地域の遺産・世界の宝)防府市の発表への疑問符
2016/01/08
http://ankei.jp/yuji/?n=2163 に速報しましたが、山口新聞の記事を添付します。
傍線をつけて番号を振ったのは、学生のレポートならかなり減点となるところです。
疑問(1)「台湾東海岸風景」という題名 → ではありません。
陳澄波の写真アルバムでは、「東台湾臨海道路」、当時の新聞では「太魯閣(タロコ)峡臨海道路」でした。
http://ankei.jp/yuji/?n=2164
疑問(2)上山満之進が購入した作品 → 単に購入したのではありません。頼んで描いてもらったのです。
詮(銓)衡結果。決依囑本島洋畫家陳澄波氏。風景場所。候補地數箇所之中。決定描寫東海岸之達奇利海岸世界的大斷崖。陳氏目下在上海美術學校。執教鞭。引為光榮快諾。不遠將歸臺。檢分描寫地之實地云云。
─《漢文台灣日日新報》第4版,1930.10.16 http://ankei.jp/yuji/?n=2160
いろいろ検討して、台湾出身(当代東アジアトップクラス)の油絵画家として活躍中の陳澄波氏に委嘱することを決定し、数カ所の候補地から東海岸のタッキリ海岸の世界的な大断崖を書いてもらうことにした。陳氏は目下上海美術学校で教鞭を執っているが、たいへん光栄なことと快諾し、遠からず台湾にもどって、描くべき場所の実地見聞をする予定とのこと。
額の意匠や材料にも台湾原住民族文化を愛した上山と陳の双方の深い思いが込められています。
http://ankei.jp/yuji/?n=2156
疑問(3)劣化が進んだため/劣化して痛んでいたこともあり → それほど劣化していません。
表から見る限りは、絵の具の剥落やひびなどもなく、額の部材やそれを支えるひもなどまできちんと残されています。キャンバスの裏側に、何か鋭いものの角にぶつけたような小さな裂け目がある程度で、陳澄波の現存する絵の中では、もっとも保存の程度が良いとされるもので、防府市が発表したような表現は事実に反しています。以下を参照してください。
保存状態は良好だが修復は必要(陳澄波文化基金理事長の見解)
保存状態は、陳の作品を持っているだけで死刑になりかねないというような政治状況の中で、ほとんどが隠し持たれていたものです。これはもっとも保存のよい部類に属します。それでもキャンバスの破れなどがあり、修復は必要と思われます。 http://ankei.jp/yuji/?n=2153
疑問(4)福岡市と22日付で寄託契約(寄託期間10年)を結んだ。→ なぜ10年も!? 納得のいく説明がありません。
疑問(5)一刻も早く → なぜそんなに急いで、防府市民にも山口県民にも見せないで遠くに送ってしまうのか、納得のいく説明がありません。
以上の執筆者は安渓遊地