在学生はいま)世界の中心でニワトリをさばく――ある日の卒論フィールドワーク
2012/05/28
ソウルから2年間の滞在を終えて、ゼミにもどってきたユキさんが、夢
にニワトリをさばくところを見た、とゼミで報告しました。以前にも、ゼミ生の門野
君(徳地方面を中心に活躍中)が経験させていただいた、ご近所のOさんのところを
紹介しました。
以下、ユキさんのメールです。許可を得て引用します。地域の方のお名前は、イニシャ
ルにしてあります。
昨日連絡先を教えていただいたOさんへ電話がつながりました。
想いを伝えたところ、
「あなたは非常にいいタイミングで連絡をした」と仰りました。
まさに今週の土曜日に現場に立ち会えるということです。
Oさん曰く、山口ではこの人を除いて鶏を綺麗に捌ける人はいない というすごい方
がいらっしゃるそうです。
当日は山口大学の学生も何人か参加する予定で、終わったら一人一羽ずつ持ち帰ら
せてもらえるそうです。
夢でみた光景、昨日もずっと考えていましたが…実現は二日後です。
興奮しています。
また、ご報告します。
テダニ カムサハムニダ。
次は、二日後の本番の活動報告です。
朝10時からの作業を終え、たったいま家に帰ってきました。
たまたま私の様子見で広島から父が来ており、一緒に参加させていただきました。
また詳しいことは論文にて書こうと思います。
走り回るニワトリをつかまえ籠に入れて、頸動脈を切りコーンに逆さまに突っ込ん
で血抜き、お湯で数秒ゆがいて毛をむしり残った産毛を火の上で炙り燃やし、水につ
け(内臓が傷むのを防ぐためです)て台の上で捌くまでを全部やりました。
ニワトリと、イノシシ捌きの名人のご指導を受けながら一羽ずつのいのちを丁寧に
屠りました。
一緒に作業した山大の男子学生はニワトリをつかまえる、そして頸動脈を切る、部
位別に切り分ける際に怒られながらやっていました。
こういうとき、女の方が肝が座っているのかもしれません。
イノシシ狩りの名人には「ライオンだってメスがエサを見つけてくるじゃないか。」
と言われました。
一番上手と褒められたので、調子に乗らせてもらいそのまま最後まで残ってやり遂
げました。
スーパーで一羽買いしてもあんたなら大丈夫だと言っていただきました。
慣れてくると、やはり骨のギリギリまでお肉を削ぎ落としてできる限り無駄が出な
いようにしたいというニワトリへの想いが生まれます。
ニワトリ捌きの名人は、マジャン市場で出会ったアジョシと似て、職人気質あふれ
るスキンヘッドに前掛け、包丁の似合う方でした。
ニワトリに真摯に向き合う姿勢を見て(話し方は豪快でしたが、質問に何でも応え
て下さる親方のような印象)、本当にかっこいいと思いました。
片付けも全てやり終え、Oさんとお弁当を食べてお話をたくさん聞き、お土産とし
て自分の手で捌いた手羽元、手羽先、そして緑の野菜を食べて育ったニワトリの産ん
だ卵をいただきました。
食卓に並べられるまでの過程に少しでも関わりを持てたことが、いのちをいた
だいていることへの感謝につながりました。
スーパーに売られているパックを見たとき「ここはどの部位」と判るし、ますます
食べることへの興味がわいてきます。
このタイミングでOさんのもとでニワトリに出会えたこと、やはり私と食肉はくさ
れ縁なのだと思いました。
父は皆が関心を持たなかったガラを広島に持ち帰り、数日じっくり時間をかけて中
華粥にしたりするそうです。
鶏のあし(韓国ではタッパルと言い、辛い鉄板焼きにして食べます)はモミジと言う
そうですが、市内のラーメン屋に売られていくそうです。
今日一日、本当にたくさんのことがありました。
今夜は冷凍庫で眠る鶏肉ちゃんの一番美味しい調理法を考えながら幸せな夢を見ら
れたら…と思います。
Oさん、安渓先生、同じゼミの門野くん、ニワトリちゃんたち多くの人たちにカム
サハムニダ。
李由紀