Victory) 細見谷裁判・判決文「受益者賦課金の公的助成は違法」#hosomidani #hatsukaichi #hiroshima #eco
2012/04/06
日本生態学会・自然保護専門委員(エネルギー問題担当)としてのニュースです
http://hosomidani.no-blog.jp/
から2012/04/06の金井塚務さんの記事です。拡散しましょ、そうしましょ。
形式敗訴・実質勝訴の判決ー受益者賦課金への補助金支出は違法ー
去る3月21日細見谷渓畔林訴訟(公金違法支出損害金返還請求事件)の判決が言い
渡されました。判決は以下の通りです。
主文
1 第2事件に係る訴えのうち,被告に対して,松田秀樹及び山田義憲に2 1 4 万7
6 3 9円及びこれに対する平成20年9月19日から支払済みまで年5分の割合によ
る金員の賠償の命令をすることを求める部分をいずれも却下する。
2 第2事件原告らのその余の請求及び第1事件原告らの請求をいずれも棄却する。
(以下略)
この主文だけ読むと原告敗訴で残念でした。ということになりますが、実はこの訴
訟の目的は、損害金の返還請求ではなく、受益者賦課金の公金(補助金)支出の違法
性を明らかにすることが最大の目的であった。
つまり、住民訴訟としては「公金違法支出損害金返還請求」という形を取らざるを得
ないので、こうした損害金の返還を求めるということになりますが、これはあくまで
手段に過ぎない。
よって、この判決の主文にはそれほど大きな意味はなく、受益者賦課金に帯する補助
金支出が違法であるとの認定が最も重要な課題であった。
判決模試私の中で、裁判長は判決理由の中で以下のように、受益者賦課金に対する
公金支出について違法であることを明確に述べている。
したがって、形式的には敗訴ではあるが、実質では原告の主張をほぼ全面的に認め、
勝訴となった。その結果、形式的には勝った被告に公訴権はなく、まけた原告は控訴
をしないことで判決は確定することになった。
とりあえず、以下の判決理由のなかで受益者賦課金の公益性の是非を論じた部分を
熟読してください。それ以外の部分はほとんど、これまでの経過と過失の有無に関す
る形式的な議論であることから割愛します。
事実および理由
(前略)
イ 本件補助金は,地方公共団体である廿日市市が,何らの対価的給付を得ることな
く,西山林業組合に受益者賦課金相当額の金銭の交付をするというものであるから,
寄附又は補助(地方自治法232条の2)にあたり,この交付には公益上の必要性を
要するから,この点につき,以下検討する。
(ア)本件補助金は,大規模林道事業の円滑な推進を図るため,西山林業組合が負
担する大規模林道事業についての受益者賦課金に対して交付されたものである(前記
前提事実,甲1,乙8,弁論の全趣旨)。この点,上記認定の既設林道の整備の必要
性,大規模林道事業による経済効果,廿日市市議会での議論状況等を考慮すると,大
規模林道事業自体の公益性は否定しがたいところである。
もっとも,本件補助金は,大規模林道事業の実施主体に対する補助金ではなく,受
益者賦課金の負担者である西山林業組合に対するものであるから,大規模林道事業自
体に公益性があることをもって,ただちに西山林業組合に対する本件補助金の交付に
公益上の必要性があるといえるものではない。
(イ) この点,被告は,西山林業組合は森林が持つ公益的機能の維持,増進に努め
てきた団体であり,その破たんを防ぎ,山林を適切に管理させるために,西山林業組
合に本件補助金を交付することには公益上の必要性がある旨主張する。
a しかし,本件要綱(甲1,乙8)において,本件補助金の目的は,大規模林道
事業の円滑な推進を図るためと規定されていること,廿日市市議会における議論をみ
ても,上記認定のとおり,受益者賦課金を廿日市市が負担することについて,西山林
業組合の事業内容やその公共性が話題に上ったことはなかったこと,純粋に西山林業
組合の経営補助を目的とするものであれば,本件補助金の金額が受益者賦課金と同額
である必要はないことからすれば,本件補助金の交付にあたり,被告の主張するよう
な公益上の必要性についての判断がなされたとは認められない。
b 仮に,本件補助金が上記の趣旨,目的を含むものであったとしても,上記認定
のとおり,西山林業組合は,組合員の利益増進をはかることを目的としており,その
経営地域内から生じる収益は組合の収益とされ,生産した林産物は組合員の共有とさ
れる営利目的団体である。西山林業組合の経営活動が森林の機能保全につながるとし
ても,それは林業経営に伴う反射的な効果にすぎない。「緑の循環」認証会議の森林
認証も,西山林業組合が,林業経営をする上で行っている森林の管理が適切であるこ
とを認証しているものと解され(乙43),西山林業組合が,林業経営により利益を上
げることをその主要な目的としていることに変わりはない。また,西山林業組合でな
ければ森林の適切な管理ができないというものでもない。そうすると,一営利団体で
ある西山林業組合に対し,林道完成による受益に加えて,受益者賦課金の支払いを全
額免れさせることとなるような本件補助金を交付することに,公益上の必要性がある
とは認められない。
c 受益者賦課金が課されると西山林業組合は破たんするという点についても,上
記認定の西山林業組合の収支状況からすると,平成19年度については支出よりも収入
金額の方が大きいし,前年度からの繰越金を合わせれば,平成20年度についても受
益者賦課金を支払うことにより,直ちに破たんしてしまうような状況にあったという
ことはできない。さらに,どの程度の受益者賦課金であれば具体的な破たんの危険が
生じるのか,そのためにどの程度の補助金が必要かといった検討がなされた形跡は全
く窺えない。 したがって,平成19年度及び平成20年度の受益者賦課金に相当する全
額を本件補助金として交付することに,公益上の必要性があるとは認められない。
(ウ)また,被告は,大規模林道事業は西山林業組合だけの利益になるものではなく,
廿日市市全体の利益になるものであって,受益者賦課金は厳密に西山林業組合が得る
利益に対応するものではない上,受益者賦課金の支払が滞ることになれば,大規模林
道事業の円滑な推進が妨げられるため,西山林業組合に本件補助金を交付することに
は公益上の必要性がある旨主張する。
しかし,受益者賦課金の金額や受益者の認定に不服があるのであれば,異議申立を
することが可能である(乙3・21条3項)のに,西山林業組合は異議申立をしなかっ
たのであるから,西山林業組合は,受益者賦課金を支払う義務があることを甘受した
ものということができる。 仮に,実際に得られる受益に受益者賦課金額が対応して
いないとしても,西山林業組合が負担すべき受益者賦課金を全額,将来にわたって免
れさせるような本件補助金の交付に合理性は認められない。
さらに,仮に西山林業組合による受益者賦課金の支払が滞ったとしても,証拠(甲
33,乙3・19条,22条)及び弁論の全趣旨によれば,受益者賦課金の支払がなされな
かった場合には,市町村による強制徴収が予定されていること,林道事業の実施計画
を変更することも可能であること,受益者賦課金の徴収ができないことをもって林道
工事を中断・中止するような規定はないことが認められる。このような事実からする
と,そもそも受益者賦課金の支払が滞ったからといって,ただちに大規模林道事業に
影響かおるものとはいえない。また,上記認定の西山林業組合の収支状況からすれば,
少なくとも平成19年及び平成20年分の受益者賦課金については,強制徴収により
回収が可能であったと解され,結局,西山林業組合が,受益者賦課金を支払わないこ
とにより,事業の円滑な進行が妨げられるとは考えがたいところである。受益者賦課
金の全額について補助金の交付が必要になるとすれば,受益者賦課金が強制徴収によっ
ても回収できず,事業の実施計画の変更を余儀なくされ,あるいは事業の中断を余儀
なくされるような局面においてであると解されるが,本件当時にそのような状況にあっ
たとは認められないし,そのような検討が廿日市市においてなされた形跡もない。
このように,西山林業組合による受益者賦課金の支払が滞り,大規模林道事業の
円滑な推進が妨げられるという事態は極めて抽象的な可能性にとどまるというべきと
ころ,予め西山林業組合に受益者賦課金全額に相当する本件補助金を交付することに
公益上の必要性があるとは認められない。
(エ)さらに,被告は,本件補助金が廿日市市の財政に占める割合や,本件補助金の
交付に関する議会での議論の状況を捉えて,本件補助金の交付には公益上の必要性が
認められると主張する。
しかし,本件補助金の市政に占める割合如何によって,公益上の必要性が左右され
るものではないし,議会での議論の状況を見ても,大規模林道事業自体の公益性に関
する議論がなされているにとどまり,各年度毎の受益者賦課金全額を廿日市市が負担
すべき合理的理由について議論がなされていたとは認められない。
被告は,他の林道事業との均衡とか,他の自治体の扱い等も主張するが,他の林道
事業や自治体の扱いは,それぞれの個別事情に基づくものであって,当然に本件にも
影響するものではない。
(オ)ほかに,平成19年度及び平成20年度の本件補助金の交付に公益上の必要性
があると認めるに足る証拠はなく,本件補助金の交付は公益上の必要性を欠く違法な
ものというほかない。(以下略)
こうした判決を受けて、廿日市市は全員協議会の場で一連の訴訟に関する報告があっ
たという。
ところがその報告は、原告敗訴の主文だけだったという。
一部の議員からは、新聞やテレビのニュースとの内容の違いに異論が出たと言うが、
議長権限で「主文」のみの報告になったのだという。
これで納得してしまう議会というのも救いようがないと思うのだが、これが現実であ
る。
しかしこれだけ明確に、「補助金の支出には何ら公益性は認められない」と指摘さ
れてチェック機関として機能を果たせなかった議会(議員諸氏)は恥ずかしくないの
だろうか?
税金を受取ながら、漫然と違法支出を繰り返し、なお反省もしないような議会では、
地方主権など夢のまた夢である。
廿日市市議会がいかにことを小さく見せようとしても、この判決の持つ意味は非常に
大きい。
なぜなら今後、同様な受益者賦課金にたいする補助金の支出には違法性という疑惑を
ぬぐうだけの確たる公益性を証明しなければならないという箍(たが)がはめられた
ことを意味しているからである。
これだけ明確に受益者賦課金に対する補助金支出が違法であることを認めた判例は、
一地方裁判所の判決とは言え、全国の補助金行政に大きな影響を与えるに違いない。
実質勝訴の判決に乾杯!!! この結果を全国に広めようではありませんか。