上関)詳細調査をめぐって中国電力と一問一答(2005年2月3日)
2005/03/17
企業の社会的責任と自然保護のはざまで
――上関原発のための詳細調査をめぐる一問一答>
2005年2月3日 13時30分~15時30分 広島市の中国電力本社にて
はじめに
これは、長島の自然を守る会と日本生態学会上関原発要望書アフターケア委員会が合同でおこなった、中国電力本社への詳細調査中止の申し入れの記録です。同じ日の午前中には、山口県庁を訪れて、申し入れをしました。以下、本文では原則として敬称を略しています。
長島の自然を守る会の木村路子がテープおこしをしたものを、日本生態学会の安渓遊地が訂正しました。
対応、中国電力CSR推進部 飯山マネージャーほか4名
マスコミ9社参加(テレビ4局、新聞5社)
解説
この、録音に忠実な記録によって、まさに、中国電力の企業としての社会的責任が問われる事態だ、ということがはっきりしました。
この記録の中には、中国電力社員の「……(無言)」という答えが、実に58か所あります。「沈黙もまた答えです」という『風の谷のナウシカ』第7巻(徳間書店)の中のナウシカ言葉を思い出しながら、私たちは、この長い一問一答をおこないました。
おそらく、その中のクライマックスは、次のやりとりでしょう。
飯山「CSR推進室のマネージャーです。」
佐々木県議「CSRって、どんなお仕事なんですか?」
飯山「あの、日本語で言いますと、『企業の社会的責任』という意味です。」
申し入れ側「おお、素晴らしい!(笑)素晴らしい部署ではないですか。」
この話しあいのあと、中国電力本社前の路上に出て、拡声器を使って話しあいの内容を手短かに報告しました。道行く人に話している格好ですが、電力会社の写真の方
高島代表は、中国電力の対応にはウソとしか考えられない答えが多かったことを指摘し、企業の社会的責任を自覚したら、社員は勇気をもって内部告発をする権利と義務があるのだということをやさしく話しかけました。
安渓は、中国電力が環境に配慮するすばらしい企業であって、瀬戸内海だけでなく、日本の浅い海で最高の生物多様性をもつ長島の海を四半世紀にわたって(ガードマンをはりつけたり、土地を買い取って農薬を海に流さないようにするなど)守り抜いてきた功績について、広島市民や中電の社員のみなさんに感謝の気持ちを伝え、今後ともそうした活動をきちんと続けてほしいと希望を述べました。また、印刷したばかりなのにもう残部僅少になっている、希少種を守るための希少なハンドブックを、私たちが著作権を侵害しないでもよいための配慮として3部も無料で下さったこと、その中には、昆虫や植物などを工事区域の外にそっと運び出し、あるいはスナメリが工事区域の外に泳いでいくまでじっと見つめるなど、生物たちが幸せに暮らしてもらうための空想的な方法がカラーのイラスト入りで興味深く書かれていることなどを報告しました。
本文
まず、「長島の自然を守る会」の高島美登里代表が申し入れ書(別紙1参照)を読み上げて、手渡した後、二人でやっとかかえられる量の署名簿を渡した。
高島「11万人に近い声をしっかりと受けとめていただきたいと思います。そして詳細調査を中止していただきたいと思うのでよろしくお願いいたします。」
続いて、日本生態学会上関原子力発電所要望書アフターケア委員会の安渓遊地委員長が申し入れ書(別紙2参照)にそって、その内容を説明。
日本生態学会とその下部組織として過去6回にわたり出して来た、上関原発に対する総会決議等を行った内容を紹介し、きちんとしたアセスメントができていない現状で、次のステップの詳細調査に進むことは、予定地の自然のもつ価値からして容認できないことを述べた。
続いて、中電が2005年1月14日に山口県庁に提出した「詳細調査の環境保全について」という文章に対する見解を述べた。
安渓「今日持って参りましたのは、中電が1月14日に山口県庁に提出された『詳細調査の環境保全について』という文章に対する日本生態学会の上関原発要望書のアフターケア委員会見解です。
他地点を始め一般の事業で広く実施されている調査だから、問題はないという前提で書かれておりますが、これは、調査地の自然が日本で際立った特異な多様性を持った素晴らしい自然であるという日本生態学会の認識と大きくかけ離れております。
『過去に既にこの立地環境調査として実施しており、同様の調査をやっているから、その経験を生かしているから問題ないのだ』ということも、規模や具体的方法の違いなどが示されておりませんので、科学的根拠があるとは言えません。その他、『8種類の調査について、こういう保全措置をします』ということが書かれていますけれども、言葉は悪いのですが、ワープロで切り取って貼り付けるという操作を8回繰り返したようなな内容になっておりまして、内容は大学生のレポートだったら、「不可」とつける程度。見解には書いておりませんが、正直なところその程度のものだなと思います。
具体的に書かせていただいた内容を紹介しますと、例えば『ハンドブック』を作業員に持たせる事です。貴重な、専門家でも同定を迷うようなものについて、それで充分なのかまた、『適切な措置をする』ということの具体的な内容について全く書かれていません。さらに、『作業区域内において貴重な昆虫類を確認した場合は、昆虫を作業区域外に移動する』と書いてありますが、昆虫というのは、植物を餌としたり、その花を訪れたり、実を食べたりしています。そこにある植物と不可分な関係にあるものがほとんどです。それを、昆虫だけ外にそっと持ち出して、『あとは幸せに暮らしてくれ』というような、そのような書き方が、専門家だけでなく一般市民にとっても、納得がいくものであるとは到底考えられません。
そして、植物のところでは『土地の形状を変更を行う場所において、貴重な植物を確認した場合は、適切な場所に移植する』と書かれてありますが、例えば、踏み分け道の両側にたくさん花をつけている貴重な植物がありますが、道を広げて舗装してしまうような場合には、その植物がもはや生息する環境はありません。
そういう事をふまえれば、『外に持って行って、それで事足りる』というのが適切な措置なのであるとすれば、それは、科学的なデータや査定を無視した名前だけの保全策に過ぎないということを、私たちは強く危惧しております。
また、スナメリ、カクメイ科貝類のみが注目すべきものというような立場で、取り上げてありますが、大きな問題だと考えます。ナメクジウオ、カサシャミセンなど多数の絶滅危惧種や、希少種が確認されております。そうした生態系全体でとらえる視点が欠落しているんです。
スナメリについては『作業区域外に出るまで、注視を続け』、ああ出て行ってくれた、よかったよかったということをやると書いてあり、また『カクメイ科の貝類が確認されたタイドプールでは、調査を実施しない』と書いておられます。このタイドプールについては、アセスの最終版の『環境影響評価書』の6の18というところにカラーの図入りで書かれていますが、タイドプールを保全する様な工事をするんだというんですね。でも、その場所には、既に確認の直後に台風によってカクメイ科貝類が生息できる環境は失われています。そういう、我々が早くから気がついている事について、無視しておられる。それとも、まったく別の場所を指しているのか、地図もない書類で、わからない書き方になっております。
結論として、『詳細調査の環境保全』という文章は、全体として、2つの重大な問題があります。ひとつは、調査の内容が具体的に示されておらず、予測される影響評価も不十分、かつ科学性を欠いております。環境保全計画は、現地の希少種、及び生活を支えている生態系そのものの重要性に対して、認識が欠落しています。ですから、その結論も、非科学的なものであると言わざるを得ません。ですから、科学的根拠にもとづく計画の全面的な見直しを行うべき事を日本生態学会のアフターケア委員会の要望として出します。」
飯山「では、今の申し入れに対して回答をさせていただきます。が、その前に自己紹介をします。本日の対応は、3名で行います。まず、飯山でございます(職員が順次名前を言う)。」
飯山「あと2名来ておりますが、今回人事異動がありまして、現在のスタッフは3人全員が変わります。今後対応する予定の者も同席しております。新しいものは、牧原と入江でございます。」
高島(長島の自然を守る会:会長)、安渓(日本生態学会:自然保護専門委員・上関原発要望書アフターケア委員長)、山本(長島の自然を守る会:副会長)、上里(長島の自然を守る会)、木村(路)(長島の自然を守る会)、小中(山口県県会議員)、佐々木(山口県県会議員)、羽熊(長島の自然を守る会:副会長、日本貝類学会)、木村(幸)(長島の自然を守る会)が順に名乗る。
高島「今、回答をいただいたのですが、まず1点目。ここで事実確認をしたいのですが、環境保全計画にともなって、1から6まで項目ごとにあげていますよね。それぞれの設置工事とか、工事用機械による振動の強度、土地の形状変更、伐採範囲、弾性探査、ボーリング地点、海底へのコンクリートの打設規模。これは、計画は確定しているのですか?例えば、ボーリング地点でいうと、1月16日の申し入れの時にも言いましたけれども、県に環境保全計画についての書類を出すにあたって、ちゃんと予定として、こことこことここ、ポイントをちゃんと置かないと、出せないはずですよね。例えば、そういうふうに、具体的に項目ごとに、公表する、しないは別としても、もう、今時点で計画を固めていらっしゃるんですか?」
飯山「先般も申し上げたように、社内としては検討案はございます。」
高島「ちょっと、それ、嘘でしょう?」
あと、40頁に及ぶ長文なので、pdfファイルで添付します。
長島の自然を守る会の申し入れ文も添付します。
20050203中電申入.pdf (86KB)