100 字でおすすめ)『調査されるという迷惑』恵泉女学園大学や大阪自然史博物館の図書館でおすすめ中です
2009/03/22
恵泉女学園大学図書館 の「100字でおすすめ」のコーナーにとりあげていただいて
ます。
https://www.keisen.ac.jp/univ/library/osusume/index.html
新しくはいった本の中からこれはぜひ、と思う本をスタッフが選びました。
これらの本は文庫棚の上に並べてあります
調査されるという迷惑 : フィールドに出る前に読んでおく本
宮本常一、安渓遊地著 みずのわ出版(361.9/M)
フィールドワークに出る、というと、かっこいい。そして大概の場合、感動して自分
に酔って帰ってくる。でも、調査される側の気持ちや考えあるいはそのフィールドワー
クによって被る「被害」を考えているだろうか。これからフィールドワークに出る人
にぜひ読んでいってほしい。「バカセ」と呼ばれないために。そして、フィールドワー
クに来てもらってよかったと地元の人に喜んでもらえるように。(N)
もうひとつ、
大阪自然史博物館の 紹介で、★みっつをいただいています。あのゲッチョ先生にし
て★ひとつだったりする辛口紹介なので おお、とおもったりしています。
http://www.mus-nh.city.osaka.jp/wada/Book/books-20.html
●「調査されるという迷惑 フィールドに出る前に読んでおく本」宮本常一・安渓遊
地著、みずのわ出版、2008年4月、ISBN978-4-944173-54-9、1000円+税
2008/12/7 ★★★
二人の共著となっているが、第1章の「調査地被害」のみが宮本によって書かれた
もので、後は安渓の原稿が並ぶ。いずれも既出の文章であり、安渓は既出を改変して
いる。キーワードは、宮本によって指摘された調査地被害という問題。調査地被害の
実情や、自らの調査地(西表島)の人々とのつきあいを、安渓が語っている。
二人は、民俗学や社会人類学の研究者であり、指摘されている調査地被害も研究者
が各地に出かけて行って人々の暮らしを研究する際の問題点である。しかし、生物に
関するフィールドワークにおいても地元の人たちやその暮らしとの関わりは必ずあり、
ここで指摘されている事には充分配慮する必要があるだろう。のみならず、研究者が、
そうでない人との係わりの中で調査を行う場合(たとえば市民参加型の調査など)に
も、気を付けるべき点は多い。
上から目線で偉そうに訊問を行ったり、地元で借りた資料を返却しない事は問題で
あるという指摘は、当たり前過ぎて、そんな事をする研究者がいること自体驚きでは
ある。が、一方で、研究成果はなんらかの形で地元に還元しなくてはならないとする
主張は、わかるけど、なかなかに難しい。地元に移り住んで、長年がんばってきてい
るように見える安渓ですら、研究成果を地元に還元しているとはなかなか認めてもら
えていない。これ以上が必要となるなら、うかつに地元還元と叫ぶのはためらわれる。
それどころか、よほど慎重にフィールドを選ぶ必要があると思わせる。真面目に考え
るなら、どこまで覚悟したならフィールドに出られるのだろうか?
とまで考えさせる怖い本。
←宮本先生は、「仲間だと思われればいいのじゃよ」と後進をさとされたそうです(
安渓遊地)