原発もないのに)沖縄やんばるの海水揚水発電所の実証実験施設が破産
2016/07/27
国頭村の揚水発電所廃止 電源開発、世界初の海水利用施設 沖電への売電交渉不調
沖縄やんばるの自然の中、いまヘリバット基地建設が力づくですすめられようとしている高江の東側に
Jパワーの子会社の揚水発電所があります。いや、正確にはありました。
汲み上げた水をダムに貯め、それを落として発電するというもので、基本的には、原発とセットで日本中に建設されてきたものです。
上下二つのダムが必要だし、汲みあげるための電力の7割ぐらいしか回収できないので、あまり効率の良くない充電器として使ってきたわけです。
これは、一度起動すると出力を下げられない原子力発電で夜間に電力があまってしまう、その余剰電力の捨て場というか吸収先としても必須のものでした。原発の発電コストを高くする要因のひとつでもあります。
そのコストを下げられないか、という実験場として、海に面した崖の上の森が広がる沖縄島北部のやんばるが選ばれました。2度ほど見学に行き、一度は、エレベーターで、海辺まで降りる見学もさせてもらいました。2度目は、もう年に何度かしか水を汲み上げていなくて、案内係の女子職員が2人ほどいただけの状態でした。
その特徴は、以下のようなものでした。
0.そもそも沖縄には原発がないので、わざわざディーゼルエンジンで汲みあげてまで発電する意味がない。那覇の電力消費が上がったときにすぐ対応できるというけれど、ガスタービン発電なら、わずか30分でフル稼働できるので、効率の悪い揚水発電に頼る必要がない。
1. ローコストにするために、ダムは一つしかつくらない。下のダムは海を利用する。
2. ローコストにするために、ダムは、ゴミ処分場のような、池の底に厚さ数ミリしかないゴムシートを2枚貼りにしたものを敷いただけにする。
3. ローコストにするために、発電用の導水路は塩ビパイプ。
4. 自然にやさしい施設というさまざまなプラカードを立てておく。
などの工夫のこらされた施設でした。
見学写真などは 以下にたくさん載っています。http://www.dee-okinawa.com/topics/2011/04/j-power.html
沖縄やんばる海水揚水発電所=国頭村安波(1999年3月撮影)
環境負荷の最大の問題は、4番のような努力にもかかわらず、森の中に大量の海水が漏れることが危惧される点だと思いました。台風で森の木の枝が飛んできてゴムシートにささったら、それでアウトです。海水が漏れたら地下の電導率が変わってわかるための銅の網をめぐらしていると説明されていましたが、はじめから海水をためるのは無理な設計でした。
海からの冷取水の中に海の生物の幼生などが大量に含まれますから、それが繁殖しないように、薬物で殺さなければなりませんし、汲みあげるディーゼルエンジンからの温排水も出さなければなりません。そのあたりは一切説明/展示がありませんでした。
仲井真前知事が社長の沖縄電力では、10万キロワット程度の小型の原発の導入することを前向きに検討していましたから、それとリンクさせるべき技術の実証施設だったかもしれませんが。小型原発については、http://ankei.jp/yuji/?n=974 を参照してください。
以上は、安渓遊地の見解でした。
以下は、2016年7月26日
05:02配信の、琉球新報の記事です。http://ryukyushimpo.jp/news/entry-323364.html
世界初の海水を利用した揚水発電所として、電源開発(本社・東京、Jパワー)が沖縄県国頭村安波で運転してきた「沖縄やんばる海水揚水発電所」が、19日付で発電所として廃止されたことが25日分かった。同発電所は国が建設費320億円を投じて1999年に完成。離島など海洋地域に適した再生可能エネルギーシステムとして実用化を目指してきたが、沖縄電力との売電交渉が不調に終わるなど商業ベースに乗せることが見通せず、電源開発は施設の継続を断念した。
発電所を管理する電源開発石川石炭火力発電所(うるま市)は「試験レベルの役割を終え、営業運転として活用できないかを沖縄電力とも話してきたがまとまらなかった」と説明。2014年に国から払い下げを受けた敷地や施設の跡利用については未定とした。
電源開発は試験設備の位置付けで運転・管理し、運転に要する費用の一部を沖電が支払う形で、電力需要ピーク時の補完電源として発電を指示してきた。沖電は、海水揚力発電の緊急時対応能力など研究データを集めていた。
沖電によると電源開発との間の研究利用の契約は14年度までで終了。沖電広報室は「(閉鎖による)電力の安定供給上の影響はない」とした上で、電源開発との交渉経緯は「回答は差し控える」とした。(与那嶺松一郎)