上関)二つのドキュメンタリー映画『ミツバチの羽音と地球の回転』と『祝(ほうり)の島』をみて女性監督に脱帽 RT @tiniasobu
2010/06/01
2010/06/01
6/1 追加あります。鎌仲監督からのダイレクトメッセージ!
近頃カメラを捨てて、ビデオカメラを持ち歩いています(最近のビデオはカメラ代
わりにもなるんですけれどね)。
家づくりをしていた1995年ころ、Hiエイトの時代からたまには撮ることはあっ
たのですが、文部科学省の現代GPという予算で、「地域は大学・地元が先生」とい
う授業のドキュメンタリー映画を作ることになって、一肌も二肌も脱いで下さった西
山正啓カントクにこう言われました。
「アンケイさん、体が三脚になり、カメラが体になじむまでいつも持ち歩かなきゃ」
それ以来、広角レンズとガンマイクをつけたビデオカメラをなるべくいつももって
あるくようにしています。編集を習っていないので、まだ作品はありませんが、撮る
だけはずいぶんとっています。
西山カントクと、上関の原発をめぐる作品を作ろうとしたこともありました。学者
が中心になってやるシンポジウムや、電力会社への申し入れを撮影してもらい、予定
地田ノ浦にも、祝島にも行きました。
そのころ、二人の女性が祝島でドキュメンタリーを撮り始めることを知り、3つも
撮影隊が入っては地元のご迷惑は大変だろうとおもって、西山カントクと私は、ドキュ
メンタリー作成の計画をほぼ断念することにしたのでした。
そのお二人とは、鎌仲ひとみさんと、纐纈(はなぶさ)あやさんです。
この4月、ちょうど、二つの作品がほぼ同時にできあがり、試写会に参加すること
ができました。いろいろなことをやっているために、ぎりぎりアウトになることが多
いわが家の常として、ちょっとずつ遅刻して、はじめの方を見逃したりしたのですが、
1回ずつみせていただいた第一印象をとりあえず簡単に紹介します。
DVDが発売されれば、何度もみて名場面のせりふが言えるぐらいになってまた違
う印象をもつとおもいますが。
鎌ちゃんこと、鎌仲ひとみ監督の『ミツバチの羽音と地球の回転』は、祝島の暮ら
しとスウェーデンの自然エネルギーの対比がテーマです。
ヨーロッパでは自然エネルギーの利用が盛んで、私と貴子が2005年にスペイン・
ナバラ州へ5ヵ月間、行ったのも、半分は大学の仕事でしたが、わずか20年で電力
の自給率を再生可能エネルギーを中心にゼロから70%に押し上げ、原発も大規模ダ
ムも、石炭・石油火力ももたない、というナバラの人たちの秘密を知りたい、という
ことがもうひとつの理由でした。ですから、鎌仲監督の映画の意図は、とてもよく伝
わってきました。
試写会で見逃した冒頭部分を、送っていただいたサンプルDVDで見直したら、島
にUターンした山戸孝さんがひじきを刈るところから始まっています。そして、最後
の場面も孝さんの語りで終わります。「島に住むかどうかは、帰ってきた人が自分で
選ぶことだ」という言葉が印象に残ります。
子どもたちを除けば島で一番若い世代の孝さんに焦点をあてて、スウェーデンの自然エネルギー推進者たちとも対比しながら、語りを重視した作風からは、宮田雪(きよし)監督の『ホピの予言』(1986年作品。アマゾンにVHSが出品されています。2004年版が作られていることを知りました。http://www.h6.dion.ne.jp/~hopiland/)を思い出しました。
役場職員や電力会社のために働く人たちが、感情のない空疎な言葉を並べていく様
子をみていると、一抹の同情を感じるとともに、人間をそのようなものにしてしまう
ものへの怒りを祝島の人たちと共有することができるように想いました。
映画の中では短くなってしまったスウェーデンの部分は、ビデオレターのぶんぶん
通信に入っていましたっけ?ぜひ、独立した作品としてもまとめてほしいなと想いま
した。
もうひとつの、『祝(ほうり)の島』。これは、普通の映画づくりからみると非常
識な作り方がされています。105分の作品のために190時間以上の撮影をしたと
いうのです。島に住み込んで、途中からは空気のように溶け込んで作った3人の娘さ
んたちが、祝島の人たちにあてた「ラブレター」(はなぶささんの言葉)。祝島の暮
らしの中にあふれる笑いを描き出すのに成功して、祝島から世界へのラブレターにも
なっています。
冒頭の、上関町議会の傍聴の場面で、傍聴制限に抗議する祝島の女性たち。おばちゃ
んがふと「手を握りなさんなや」という場面に笑えます。推進派の男性たちから「ど
うせ死ぬるんじゃから(その前に金をもろうても悪いことはなかろうが)」という本
音が出るところを写し取ったのは、この映画の手柄です。
それとは対照的に孫の代のために大きな石を積んで高さ30メートルもある棚田を
ひらいたおじいさんのことを思って、いまもそこを耕す年老いた孫が、おじいさんの
ことばと名前を棚田の石に刻みつけつつ、新しい稲の種子をまくところで『祝の島』
は終わります。
祝島の人たちが、1000年のまた1000年も先のことを想うからこそ、原発も
お金もいらないということを示せるのだ、ということが笑いの渦の向こうから痛いほ
ど伝わってきます。
女性たちの映画に脱帽です。
リンク集
・西山正啓カントクの 上映スケジュールは 随時 http://ankei.jp/yuji/?n=924 などでご紹介しています。
・祝の島 公式ホームページ http://www.hourinoshima.com/
・ミツバチの羽音と地球の回転 公式サイト http://888earth.net/index.html
・笑いと平和を求めて旅する映像作家・ハクナマタタさんの作品も、現地に住み込んでいる人ならではの力があります。 http://ankei.jp/yuji/?n=950
・文部科学省の現代GP予算で作った安渓+西山ドキュメンタリー映画2本見てみたい方はご連絡ください。http://blog.ypu.jp/gp/article/001128.html http://blog.ypu.jp/gp/article/001835.html 送料のみのご負担で無料貸し出しいたします→ y@ankei.jp にメールください)
・森住卓さんによる最近の祝島ルポ。よく書けています http://www.min-iren.gr.jp/syuppan/genki/220/genki220-01.html
・スペインナバラ州の自然エネルギー事情 http://ankei.jp/yuji/?n=187
おまけ
6/1 に鎌仲監督からtwitterのダイレクトメールがきました。
「安渓先生、超多忙な中、ブログに感想を書いていただきありがとうございました。
感激です。ちなみに私の場合350時間回しました~無駄が多い監督です。」
とのことです。もう、絶句です。ふたりで550時間近いじゃないですか!