上関)長島の自然を守る会・中電の台船による海中の破壊について県への申し入れと口頭の回答
2006/11/29
長島の自然を守る会では、11月4日の上関原子力発電所建設予定地の調査を行な
い、台風によりボーリング台船がながされたことにより、海中で大きな破壊が起こっ
ていることを確認しました。これを踏まえて、緊急に県に申し入れをしましところ、
以下のような回答を口頭で得ました。回答の後に、意見交換をして、県の姿勢をただ
しましたが、事業者におまかせしている、という答えがほとんどで、貴重な自然を守
るのに十分な監視体制がまったく実現できていないことを痛感しました。
長島の自然を守る会による詳細調査の全面中止を求める申し入れ(緊急)
に対する山口県庁商工労働部審議監による回答のあらまし
平成18年11月27日(月)
商 工 労 働 部 商 政 課
本日の申し入れについては、私(西本審議監)から知事に伝えさせていただきます。
本日の申し入れについては、12月15日(金)までに文書で回答を差し上げます。
申し入れ事項については、上関原電計画を総括する商工労働部から、一括して現時
点の見解をお伝えいたします。
(申し入れ1)
台風13号の影響について、11月4日の当会の調査で異変を確認しました。(別添写真
参照)中国電力にデータ改ざんであるのか、調査不十分であるのか、事実を確認され、
いずれの場合でも、これまでの調査結果を公表させ(写真含む)、事業者による再調査
の指示をされると同時に県独自の再調査をされること。また、環境への負荷について
も調査・報告されること。
(回答1)
事業に伴う環境への影響については、事業者の責任において調査されるべきもので
あります。
貴会からの情報については、事業者へ伝えます。
なお、詳細調査の実施においても、県民の信頼を得て行うことは当然のことであり、
環境への影響の度合い等を判断して必要なものは公表するよう事業者に要請しており
ます。 また 県としては 環境監視チームにより現地調査を行つた結果、詳細調査を
要因とする海洋汚染等環境保全上の問題は生じていないと認められることから、独自
の再調査を実施することは考えておりません。
のちほどの意見交換の中で、さらに詳細にお聴きしたいと思います。
(申し入れ2)
去る10月13日申し入れの際、2001年に確定された環境影響評価書で義務付けら
れているヤシマイシン近似種の再調査において、当会が6度に亘り、ヤシマイシン近
似種の生貝及び卵塊を確認しているにもかかわらず、事業者の報告では1個体も確認
していないことを問題視したところです。昨年の陸域ボーリング垂れ流しはもとより、
土用ダム及び下関発電所におけるデータ改ざんにも見られるように、事業者の隠蔽体
質は企業姿勢根幹にかかわる根の深いものであることが今や明らかになりました。
これまでも再三要求してきましたが、調査に携わる専門家名及び調査内容を公表する
よう断固たる態度で指導されること。
(回答2)
改ざんはあってはならないことであり、県としても厳しい姿勢で対応してまいりま
す。 お示しの事要の公表については、事業者が適切に判断するものであると考えて
おります。
なお、 申し入れ内容については、事業者に伝えます。
(申し入れ3)
上記2と同様の理由により、事業者に国の天然記念物であるカラスバトの調査結果
及び専門家名の公表をさせること。また、試掘坑調査では24時間体制で発破をかけ
ると伝え聞いております。その振動及び騒音の実測値を明らかにされるとともに、試
掘坑調査がカラスバトやオオコノハズク・フクロウなどに与える影響について、専門
家の見解及び専門家名を明らかにされること。
(回答3)
現在調査中の生息調査の主体は事業者であり、その調査結果及び専門家名の公表に
ついては、事業者が適切に判断するものであると考えております。
試堀坑調査を含めて詳細調査については、環境保全上の問題が生じないよう環境保
全計画が定められており、県は、今後とも環境保全計画に基づく環境保全措置の実施
状況について、チェックしてまいります。
お示しのデ一夕の公表については、先にお答えしたとおりでありますが、専門家の
見解及び専門家名の公表については、事業者が判断するものであると考えております。
なお、 申し入れ内容については、事業者に伝えます。
(申し入れ4)
当会で11月4日に行った地質調査で、予定地周辺の地質が脆弱であり、地形的に
も災害を招く危険性が多大で原子力発電所建設には適していないことが明らかになり
ました。(別添参照)さらに、詳細調査による伐採や振動によっても崩落の危険性が
予測される場所もあります。直ちに危険な詳細調査は中止されること。
(回答4)
詳細調査を始め、上関原電建設計画は、安全確保を大前提に事業者の責任と判断に
より、実施されるものであります。
(申し入れ5)
昨年のボーリング陸域および海域ボーリング垂れ流しや度重なるデータ改ざんは、
もはや中国電力の企業努力では自浄作用がないことを端的に表しています。県として、
詳細調査開始後の生態系への環境影響につき、部外者を含む第三者機関を設け、直ち
に専門分野に関わる下記の研究者見解を求められること。
*軟体動物:福田宏・佐藤正典・加藤真・向井宏・山下博由
*スナメリ:粕谷俊雄
*植 物:野間直彦・中根周歩・安渓貴子
*海 藻:横浜康継・新井章吾
*陸生ほ乳類:金井塚務
*海水汚濁度:湯浅一郎
(回答5)
県としては、事業者に対して、詳細調査においても、貴重な動植物が確認された場
合は、学識経験者等と協議し、必要な対応を図る旨の要請を行っているところであり、
事業者において、適切な措置が講じられるべきものであります。
なお、専門家の任命については、事業者により判断されるものです。
また、詳細調査に係る環境保全措置の実施状況について、県環境監視チームにより
監視を実施しているところであり、部外者を含む第三者機関を設けることは考えてお
りません。
(申し入れ6)
用地問題・漁業補償問題・住民合意問題など、課題が山積し、立地のめども立たな
いまま、詳細調査を先行させることは、世界遺産に匹敵する現地の自然環境・生態系
をいたずらに傷つけ、歴史的禍根を残すのみなので、全面中止させること。
(回答6)
県としては、平成13年4月に国に提出した知事意見において、 国に対して安全審査
を厳正に行っていただきたいと要請しているところであり、詳細調査は、そのために
も必要なものであると考えており、中国電力に対して中止を要請することは考えてお
りません。
(申し入れ7)
上関原発建設計画を中止させ、長島の貴重な自然環境・生態系を手付かずで保護し、
次世代に向けた、自然と共生できる施策の検討を開始すること。
(回答7)
県としては、希少野生動植物種など、生物の多様性が確保された良好な自然環境を
保全していくことは極めて重要であると考えており、これまでも、レッドデータブッ
クの作成や希少野生動植物種保護条例の制定など、次の世代へ向けた自然と共生でき
る施策を実施しているところであります。
なお、環境影響評価制度は、事業者において、自主的・主体的に環境の保全につい
て適正な配慮がなされることを確保するためのものであり、事業実施の判断は、事業
者において行われるものであります。
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