中国電力)島根原発の温排水の温度のデータを誤報告
2008/11/09
以前に、温排水データを実際よりも低く、設定した7度プラス以内に収まるように、改ざんしていた中国電力がらみのニュースです。
小さな扱いの地方記事ですが、もう少し詳しく知りたいものです。
中国新聞から引用します。
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200811080038.html
島根原発測定データを誤報告 ’08/11/8
中国電力は7日、島根原子力発電所1、2号機(松江市鹿島町)のプログラム設定ミスなどで、誤った温排水の測定データを島根県と松江市に報告していたと発表した。
中電によると、誤っていたのは1号機の2008年4―8月と2号機の同年8月のデータ。温度上昇を測定するため、取水と排水される際の温度差を比較しなければならないのに、1号機では必要なプログラムを設定していなかった。2号機は設定はしていたが、転記ミスをしたという。いずれも10月末に修正したデータを提出した
(引用おわり)
安渓遊地のつけたり
「中国電力 温排水」で検索すると
http://www.energia.co.jp/press/06/p061221b.html の中で、
中国電力は、温排水の温度を低く偽装した結果の影響評価を「専門家」に依頼して以下のように発表しています。
協定値超過による海生生物等への影響評価
協定値超過による海生生物等への影響については,「環境調査報告書」(昭和48年12月)拡散予測(以下,「S48予測」という。)の結果から導出した協定値超過時の温排水拡散範囲と文献による水質・漁業の経年変化をもとに評価した。
1. 拡散予測条件及び温排水拡散範囲の確認
取放水温度差の予測条件(排熱量)は,以下のとおりである。
7.29度 :S48予測と同一の場合(6.46億kcal/h)
7.00度 :取放水温度差の協定値で運転した場合(6.05億kcal/h)
7.80度 :汽機の経年劣化を考慮した最大排熱量の場合(6.75億kcal/h)
温排水拡散範囲の確認結果は図1のとおりである。
協定値超過時の温排水拡散範囲の確認手順,確認結果の妥当性については,日本大学大学院 教授 和田 明先生の検証を受け,問題ないものと判断された。
2. 海生生物等への影響
(財)海洋生物環境研究所 城戸勝利先生,中村幸雄先生の見解は以下のとおりである。
『 協定値超過による温排水拡散範囲の変動予測結果及び文献による水質,漁業の経年変化を元にした海生生物等への影響については下記のように考えられる。
○ 水質について
発電所2号機運転開始後の各指標の経年変化は海生生物の健全な生育に必要とされる基準(水産用水基準,2005)をほぼ満たしており,また,発電所近傍域と周辺域間で特に差異は無く,発電所の運転開始影響及び温排水拡散範囲の変動によると考えられる水質への影響は無かったものと考えられる。
○ 漁業について
発電所2号機運転開始前後の魚種別,漁業種別漁獲量の推移の解析結果によれば,下関市瀬戸内海区(以下,「下関市」という。)の各魚種,漁業種の漁獲量及び漁労体あたりの漁獲量は,年変動はあるものの山口県瀬戸内海区(以下,「瀬戸内海区」という。)とほぼ同様な推移傾向を示しているもの(たこ類,あさり類,わかめ類)及び必ずしも傾向が一致しないもの(くろだい・へだい,すずき,こういか類)があるが,2号機運転開始後に瀬戸内海区に比較して,特に下関市で顕著な影響が現れたということは無かったものと考えられる。
のりについては,運転開始数年後頃より下関市では漁獲量,のり養殖施設数ともに減少している。また,下関市の養殖施設あたりののり養殖漁獲量は横ばい傾向にあるものの,瀬戸内海区に比べて運転開始数年後頃より相対的に低くなっている。従来,のりについてはマイナスT1度で影響が現れるとされており,1度包絡範囲にあったのり養殖施設については,何らかの影響があったことが考えられる。
○ 海生生物
既往知見より,遊泳動物,固着性生物,プランクトン等については,今回の温排水拡散域の変動予測結果によって大きな影響を及ぼすとは考えにくい。
以上のことから,新たに温排水拡散範囲が増加したことによる海生生物等への影響は,新たに1度包絡範囲内となった場所に,過去のりの養殖施設があった場合は何らかの影響が考えられるが,その他はほとんど無かったものと考えられる。
』
(図を除いて引用おわり)
さて、キーワードに「改ざん」を加えて検索すると、原子力資料情報室 のニュースにいきあたる。中国電力関係の部分を太字にして引用しておく。
http://cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=462 より引用
投稿者: 原子力資料情報室 投稿日時: 2007/1/4 0:39:00 (1189 ヒット)
次々と海水温データ改ざんが発覚 その背景を考える
-日常化する電力会社のデータ改ざん・無認可工事-
『原子力資料情報室通信』391号(2007.1.1)掲載
武本和幸(原発反対刈羽村を守る会)
原発の海水温記録改ざん発表が続いている。最初は11月30日、東京電力柏崎刈羽原発1号と4号が海水の温度データを改ざん。1号は94年から0.3℃、4号は02年から0.5℃、排水口の温度が低く表示されるよう、コンピュータのプログラムを操作していたとのこと。次が12月5日、東京電力福島第一原発1号が、85年から1.0℃低く表示されるよう改ざん。柏崎発覚時には福島は大丈夫と説明していた。そして12月7日、東北電力が女川原発1号で95年から01年までの5年半、温度差が7℃となるよう操作。さらに8日に日本原電敦賀2号、12日に関西電力大飯3号、4号の改ざんが発覚した。沸騰水型原子炉(BWR)で始まった改ざんは加圧水型原子炉(PWR)にも及び12月13日現在で5地点、まだまだ続くと考えられる。
経済産業省原子力安全・保安院は11月30日、電力各社に、類似問題の有無の総点検と今年度内に中間報告提出を指示した。福島で発覚した12月5日、東京電力に、原子炉等規制法に基づき1月11日までの詳細報告を求め、改ざんが他にないかの確認も指示した。
知事等県市関係者は「トラブル隠しからの信頼回復の途上で、再び同様の問題を起こしたことは、地域住民の信頼を大きく損なうもので誠に遺憾。原因を徹底的に調査し、結果を早急に全面開示すべき」と異口同音に批判している。こうした発言が、「不正発覚から4年が経過し禊ぎは済み体質改善が進んだ。そろそろプルサーマルを」との立場からでないことを期待したい。
日本の原発は、すべて海岸に立地し冷却水は海水である。原発は、原子炉で発生した熱エネルギーの3分の1を電気に変え、3分の2は廃熱として海水温を上昇させる。冷却水(海水)の量が少なければ水温上昇が大きく、多ければ水温上昇は小さい。一般に取水と排水の温度差は7℃とされ、水量が決定される。必要水量はポンプで強制循環させる。100万kW級原発1機で使用する海水は毎秒約70
トンと大量である。温度改ざん操作は、経済性を理由にポンプ規模をギリギリに小さくした結果、温度差が7℃を超えたために、実施した模様。欧米の河川水を冷却水として利用する原発の水温上昇は15~20℃という。
柏崎刈羽の東電発表は「『不適切なデータの補正』を自主調査で発見した。安全に問題はない」とのものだった。『改ざん』を『補正』と表現する電力会社に不正の意識は見られない。電力会社にとっては、発覚したことが問題なだけなのだろう。電力会社にはコスト削減・経営優先のため、社会常識とは異なる判断基準が存在している。
その後、改ざんの動機や手口は「温度がなぜ目標値を超えたかを説明しづらかったためデータを補正した」「建設時の環境アセスメントで復水器の出入り口の温度差を7℃以下にする約束があった。本店が排水温管理の徹底を指示していたため、課長らは指示に合わないデータを改ざん。改ざんは発電所幹部の協議で決定され、プラントメーカーに指示」等々が伝えられている。
原発は、電力会社内部に何重も階層があり、社外の多重の下請・孫請が連なって建設・運転されている。問題発表は、発電所広報部が何回もの協議を重ねて公表されるが、所長も広報部も、その実情が把握できていない。階層社会や下請・孫請の不満が内部告発を呼び、今後も類似のことが繰り返されるだろう。
原発の海水温データ改ざん発覚に先立ち、昨年来、水力発電のダムや取水構造物の無認可工事や観測記録の改ざんが指摘されていた。国土交通省は電力会社に河川法違反の構造物確認の指示を出していた。原発温排水不正の直接の契機は、11月20日、山口県が中国電力下関火力発電所を立ち入り調査して、海水温のデータ操作を発見したことである。背後に河川環境を守る運動やダム反対運動の電力会社や国交省追及運動がある。
電力会社の発電事業は、経産省のみならず国交省等多数の官庁と県や市町村に関わっている。従前は問答無用の対応しかしなかった国や県が、情報公開・説明責任の風潮で、電力の横暴を擁護できなくなっている様子が伺える。河川や海洋環境を守る多様な運動が、今回の原発温排水不正問題を顕在化させたといえる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
原子力資料情報室は脱原発のため活動する独立の調査研究NGOです。
賛助会費は年間6000円。正会費は年間10000円。
月刊『原子力資料情報室通信』などをお送りします。
(引用終わり)