原子力のお勉強)原子力発電もまた大量の二酸化炭素を放出
2010/02/17
この「お勉強シリーズ」一部に計算のおかしいものがあったりするよ、と中国電力
の担当の方から指摘がありました。ありがとうございます。
2/15に、広島市の中国電力本社に3学会の要望書の申し入れにいったときのこ
とです。かけ算などを確かめないでウェブ上の文書をコピペしたことを反省しつつ、
それはまたなおしますが、今日はとりあえず
いつも学問的にきちんとした話をされる小出先生の講演から引用しておきます。
電力会社の「(運転中は)二酸化炭素を出さない地球にやさしい原子力発電」とい
うコマーシャルはあんまりだ、と中国電力で申し上げたことに関連する資料です。
原子力発電もまた大量の二酸化炭素を放出する
京都大学原子炉実験所 小出 裕章さんの講演から
図入りの全文は http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/kouen/JCC100119.pdf
にあります。
一番ひどい主張は、二酸
化炭素の放出を減らすた
めには、化石燃料への依存
をやめ、二酸化炭素を出さ
ない原子力に切り替えな
ければいけないという宣
伝です。今日の報告はそれ
が如何にでたらめかを述
べるものですが、現在の二
酸化炭素悪者説には、それ
だけでないたくさんの嘘
があります。まず、地球温
暖化の原因は多様であり、
二酸化炭素だけが原因で
はありません。そして本当
に大切なことは、生命環境
を守るためにはエネルギ
ー浪費を減らすことこそ
必要なのに、それがむしろ
見えなくされてしまって
います。
原子力とはウランやプルトニウムの核分裂現象を利用します。核分裂現象は、通常
の物が燃える場合
に二酸化炭素が出る現象とは異なります。そのため、日本の国や電力会社は「原子力
は二酸化炭素を出
さず、環境にやさしい」と宣伝してきました。ただし、その宣伝は、最近では「原子
力は発電時に二酸
化炭素を出さない」に微妙に変わってきています。何故でしょう?
100 万KW の原発を1 年運転するために必要な作業の流れを図3に示します。図3で
中央やや下より
に「原子炉」と書いた部分が原子力発電所です。これを動かせば、今日標準的となっ
た100 万kW の原
発の場合、1年間に約70 億kWh の電気が生み出されます。しかし、この原子炉を動
かそうと思えば、
「ウラン鉱山」でウランを掘ってくる段階に始まり、それを「製錬」し、核分裂性ウ
ランを「濃縮」し、
原子炉の中で燃えるように「加工」しなければなりません。そのすべての段階で、厖
大な資材やエネル
ギーが投入され、厖大な廃物が生み出されます。さらに原子炉を建設するためにも厖
大な資材とエネル
ギーが要り、運転するためにもまた厖大な資材とエネルギーが要り、そして、様々な
放射性核種が生み
出されます。これら厖大な資材を供給し、施設を建設し、そして運転するためには、
たくさんの化石燃
料が使われざるを得ません。結局、原子炉を運転しようと思えば、もちろん厖大な二
酸化炭素が放出さ
れてしまいます。この事実があるため、国や電力会社も「発電時に」と言う言葉を追
加せざるを得なか
ったのでした。しかし、「発電時に」と言うことが原子力発電所を動かすことを示す
のであれば、原子
力発電所の建設にも運転にも厖大な資材や化石燃料を必要としているのですから、そ
の宣伝もまた正し
くありません。その上、たしかに核分裂現象は二酸化炭素を生みませんが、その代わ
りに生むものは核
分裂生成物、つまり死の灰です。二酸化炭素は地球の生命環境にとって必須の物質で
すが、核分裂生成
物(死の灰)はいかなる意味でも有害な物質です。二酸化炭素を生まないとの理由だ
けを強調して、死
の灰に目をつぶる議論はもともと間違っています。