不屈の魂)不運に襲われても一晩しかへこまない。翌日から走り出す。ある研究者の人生模様 #invictus RT @tiniasobu
2017/01/11
http://ankei.jp/yuji/n=2050の「世間をお騒がせ」に書きましたが、
身に覚えのないことで、五年間科研費から外されたことがある私は、KEN NAITO さんの
以下の文章を読んで、激しく共感しました。
研究の中身はたまたまアズキの研究のようです、がそれはなんでもいいのです。奥さんに頭をさげているところもうつくしいじゃありませんか。
http://d.hatena.ne.jp/KEN_NAITO/20160415
2016-04-15 金曜日
気がつけば既に年度が変わっている。書こう書こうと思っても、なかなか書けないものである。
昨年度は職場にとって暗黒の1年であった。過去の会計処理に不手際があったせいで会計検査院
から審査が入り、外部からの研究資金が止まってしまったのだ。私が採択されていたさきがけの予算も例
外ではなく、5年型予算の3年目が過ぎたところで、執行停止ということになってしまったのである。審査の結果次第では再開の可能
性もあるものの、少なくとも4年目の予算はゼロ、というのが職場からの宣告であった。それどころか、最悪の場合さきがけは中途で
辞退、さらに数年間の公的研究予算への申請資格も停止もあり得る、という通知である。
全身から血の気が引いた。ちょうどさきがけの中間審査の結果を受け取った直後で、私の研究が予想以上に高く評価されていてやる気
に満ちていたときだったから、余計にショックは大きかった。どうしてこんなことに。契約の発注は事務方の言う通りにやってきたの
に、その言われたやり方がルール違反だったとは。そしてそれが自分の責任として降りかかってくるとは。
その日の夜はもう物凄く悔しくて、哀しくて、腹が立って、悶えに悶えた。偉い人達はもう少しくらい私らを守るような対応を取れな
かったのか。私はそんなにも悪いことをしたのだろうか。
翌朝、職場の人々はみんな、昨夜の私の頭のなかを駆け巡っていたことと同じことを口にした。もっと小さな傷でことを収めるやり方
があったのではないかと。私はしかし、それを聞いてむしろ冷静になってしまった。仮に私が今の職場のトップにいたら、みんなが言
うところの「もう少しマシなやり方」というものを、簡単に実行できただろうか。会計検査院からいきなり「あなたの研究所では○○
億円の経理手続きが不正に行われている可能性がある」なんて言われて、パニックにならず、研究所と職員の利益を最大限に守るため
に最善の行動をし、それでも損害を免れない職員に対しては納得のいく説明ができる・・・いるのか、そんなヤツ?
前夜の私や、いま他の研究員が言ってることに正当性がないとは言わない。でも、正当な言葉を並べたところで、今のこの状況が好転するわけはない。
そもそも、人生は長い。その長い人生の中で、理不尽の一つや二つくらい、あって当然のことだろう。大切なのは、理不尽に見舞われ
たときに、「理不尽だ!」と叫ぶことよりも、これからどういう行動を取れば、私は明るい将来を思い描くことができるのか、という
ことではないか。少なくとも、今回の事態でやる気をなくし、10年経っても腐ったままで「今の私がこんな状態なのはあのときの理
不尽な処分のせいだ、自分は悪くなかったんだ」なんて言い続けているような未来には、絶対にしたくない。
そしたら、久しぶりに思い出した。「人生は、度重なる偶然と、それに対する自らの態度で決まる。」という、若い頃によく読んでいた村上龍
の言葉を。
ならば、私はどうすればいいのか。会計検査院の審査の結果が最悪だった場合、私は残り2年分のさきがけ予算を失い、3年間は研究
費を申請できなくなる可能性もある。でも、だったら再び研究費を申請できるようになったその時に、大きな予算を獲得できるような
準備を進めておくべきだろう。まずはこれまで出ていた結果を片っ端から論文にして、コツコツと研究材料を準備する。研究費が止ま
ってしまった以上、論文の投稿料も足りなくなってしまうかも知れないが、だったら自腹を切ってでも投稿するまでのことだ(嫁には
、今年のボーナスは期待しないでくれ、と頭を下げた)。
ということで、昨年度は復活への第一歩ということで、論文を書いて書いて書いて書きまくったのである。投稿本数11本。うちアク
セプトまで辿り着いたのは7本。現在1本がリヴァイズ、2本がレビュー。残念ながら1本がリジェクトを食らってしまったが、追加
の実験を手配して、もう一度チャレンジするつもりだ。
これが思わぬ効果を生んで、昨年度の僕の業績評価は予算が止まっていたのに「S」ということになってしまった。センター長曰く、
「今年度は『お金がなくなったので業績もありません』という報告が相次ぐ中で、
内藤さんの『お金がないから論文10本書きました』という報告を聞いたときは胸のすく思いがしました」だそうである。
そして年度が終わる間際に、不正経理に関する審査結果も出たわけである。内容は、「口頭注意」だった。つまり、さきがけの執行停
止は解けて、申請資格が停止されることもない、ということである。しかも、さきがけの親元であるJSTが寛大な措置を取ってくれ
て、何と採用期間を一年先延ばしにしてくれたのである。つまり、昨年度分の計画を今年度に、そして今年度分の計画は来年度にやっ
てください、ということになったのだ。ありがたいことである。
そして今年度は、連携大学院として提携している東大から学生が加わり、さらに東京理科大
の学部生も預けてもらえることになった。予算が戻り、フレッシュな面々が加わって、心機一転、再出発である。(引用終わり)
御本人の了解を得て
全文
引用しています。
共感した人 安渓遊地でした。