槌田敦論文)原子力発電の非効率性とCO2排出量が減らないこと
2010/01/21
地球温暖化CO2主犯説というのを、鎚田敦(つちだ・あつし)先生が1998年
に書いておられます。
佐藤首相のおちいった核抜き沖縄返還のトリレンマがよくわかり、現在なぜMOX燃
料などが導入されるのか、といった疑問にこたえてくれる、最近の名著である『隠し
て核武装する日本』影書房の中心的な筆者です。
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/zemiindex.html
【原子力発電ではCO2排出量も減らない】
このことは、とくに、原子力発電の推進根拠の失敗に現れている。原子力発電所
には、小さな重油タンクがあるだけだから、発電時にはCO2をほとんど出さないと説
明される。しかし、この発電時以外のところで大量のエネルギーが投入されており、
原子力発電はCO2を大量に発生している。
アメリカのエネルギー開発庁(ERDA)が1976年に計算したところによれば、エネル
ギー産出量100を得るために26のエネルギーを投入している。産出投入比は100/26=3
.8である。電力中央研究所による1991年の計算も4.0とほとんど変わらない。
この結果は原発が有利なように見える。しかし、これは積み上げ計算であるから、
積み残しを考慮していくと、投入量は増え、産出量は減り、結果として産出投入比は
どんどん減ることになる。
ERDAの場合も、電中研の場合も、運転での電力投入(7)、遠方送電の建設(5)、揚
水発電所の建設(10)という投入が忘れられている。これを考慮すると、投入量は26+
7+5+10=48となる。また遠方送電損失(7)、揚水発電損失(20)という欠損があり、
産出量は100-7-20=73となる。その結果、産出投入比は73/48=1.5となる10)。
さらに、計算不可能な投入として、放射能対策、廃炉対策、事故・故障対策があ
る。これを評価すれば、産出投入比は1に近づき、そして1を割ることになっていく。
原発は事故で庶民を加害し、また処理処分不可能な放射能を残すだけでなく、石油石
炭を大量に消費するのである。
現代の温暖化キャンペーンは、このような原子力をCO2削減のエースとして推進す
るためであった。アルゼンチンで開催された気候変動枠組み条約第4回締結国会議(CO
P4)は、さながら原子力発電の売り込みの場であったと伝えられている。これに誘導
されて大騒ぎするなどまったくナンセンスとしか言いようがない。