上関)6・14毎日新聞環境欄にカンムリウミスズメの写真入りで紹介
2010/06/22
長島の自然を守る会代表の高島美登里さんからの情報に基づき掲示しています。
6・14(月)毎日新聞環境欄に上関のカンムリウミスズメと
環境アセスメントの問題点を取り上げた記事が掲載されました。
新聞紙上には足立記者が6月10日に調査に同行された際、
運よく出会えたカンムリウミスズメの家族群(親鳥1羽とヒナ2羽)も
掲載されています。
マスコミ関係の方が上関のカンムリウミスズメをじかに
撮影されたのは初めてでした。
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になっている現状の中で、ぶれることなく勇気ある記事を書いてくれている毎日新聞
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http://mainichi.jp/select/science/news/20100614ddm016040002000c.html
いのちの条約:COP10・NAGOYA 生物多様性を守れ/3 環境影響評価法
◇生息地開発巡り、揺れる改正案
生物多様性を脅かす大きな原因が、動植物の生息地の開発だ。現在、大規模開発に
伴う環境影響を低減するための環境影響評価(環境アセスメント)法改正案が衆院で
審議されている。しかし、企業や開発官庁は「事業が遅れる」と消極的で、欧米と比
べ対象が限られている。実効性が問われそうだ。【足立旬子】
「ヒナを連れた親鳥ですね」。山口県の市民団体「長島の自然を守る会」の高島美
登里代表が説明した。10日、上関町沖の瀬戸内海西部の周防灘で、青い波間を全長
20センチほどの黒い海鳥計9羽が泳いでいた。環境省指定の絶滅危惧(きぐ)種で、
国の天然記念物のカンムリウミスズメの親子だ。時折、海に潜って餌をとっている。
カンムリウミスズメは世界でも日本近海にしか生息せず個体数はわずか5000羽。
西日本の中でも水温が低い周辺海域は、海鳥の餌となるプランクトンや小魚、イカの
子が豊富で、世界有数の生息域になっている。
ところが、北西に6~8キロの地点で中国電力が原子力発電所の建設を計画してい
る。海を14ヘクタール埋め立てる計画で、昨年10月に一部工事に着手した。
中国電力は01年、環境影響評価書を国に提出した。ところが、07年にカンムリ
ウミスズメが予定地周辺の海域で確認された。飯田知彦・九州大研究員(鳥類生態学)
によると、冬から春にかけては建設予定地から1キロ以内にも出現する。日本生態学
会など3学会は今年2月、原発から温かい排水が流されれば、餌のプランクトンが減
少するとして、埋め立て工事の中止や適正な調査を求めた。これに対して、中国電力
は「追加調査の実施など真摯(しんし)に対応している」としている。地球温暖化対
策から原発建設が必要との立場だ。
高島代表は「周防灘はかつて瀬戸内海の象徴だった干潟や自然海岸が残っている。
初めに事業ありきのアセスでは、生物多様性は守れない」と批判する。
現行アセスは個別事業を行う直前に実施する。既に位置や規模などが決まり、計画
の大幅変更が難しいことが大半だ。民主党は政策集により早い段階でアセスを行う「
戦略的環境アセスメント(SEA)」を導入することを明記した。
SEAは欧米や中国・韓国などで導入されている。米ミズーリ州では、州全体を走
る高速道路(長さ約320キロ)を改良する計画をつくる前に(1)既存道路を維持
し保守管理(2)拡幅(3)並行して新規無料道路の建設(4)高速鉄道の建設--
など7案を比較検討し、4案に絞った。そのうえで、住民の意見を聞き、「拡幅」に
決めた。注目されるのは、「新たな開発は行わない」との選択肢もある点だ。
改正案は従来のアセス手続きの前に、個別事業の位置や規模を決める段階で複数案
を示し、環境保全のために配慮すべき事項を検討、公表するSEAの実施を事業者に
義務付けた。ただし、複数案といっても敷地内での施設の配置が認められるほか、複
数案が現実的でない場合は1案でも許容される。「開発を行わない」との選択肢の設
定は義務づけなかった。小沢鋭仁環境相は今国会で「今回は日本版SEAだ」と答弁
し、本来のSEAは今後の課題として扱う姿勢を示した。
また、改正案の作成段階で、防衛省は米軍施設と自衛隊施設をSEAの適用除外と
するよう環境省に求めた。軍事施設は現行アセスの対象だが、防衛省は「高度に秘匿
を要する情報の開示、地元の混乱や反対運動を招く」として、適用除外の条文案まで
提示した。外務省も在日米軍基地施設・区域の提供に悪影響が及ばないよう求める意
見を提出。環境省は「基地施設が適用されるかどうかはその都度判断する」と要請は
断ったとしている。しかし、環境NGO(非政府組織)「日本自然保護協会」の大野
正人部長は「生物多様性が重要で、環境と経済・エネルギー政策は両立すると言いな
がら、いざ両者が衝突すると、基地や開発が優先される」と指摘する。
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■ことば
◇環境影響評価法
大規模事業が環境に与える影響を事前に調査、予測、評価し、結果を公表して地域
住民の意見を聞いて環境保全策を実施する制度。97年制定、99年施行された。法
律でアセスが義務づけられている第1種事業は高速道路、ダム、発電所、飛行場など
13事業で、さらに規模が道路は4車線以上、滑走路は2500メートル以上などに
限られる。第1種事業より規模が小さな第2種事業は、個別にアセスが必要か判断さ
れる。法に基づくアセスは今年3月末で187件、年あたり約20件。
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◆環境影響評価法改正案の骨子◆
▽風力発電所を対象事業に追加(政令改正)
▽戦略的環境アセス(SEA)手続きの新設
▽公有水面埋め立てなど自治体が許可権限を持つ事業について、環境相が助言
▽アセス関連書類のインターネットなどでの公表を義務化
▽事業者は事業着手後、評価書に盛り込んだ環境保全対策の結果を公表
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毎日新聞 2010年6月14日 東京朝刊