卒業生へのはなむけの言葉)卒論集2010のための前書き「国際文化学部って何するところですか?」@tiniasobu #daigaku #kokusai
2011/03/02
国際文化学部って何するところですか?
ゼミの仲間が巣立っていく姿をみるのは、嬉しいものです。外は氷河期で冷たい風
が吹いていたとしても、きっと世界を足下から暖かくしてくれるにちがいないみんな
だから。
就職の面接に行くと、「国際文化学部って何をする所ですか?」と、繰り返し聞か
れるんだそうです。その時に、「机の上の勉強はしていません!」と毅然として答え
たところ、わかってもらえたのか、2月末に就職をきめてきた人もいました。机の上
の勉強ももちろんするんですけれど、重点がそこにはない、というのが安渓研究室の
特徴だと掴んでくださっているんですね。
国際文化学部の卒業生は、どんなに自分と違う人や文化に出会っても、たじろぐこ
となくにっこり笑って受け止め、交流することもできる、「筋金入りの寛容」を実践
できる力を身につけてほしいと願っています。その意味では机の上で学べることには
限界があることは事実でしょう。
いわゆる文科系・理科系の区別のもと,学問体系はどこまでも専門化・細分化して
きました,その恩恵によって庶民の暮らしはどう変わったのでしょう。奄美大島で出
会ったおじいちゃんの、里力(いさお)さんは、次のように言われました。「本当,
贅沢な世の中。これ以上,ひらけてはいかんのじゃないか? 宇宙まで行かんでも,
そこらに荒れている畑,いっぱいある。みんなが宇宙に行けんもん。みんなができる
ことを発明した方がいいね。」わたしたちは、学問の迷路にまぎれこんで、道を間違
えてはいけません。 もういちど根本に立ち戻って,たしかな手がかりにもとづいて,
自分の愛する地域の過去と現在を踏まえて、未来を考え直し、自分が解決策のひとつ
となるような提案をしていきたい。このような願いがわがゼミのみなさんに共有され
て、ことしも、地域密着型の力のある卒論が生まれました。そして、希薄になった人
間関係の絆を結び直すような結果にも結びついています。
竹下沙央里さんは、自分が趣味としてとりくんできたストリートダンスのもつ力に
注目して、世間の誤解を解く努力を始めました。30歳も年上のお弟子さんを育て、ひ
そかに「おじさん育て日記」をつけながら、二人で臨んだショウのあと、ご家族がも
らした言葉に感動を禁じ得ません。
松野里美さんは、ふるさと長府を元気にしたいと、さまざまなワークショップやフィ
ールドワークを重ねます。観光とは何か、本当に地域を活性化できる観光というのは
あるのか、その問いを深めていく中で、次第に山口県や下関市の歴史の大切さにめざ
めていきます。
乙藤茜さんは、旧鹿野町(現在は周南市)に住んでいるおばあちゃんの家を訪ねて
いくときに、かけてもらうことばの中から、おばあちゃんが、本当はたびたび来てほ
しいのだ、ということに気づいて、自分こそが鹿野に仲間とともにたびたび訪ねてい
く希望とならなければと語ります。
林真由美さんは、周南市須々万の自然豊かな中で育ちました。小さい頃、自然の中
で遊び、山菜をとったことなど、回想と家族からの聞き取りを重ねてながら身近な自
然の大切さに気づきます。その結果、家族が昔のように団らんの食事をするようにな
るという大きな変化が訪れます。
酒向令恵さんは、岐阜の田舎の実家で、親しい友人のように「ちゃん」づけて呼び
合うおばあちゃんが作ってくれた、へぼ(スズメバチ類の幼虫)などの美味しいもの
を季節を追って再現していき、その向こうに、寝たきりのおじいちゃんを大切にして
いたおばあちゃんの人間としての底力を発見します。
この卒論を書きあげたことが地域の光となり、一人一人の人生の力ともなりますよ
うに。