福島第一1号機内部からの証言) 地震で無数の配管やケーブルのトレーが天井からばさばさと落ち、内部はすさまじい破壊――ガン死した作業員の遺言 RT@tiniasobu
2013/09/15
福島第一原発の1号機の1階にいた木下聡さん(65)の証言です。
東京電力や政府担当者としては、なかったことにしたい内容でしょうが、
世界の人々にとって大切な、命をかけたメッセージとして、共有しましょう。
太字の引用部の()書きは、安渓の補足です。
配管は昔のアンカーボルトを使っているから、揺すられると(コンクリートと
配管を固定しているアンカーボルトの間に=安渓補足)隙間ができる。ああ、危ない
と思ったら案の定、無数の配管やケーブルのトレーが天
井からばさばさ落ちてきた(「配管」や「ケーブルを支える
トレーという部材」が落ちてきたようにも読めるが、そうではなくて「配管やケーブ
ル」を支える部材でしょう。もし配管がたくさん落
ちてきたのであれば、蒸気や液が噴き出したという証言があるはず=安渓補足)。落
ちてくるなんてもんじゃない。当たらなかったのが不
思議。
そもそも、運転開始から40年になる1号機の老朽化はすごかった。重要器具は定
期検査で交換するが、周辺の装置はそのままだ。追加、追加でどんどん配管を増やし、
耐火構造にするために防火剤を塗りつけるから、重量は半端じゃなかった。
建屋のコンクリートも相当劣化していた。インパクトドライバーを当てると分かる。
ずぶずぶと刺さって、粉は真っ白。鉄筋をモルタルで塗り固めるときもクレーンで流
し込むだけ。本来はバイブレーターを使うが、竹の棒で突っつくだけ。施工はひどい
ものだった。
東電は「全電源喪失と地震の揺れは無関係」と言っているが、そんなのあり得ない。
謙虚に検証する姿勢がないと、安全神話が復活する。
以下は記事の引用です。
神戸新聞 2013年9月13日づけの記事
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201309/0006334811.shtml
福島第一元作業員の「遺言」詳報 東電、信用できない
福島第一原発事故が起きたとき、1号機内部にいて、今年8月にがんで亡くなった
元作業員の木下聡さん(65)の証言は次の通り。
‐事故当時の様子は
あの日は午後から、1号機で定期検査のための足場を組む作業をしていた。1階に
は私と同僚の2人。4階に元請けと協力会社の4、5人がいた。
最初の揺れはそれほどでもなかった。だが2回目はすごかった。床にはいつくばっ
た。
配管は昔のアンカーボルトを使っているから、揺すられると隙間ができる。ああ、
危ないと思ったら案の定、無数の配管やケーブルのトレーが天井からばさばさ落ちて
きた。落ちてくるなんてもんじゃない。当たらなかったのが不思議。
4階にいた人たちは水が大量にゴーと襲ってきたと言っていた。それが使用済み燃
料プールからなのか、非常用復水器が壊れたからなのか、そのときは分からなかった。
皆で集合して、1号機から脱出した。地震が起きてどれぐらいだったかな。必死だっ
たからはっきりしないけど、10分ぐらいじゃないかな。
途中の様子も恐ろしかった。タンクはぼこぼこ倒れてるし、潮が引いていて、これ
は津波が来ると思った。沖のテトラポットがむきだしになっていた。敷地内にある元
請けの事務所に戻り、装備品を返して、まとまった班から解散になった。
正門を出た。いつもなら浜側の道を通るが、陥没していたから、山側の道を行った。
あのまま浜の道を通っていたら、津波にやられとった。
東電は「全電源喪失と地震の揺れは無関係」と言っているが、そんなのあり得ない。
謙虚に検証する姿勢がないと、安全神話が復活する。
そもそも、運転開始から40年になる1号機の老朽化はすごかった。重要器具は定
期検査で交換するが、周辺の装置はそのままだ。追加、追加でどんどん配管を増やし、
耐火構造にするために防火剤を塗りつけるから、重量は半端じゃなかった。設計基準
を大幅に超えていたはずだ。
建屋のコンクリートも相当劣化していた。インパクトドライバーを当てると分かる。
ずぶずぶと刺さって、粉は真っ白。鉄筋をモルタルで塗り固めるときもクレーンで流
し込むだけ。本来はバイブレーターを使うが、竹の棒で突っつくだけ。施工はひどい
ものだった。だから水素爆発で粉々に吹き飛んだ。
‐東電への思いは
ずっと世話になったが、今は言っていることの半分も信用できない。事故後の対応
については新聞をずっと切り抜いている。「4号機の建屋、問題なし」という記事が
あるが、そんなのうそっぱちだ。あれだけ揺れて「問題なし」だなんて。
事故後の対応は全てメーカー任せだった。正常に作動していればメルトダウンを防
げた可能性がある非常用復水器(緊急時に原子炉の蒸気で冷却)も、当直の社員は使
い方を知らなかったって言うんだから。当直の人は、中央制御室の操作はできても、
せっかくの冷却装置を使えない。訓練もしていなかったって言うんだから、恐ろしい
話だ。現場にいた私らに明確な指示があれば、対応できたはずなのに。
3月には仮設の配電盤にネズミが入って停電する事故があった。侵入を防ぐ初歩的
な施工ができていない。熟練した作業員が線量オーバーで入れなくなっているから。
今後も事故は起きるだろう。
人生のほとんどを原発に捧げてきたのに、情けない。のんびり暮らそうとした途端、
病気が分かった。体力は元気なときの10分の1になって、ペンも持てなくなった。
だけど、簡単には死ねない。納得できない。俺は俺で、じたばたして生きてみせる。
(聞き手・木村信行)
9月11日
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201309/0006327170.shtml
地震で配管落下 続く場当たり体質 福島第1元作業員の「遺言」
「俺は俺でじたばたして生きてみせる」と語っていた故木下聡さん=5月23日、福
島県郡山市の自宅で
東日本大震災から11日で2年半。節目の日を前に、福島第1原発事故発生時に1
号機で働いていた一人の男性作業員が亡くなった。全身に転移したがんと、石綿(ア
スベスト)が原因とみられる肺線維症(じん肺)に侵されていた。男性は5月下旬、
神戸新聞の取材に応じていた。事故後の東京電力の対応を批判し、「このまま日本各
地で原発を再稼働すれば『安全神話』が復活するだけだ」と危機感をあらわにした。
福島県郡山市で暮らしていた木下聡さん。原発の電気設備を専門にする技術者で、
東電の3次下請けに当たる同県大熊町の会社に40年間勤め、昨秋に退社した。その
直後、肺線維症と診断され、肺がんも判明。8月5日、65歳で亡くなった。
男性は、原発事故の原因となった全電源喪失について、東電が地震の揺れとの関連
を否定することに憤った。
「地震発生時、老朽化が進んでいた無数の配管やトレーが天井からばさばさと落ち
てきた。下敷きにならなかったのは奇跡。あれだけの破壊で『無事』なんてあり得な
い」
最近も、同原発では汚染水漏れやネズミの侵入による停電などが相次ぐ。場当たり
的な体質は変わらない。「素人工事の結果だ。熟練作業員が線量オーバーで現場に入
れなくなっており、同様の原発事故は今後も起きるだろう」と強調した。
「簡単には死ねない。話せるうちに体験を伝えたい」と話していた男性。この時の
取材が「遺言」となった。
(木村信行)
9/11つづき
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201309/0006327168.shtml
東電のずさん体制糾弾 「現場体験、伝えなくては」
福島第1原発事故が起きたとき、1号機にいた元作業員の木下聡さん(65)が亡
くなった。「余命8カ月」と宣告されていた。「地震の影響と向き合わない東京電力
は、何も変わっていない。私の経験をもっと伝えなくては」。そう語っていたが、帰
らぬ人になった。
地震直後、1号機の冷却装置「非常用復水器」は作動せず、メルトダウンの主因の
一つとされる。木下さんは「現場にいた私たちに明確な指示があれば動かせた」と指
摘。東電などの調査で、当直の社員が使い方を知らなかったことが判明しており「情
けない。結局、すべてがメーカー任せだった」と憤った。
稼働40年になる1号機の老朽化にも言及した。「重要器具は定期検査で交換する
が、周辺の装置はそのまま。どんどん配管を増やし、防火剤を塗りつけるから、設備
の重量は設計基準を大幅に超えていた」「建屋のコンクリートはずぶずぶでドライバー
を当てると白い粉になった。鉄筋をモルタルで塗り固めるときも竹の棒で突っつくだ
け。施工はひどいものだった」
福島第1原発の全電源喪失と地震の関係について、事故後に設置された政府、東京
電力の両事故調査委員会は「無関係」と否定する。しかし、木下さんは「内部はすさ
まじい破壊ぶりだった」と証言した。「解析が必要」と結論づけた民間事故調で委員
長を務めた北沢宏一・前科学技術振興機構理事長は「地震の影響があり得るという前
提で調査を継続しないと、国民の信頼は得られない」と指摘する。
木下さんは原発事故の1カ月後、避難先の青森県から呼び戻され、1~4号機の電
源車のケーブル敷設作業に従事した。
木下さんの積算被ばく線量は40年間で96ミリシーベルト。このうち38ミリシー
ベルトは事故後の復旧作業で被ばくしていた。
がんとの因果関係について「私はたばこを吸うし、100ミリシーベルト以下なら
問題はない」と否定。肺線維症は、電気配線に粉末状のタルクを塗る作業でアスベス
トを吸引したのではないかと疑っていた。
ただ、木下さんを支援していた福島県の労働関係者は「実際は長年、被ばく線量を
低くごまかすため若い作業員の線量計を借りて現場に入った、と本人は言っていた。
放射能と発がんの関係は否定できないのではないか」と話す。
(木村信行)
〈原発作業員の放射線被ばく〉労働安全衛生法の規則は、被ばく線量の上限を通常
時で1年間50ミリシーベルト、5年間で100ミリシーベルト、緊急時の作業では
100ミリシーベルトと規定。労災認定基準は白血病が1年当たり5ミリシーベルト、
胃がんは積算で100ミリシーベルトなど。肺がんの認定例はない
以上、紹介と引用終わり