学者の良心)加藤真「日本列島弧の生物多様性と原子力発電所――未来への希望と負の遺産」
2011/12/24
京大の加藤真さんから報告が送られてきました。
「日本列島弧の生物多様性と原子力発電所――未来への希望と負の遺産」
『学術の動向』 2011年12月
末尾の部分から引用します。
東北地方太平洋沖地震は、津波によって海岸 地域に甚大な被害をもたらしたただ4
1けでなく、福島原子力発電所の炉心溶融事故を引き起こし た。冷却
系を失った原発は炉心溶融に至り、大量の放射性物質を環境中に放出した。生まれ
親
しんだ土地から退去を余儀なくされた人々は 10万人を越え、少なくとも数
十年にわたって 居住できない広大な土地が残された。
チェルノブイリ原発事故では、被曝が人やさまざまな生物に与える影響について、
多くの調査がおこなわれている
しかし、被害をできるだけ過小評価したい国や機関はそれらの結
果を隠蔽したり、有意ではないという理由でそれらを無視してきた。これまでに公に
なること
の少なかったそれらのデータを集めて、チェルノブイリの事故の本
当の教訓を引き出そうと した報告集が出版された4。この真摯なる報告から
読み取れることは、環境中に放出された大量の放射性物質が、人々のがんや免疫不全
の増加、平均余命の短縮、早期老化、先天的異常の 増加をもたら
しただけでなく、ヒトで見られた そのような影響がさまざまな野生生物におい
ても見られたということである。
報告集は英語ですが、全ページダウンロードできます。
4 Yablokov A V et a1 2009 Chernobyl:consequences of
the catastrophe for people and the environment Annals
of the New York Academy of Sciences 1181
http://www.strahlentelex.de/Yablokov%20Chernobyl%20book.pdf