勉強会)滝川薫さん(スイス在住・環境ジャーナリスト)のヨーロッパ、エネルギー自立のまちづくり を聞きました #energy #swiss #iwaishima RT @tiniasobu
2012/07/12
2012年7月12日 山口情報芸術センターで、滝川薫さん(スイス在住・環境ジャーナ
リスト)の
ヨーロッパ、エネルギー自立のまちづくり
という講演をききました。
主催は、YICA 山口現代藝術研究所で、前回の田中優さんの講演につぐ2回目で、
スイスを中心に、オーストリアやドイツの豊富な成功事例の紹介がありました
以下は、お話を聞きながらの安渓遊地のメモで、充分なものではありませんが、大
企業ばかりがもうけるのでない、地域住民の充分な意見交換と利益の分配があること
が大切だということを、認識しました。
滝川さんのお話
7月1日に 日本でもFeed in tariff(自然エネルギーの固定価格買い取り法)が成立
しました。
再稼働問題などをにらんで、脱原発は当然ですが、その先をどうみるか。
ヘルマン・シェアさん(ドイツの政治家)の言葉の紹介。エネルギー供給のデモク
ラシー化、産業社会最大の変革。
発電出力の所有者40%が市民、11%が農家。地域の小さな人々が支え、恩恵も
そのひとたちに注いでいる。大規模のコンツェルンはわずか9%しかもっていない。
現在38万人の雇用を生んでいる。2020年には、50万人の雇用を予測。
バーデンヴュルテンベルク州で、発電量にしめる太陽光発電が40%、北海に面した
ところで、風力が50%をしめる。内陸部でも9.4%。バイエルン州は熱心でない
ので、1.3%に過ぎない。
スイスのFITの原発代替効果。たった、3年間で原発3基分の発電能力を自然エ
ネルギーで得た。
次のような方程式を考えてみました。
eE=rWの2乗
再生可能エネルギー が地域の価値創出を格段に成長させると読んでください。
2.地域のエネルギー自立とは
地域で閉じるのではなく、系統につながっていく。全体で考える。
過疎の村に大企業がやってきて風車をぶったてるのは、地域のエネルギー自立とは
いえません。
オーストリアのギュッシングという町が1990年代のパイオニアとして有名。固定価
格買い取り制によって、飛躍的にひろがっている。
フクシマの事故のあと、エネルギー自立できる地域こそが、先進地域の主流である。
必ず、省エネルギーをともなわなければならない。
温暖化防止。95%の温暖化ガス減少は、エネルギー自立と同じ意味である。
ドイツでは、環境省が100%再生可能エネルギー地域を設定していて、1000人ぐ
らいのところから200万人の都市までいろいろある。これからという地域をネットワー
ク化して、支援していくというプラン。
今年の9月にカッセルで大きな集会が行われる。700人が参加する。
オーストリアの生命省(環境省に相当)84地域、875自治体で気候エネルギー
モデル地域を設定。
もともと農村地帯で始まったが、しだいに都市部にもひろがっている。統計がない
のだが、バイオエネルギー村では70村以上が自立。ヨーロッパでは5万人以上が自
立している都市もある。
農村部では、2020年から2030年を目標に、電気と水と交通を自立しようとしている
ところが多いです。
都市部では、周辺の地域と広域の提携をして、ウルム市は50万人規模で自立。ハ
ノーバーは、2050年までに400万人が自立を目指している。
南ドイツ、ボーデン湖の北の、マウエンハイム村、人口430人、2006年から伝悦自
給している村。全量を買いとって、12年で投資を回収。バイオエネルギーで、農家の
消費量の9倍を生み出している。
廃熱を生かして地域暖房を行っている。冬のピーク時の熱源に1メガワットのチッ
プボイラーを設置。地下に断熱の配管を3.5キロにわたってはりめぐらしている。
地域暖房の価格は、灯油より安く、村の建物の7割が接続、消費量の9割を供給し
ている。
同時に太陽光発電もさかんで、村の電力消費量の半分を生産している。バイオガス
とあわせば、9.5倍になる。30kW以下だと、1kWあたり、18円になってい
て、電力会社から買うよりやすく、買い取り価格は24円なので、もうけがでる。
お金の流れの変化。毎年30万リットルの石油を買って2500万円を払い、電気も1000
万円払っていた。これらのお金が、地域のエネルギー企業や農林業にまわり、6000万
円の収入がうみだされた。
2000年に市民20人が出資して、ソーラーコンプレックス社ができた。780の出資
者。資本金6億円、従業員30人、過去10年間に設備投資90億円。2030年までに、この4
8万人の人々をエネルギー自立させることをめざしている。
毎年電熱自立村を7つつくっている。
市民投資には3つの種類がある。目に見えるので人気です。
1. 株主として、利回り5%
2. 定期投資者、6年で4%
3. 設備への出資者もある。
ドイツの事例その2 モアバッハ町
南西ドイツ。1.1万人 4000世帯19村がある。
1. 5万世帯部の電力生産
一部の住民が、風力発電を誘致して、住民同士の争いが起こった。
1995年に米軍の爆弾保管地146haが自治体の土地になっていたので、そこにエネルギー
パークを建てることにして、抗争は停まった。
正確なモンタージュ写真や、風車をあげてよくわかってもらい、実施段階になってか
らの反対者を出さない。
それから、民間の企業をはじめて募集した。いろいろな条件をつけた。地域から投
資ができること、見学可能、地元企業が建設に参加などなど。
モアバッハ・エネルギランドスケープという会社になった。
風車は2メガ(2000キロ)ワットが14基たっていて、そのうち1基は市民風車。太陽
光発電は、2メガワット。
自治体へのメリットもいろいろあった。2020年までに電熱の100%自立。二酸化炭素
排出50%低減。など、自治体としても積極的に取り組んでいる。
ユーヴィ社
15年前に二人の大学生が始めた会社が、いまでは従業員1700人の会社に育っている。
全国・世界にプロジェクト展開している。
ドイツと世界を100%再生可能エネルギーにというミッションを掲げている。
地域へのお返し、価値創出をする努力。それがないと受け入れられない。地域産業、
農家などにメリットが生まれるコンセプト。資金作り、市営エネルギー会社などを作
り、組合づくりを支援し、支店が税金を納めるなど。
5分休憩のあとの後半
地域や自治体の目標決議。
あたまごなしに進めるのではなく、ステークホルダーの参加をもとめ、住民と自治
体の間にあって、エネルギー自立を進める担当者が大切な役割をはたす。
エネルギーコンセプト・マスタープラン
現状把握・技術的ポテンシャル把握・対策カタログ(優先順位、時期、コスト、効
果、担当)
発電設備の適正地地図(GIS)をつくる。
スイスでは、地域の熱供給マスタープランをつくる。
下水の熱や、工場廃熱、地下水からの熱などを把握して、建設条例とリンクさせる。
→自治体が施主に義務化できる。
ソーラー屋根台帳・ポツダム市。ネットでクリックするだけで、わかる。屋根の大
きさと向きに応じて、どれだけの発電ができて、20年でどれくらいの二酸化炭素削減
になるのか、そこからあがる収入もわかる。
住民参加・イニシャチブ 地域リーダーという資本、地域ヴィジョンの共有、自治
体は、住民へのモデレーター、サポーター役をする。
将来の都市への供給源として、農村でも省エネルギー。消費量の半減が必要。
スイスエネルギー庁では、いまある技術だけで、66%減らせると試算。これは政
治的意志があればできることである。
断熱改修促進10カ年プログラム。石油からの二酸化炭素税からの年110億円で断熱
改修助成。3重窓にするなど、過去2年間で4.8万棟がこれを受け入れ、大工さんた
ちにも大きな支援になっている。予算超過しているが、進めている。
地域のお金と人で実施していく。九州ほどの国スイスで、850社もの市営エネルギー
公社があり、積極的に取り組んでいる。
価値創出の4段階
1. 設備や部品の生産
2. 設計と施工
3. 運転とメンテナンス
4. 運営母体
プロジェクトが地域にとってどれだけの利益があるかを、簡単に計算できるサイトがある。http://www.kommunal-erneuerbar.de
スイスでは新築の断熱規制がある。1㎡あたりの灯油使用量を20年で4分の1にし
た。熱源の20%以上は再生可能エネルギーであること、というのが義務になっている。
人材育成戦略。州、国、大学、専門学校、職業連盟など、再送可能エネルギー、省
エネのエクスパートを多数育てないといけない。
5. オーストリアとスイスの事例
5.1 ケッチャッハ・マウテン町
南東オーストリア、人口4000人、1886年からの小水力の伝統を生かして、74%自立
している。目標は130%の自立。
クラウス家の経営する電力会社AAE(アルペン・アドリア・エネルギー)
が小水力21風力1など、ミニ揚水発電もある。
ここでは、自治体は、発展のモデレーター。地域暖房をつくるときは、すべての公
共暖房を接続し、自治体の建物を断熱対応にする。
担当機関・エネルギー自給協会。女性がひとりできりもりしている。
地域産業を代表する23人が入り、町長(銀行頭取)も入る。エネルギー自立の大使
となって、各分野でそれを実現するために力を貸す。銀行は融資する。病院は太陽熱
温水器を利用した冷房、メンバーのエコホテル化をするなど。
学校のエネルギー学習週間地となるという戦略。
AAE社、30人の従業員。売電は全国に、1.5万の顧客。40の発電設備+10年前
から蓄電設備。バイオガス・揚水をピーク時に使う。3つのミニ揚水ダム。深さ6-8
メートルの近自然池。500kWの風車なら、38基分の電気を蓄電可能。
これによって、ほとんど外部から電気を買うことなく営業できている。
5.2 オーストリア・フォーアルベルグ州
オーストリア西端、人口37万人。2050年までに熱・電気・交通を自給することを
決議。電力は水力を中心に100%自給。熱は30%弱。すべての自治体でチップボイラー
。バイオガス。コージェネ37基など。
特色「エネルギー未来」プロセス
全員参加型のビジョンづくりのプロセス。地域のエネルギー研究所が中心となって、
100人の市民専門家を選出。70回のワークショップ。その時のルール。何ができな
いかを言うことを禁じて、何をすべきかだけを論じる。業界のロビー活動はしない。
これをたたき台に、さらに130人の住民を各年齢層から選んで、意見を言ってもらい、
それを踏まえて、議会で全会一致で決議することになったんです。
再生可能生産量を+50%とし、エネルギー消費量をマイナス50%とする。それ
が出会うところで自立がなりたつ。
またまた大いに議論して、101の「孫に通じる対策」。3%ずつ省エネ住宅化す
る。30年で全体が省エネできる。自転車を短距離から中距離にも使っていく。再生可
能エネルギーを14%ずつ増やすなど。
エネルギー研究所フォーアールベルグ。1985年に設立された、中立の機関。州のブ
レイン。40人の専門家。信頼できる中立のパートナー。
5.3スイスのバーゼル都市州
19.2万人、人口密度5189人/平方キロ
100%再生可能な電気、15%再生可能な熱
現状の6000ワット、バーゼルではすでに4000ワット。これを2000ワットにもって
行くという目標。
都市内の域内資源のポテンシャル比較。グラフ、州域では、熱は20%、電気は60%が
上限であるとわかる。だから、広域連携していかなければならない。
電力への補助金税、州独自の環境料金で8.5億円を省エネ再生エネルギーへの補助
金につかう。中小企業の商工連合会といっしょになるので、これらにも利益が出る。
電気に二つ目の税をかける。1999年に住民投票で可決されている。3-6ラッペ
ンを上乗せし、1年に一度、これを住民に平等に配分する。たくさん電気をつかった
人は、損をする仕組み(大きな工場などはもちろん、除外)。
州営インフラエネルギー公社IWB「今日からもう明日を生きる」
広域からの風力、全長200キロの供給網。4.5万世帯が接続している。
ゴミ焼却場が町中にあり、そこからのコジェネで2020年までに80%再生可能に
なる計画である。
IWBの木質バイオ発電所。30MW
2008年オープン。ゴミ焼却場。エネルギー効率82%
リーヘン市、地熱温泉水の地域暖房、300世帯、17年やっても温泉水の温度が
下がっていない。
まとめ、欧州中部でできるなら、必ず日本でもできる。
熱・電気・交通を含む総合的な取り組みである。
山口県から地域のエネルギー自立運動をつくっていきましょう。
祝島を電熱自立の第一事例に。
締めくくりに アルベルト・アインシュタインのことば
問題を生み出したのと同じ頭で、その問題を解決することはできない。
ありがとうございました。
参考文献
滝川薫、2009年5月『サステイナブル・スイス――未来志向のエネルギー、建
設、交通』学芸出版社
滝川薫ほか、2012年3月『欧州のエネルギー自立地域――100%再生可能へ!
』学芸出版社