今日の雑談)博多のタクシー運転手・環境の現状を憂え未来を語る
2008/03/15
ふつうのブログ風の日記です
博多の国際会議場で 3月14日から17日のよるまで、
日本生態学会の研究大会が開かれます。たぶん2000人以上が参加するという大きな会議です。
14日は、日帰りで自然保護専門委員会に出席して、上関原発予定地の自然の保全と、太田川源流の細見谷渓畔林の保全と
西表島網取湾での黒真珠養殖の動きなどについて報告してきました。
また、学会が法人化するという動きがあるのですが、「それって何のためですか?」と聞いたら、4000人以上会員がいる任意団体というのも、税金面などで損が多いので、というような説明でしたので、
「議事録に残さなくてもいいから、『自然保護専門委員会だけは、損か得かという尺度では動かない』ということを全員で確認してください!」と言ってしまいました。
口に出して言いませんでしたけれど、「損か得か」という尺度は、安渓遊地の師匠の伊谷純一郎さんがもっとも嫌ったものでしたし、そのまた師匠の今西錦司さんも、生物を損得で理解しようとする社会生物学の流行をさして「まちごうてる、とはいわんけれど、浅はかやな」という言葉を残しました。
(ここまでまえふり)
さて、今日は、ちまたに生きる庶民同士の雑談の中にいろいろ深い話しがあるという話題です。
国際会議場から博多駅に向かうタクシーの中で、
運転手(ロマンスグレー)「この学会は、自然関係ですか?若い人が多いですね」
私「はあ、自然の研究と自然保護の活動をしています。若い人が元気ですよ」
運「しかし、ここまで自然を破壊して、いまさら自然保護というてみてもねえ」
私(おっ?面白いおじさんだな)「そんなにひどいですか?」
運「私はアユ釣りをするけれど、うまいアユなんかもう島根県あたりにいかんと釣れません」
私「高津川ですか。あそこのウルカはうまいそうですね」
運「そうです。ももぐらいかな、とおもって入るとへそぐらいまで深い、それほど澄んだ水です。それと」
私「それと?」
運「私は、50歳になってから杉花粉症になりました。生き物は、環境が危機的になると必死に子孫を残そうとするんでしょうか、ほんとに小さい木までいっぱい花粉をつけてますもんね」
私「拡大造林で、品種をかまわず植えてしまったせいもあるそうです。でも、田舎には昔からスギ花粉はいっぱいあったはずですけどね……」
運「やっぱり、排気ガスとか、化学物質とかそういった面も関係しているでしょうね」
私(自分の職業をまっすぐに批判するような意見を自分の職場でお客にいうとは見上げた魂!)「な、なるほど、ですねえ」
運「タクシーの運転手仲間で、プリウスに乗る人もいます。この車でも200数十万するから、100万円ほどしか違わない。10年乗ったらもう一台買えるほど燃費が違うそうです」
私「ほんとはタクシー用に、ハイブリッドLPG車がほしいですね」
運「それと、黄砂がひどい。中国の環境破壊もなんとかならんですかね」
私(お、話がグローバル化したぞ)「水がまったくなくなる時もあるらしいですね。黄砂の表面についた汚染物質が日本にもとどくから、黄砂の日は花粉症がひどいというのも聞きました」
運「海岸近くばかりを一極集中で開発していくからひどい自然破壊になるんでしょう」
私(すっかり感心して叫ぶ)「運転手さん、学会にも来てください!」
運「一般参加も可能ですか?」
私(公開講演の日取りを覚えていないのでややあわてつつ)「公開講演とかは無料です!どうぞ。僕ね、山口市の山の中で、田んぼを作って、薪を焚いて暖房して暮らしてるんですよ、そこでネックになるのが、車の燃料です。スペインのナバラ州というところに行ったら、あたりまえにバイオディーゼルというのがセルフで給油できるようになってましたよ」
運「北海道あたりじゃ、ペレットというのが普及しているそうじゃないですか」
私(ぬぁんと!木質ペレットの話題まで出るのか)「山口でも岩国あたりで造りはじめていますよ、あれなら、高齢者でも扱いやすいから、これからの希望の一つですね。ペレット自動車なんかできんかいな」
運「山口なら、お酒は何がいいですか」
私「私らの仲間で、高度300メートル以上で作った完全無農薬山田錦を50%まで磨いて作った『身土不二』という酒があります。それは手に入らなくても、同じメーカーの東洋美人なら、お味は保証します」
運「東洋美人ね、またこんどアユ釣りにいきますから、覚えておきましょう。はい、着きましたよ」
行きは小型で800円。帰りは中型で1050円でしたが、十分もとをとった気がした、豊かな10分間でした。この国の庶民の雑談はレベルが高いです。