卒業生は今)パキスタンからの便り「“祈り”というのは本来とても美しい行為」写真付き
2010/04/23
2010年4月25日 送られてきた愛情あふれる平和な写真をお二人の了解のもとに掲載
します。文章もすこし改訂されました。
山口県立大学国際文化学部に在学中からアジアを漫遊し、広島大学の大学院に進ん
で文化人類
学を勉強した「みーちゃん」は、いま、パキスタンの首都のイスラマバードに住んで
います。夫さんの郷里は、西部の都市ラホールです。こんなメールが届きました。ご
本人の許可により、ここに掲載しますね。
旅人としてのフィールドワークではない、生活者として国際文化を生きるみーちゃ
んの声に耳を傾けていただければ、と思います。
遊地さん貴子さん
もう数ヶ月も前のことですが、パキスタンの大学構内で2人の中国人学生と座って
お喋りしていると、そこに見知らぬ中国人男子学生がやってきて、“なぜ日本人は中
国人のことを嫌う?”“日本人は中国人のことをどのように思っているのだ?”と日
本人へ対する嫌悪感をあらわにぶっきらぼうに聞いてきました。突然のことでどのよ
うに答えれば良いか分からず、「私の母は三国志が大好きで中国語を習い始めたよ」
と言いました。すると「いいや、僕は君のお母さんがとかお兄さんが、を聞いている
のではなく、日本の人々のことを聞いているのだ」と返ってきました。「人々」……。
私はとても混乱してしまいました。果たして「人々」の実体とは何
なのでしょうか。
治安もいよいよ悪化し、たまたま帰省していたラホールの街中で、テロ事件に巻き
込まれそうになりました。近くで銃声、爆音を聞いたのはもうこれで3度目です。も
う、結婚式のときにあがる花火でさえ、ドアをバンッと強く閉める音でさえ、銃声や
爆弾の爆発音に聞こえて、ビクッとします。イスラーム教徒へ対する憎悪や差別、い
まここで行なわれている殺戮を考えると、とても怖くて挫けてしまいそうになります。
家に着くと家族みんな、自宅近くで起こっているテロの報道に釘付けになっており、
義兄の19歳の娘さんがシクシクと泣いていました。国を破壊され日常生活を脅かされ、
とても悔しく悲しいようでした。そんな姿を見るのは本当に辛かったです。
私が感じている憤りや恐怖は、当のパキスタン人たちが抱いているそれとは比べも
のにならないと思います。
パキスタンは短い春を終え、夏に入ろうとしています。数日前、夫と一緒にローズ
ガーデンに行きました。いろいろな種類の色の薔薇が咲きほこり、甘い匂いの漂うな
か、ゆっくりと散歩しました。とても幸せなひと時です。夕方の礼拝時に、薔薇に囲
まれた小さなスペースに親子がいました。
両親が静かにお祈りしていて、小さな子どもも静かにその姿を見ていました。いか
なる宗教に関係なく“祈り”というのは本来とても美しい行為なのだと、心打たれま
した。
私たちは、私は、「国家」という枠組みからどれだけ自由なのだろうかと思います。
言説とは強い国家が捏造するものであり、様々な利害の絡んだ国家や団体の介入を疑
う陰謀説をパキスタン人が叫び訴えたところで、それはただの負け惜しみとして笑わ
れるだけです。
真の平和や平等はきっと誰かにとって不都合だから、紛争はなくならないし、文明
の衝突だとか宗教の狂気とかいう言葉でコーティングして、無意識にあるいは意識的
に臭いものに蓋をしてしまう。その誰かに私も含まれるかもしれない。
まずは私自身の足元から、ですね。
治安の悪化や経済的な事情もあり、夫と一緒に近々日本に帰国する予定でした。NG
Oで1年以上働いてみて、開発業界の裏の事情もある程度分かってきて、そろそろ離れ
時かなぁ、とも感じていました。ところが、もう2、3ヶ月も
前にダメモトで出しておいた日本の助成金の内定メッセージが、数日前に届きました。
どうしようか悩みましたが、夫と一緒にあと半年くらいこちらで頑張ってみることに
しました。
遊地さんのホームページ http://ankei.jp/yuji/?n=921 を見て、これまで好物だったキットカットが食べれなくなっちゃいました(笑)。
時々、遊地さんと貴子さんのことがとても恋しいです。
みーちゃんより
遊地の出した返信から
みーちゃん、
おたよりありがとう。
つらい日々ですね、気をつけて……
あなたにもらったメールをちょっと手を加えたら
卒業生は今)に当場してもらえるのになあ。
名前はださないでも、などとおもったりしています。
すぐにおたよりがとどきました。
遊地さん貴子さん
卒業生は今)に登場させていただけるんですか!
もちろんOKですよ~~!!
先日、村落調整員として協力隊に行かれることが決まった女性の
文章 http://ankei.jp/yuji/?n=910 を読んで、その清々しくとても正直な姿に、
感動していました。
私のは、さすがに清々しくはないですが、今の
正直な気持ちを書いたものです。
よろしくお願いします。
みーちゃん