調査地被害」と名付けた。宮本は、学問の分野を問わず全国にこうした被害が多いこ
とを具体的に指摘し、人文科学ならぬ「尋問科学」、偏見理論、略奪調査の実態を生々
しく述べている。「調査というものは地元のためにはならないで、かえって中央の力
を少しずつ強めていく作用をしている場合が多く、しかも地元民の人のよさを利用し
て略奪するものが意外なほど多い」と警鐘をならした。しかし、沖縄では、現在も調
査地被害が続いている。安渓(1991)は、借りたものを返さない、地元民の書いたも
のを盗用する非常識な大学教員の例などを、聞きとりによって多数あげている。この
問題は、個々の調査者のモラルの問題であるだけでなく、結局、調査する側が「調査
してやる」と思い上がってしまうような、地元民との社会的な立場の違いから生じる、
フィールドワークにかかわる構造的な問題でもある。このような課題を乗り越えるた
めに、宮本は「仲間と思われればいいのじゃよ」と後進を諭した。調査後も長いつき
あいを保ち、地元の人と共著の形で地域誌を作ることや、報告を発表する前には、話
者に一度見てもらうことを習慣づけるなど、とりくむべき課題は多い。
宮本常一、1972「調査地被害――される側のさまざまな迷惑」『朝日講座・探検と
冒険』7、朝日新聞社(1975『現代日本民俗学 Ⅱ』三一書房に再録)
安渓遊地、1991「される側の声――聞き書き・調査地被害」『民族学研究』56(3)
、320~326
(執筆 安渓 遊地)
西表島の33年プレゼン.pdf (474KB)