東電本当に電気が足りないの?)無「計画停電」決定までの舞台裏――原田和明さんによる力作レポート1-4 RT @tiniasobu #genpatsu #teiden
2011/03/27
東京電力が無「計画停電」をしているのは、実は、原発がないとだめだぞ、と示す
ためではないかという疑惑について。
詳しい検証を試みている方がおられますので、ご紹介します。公開されている膨大
な資料から推理していく手法に魅力を感じます。原田さんのさまざまな推論の結果に
すべてに同意している訳ではありませんが、なぜ円高が急に進んだかなど、不可思議
なことも視野にいれて謎解きに挑んでおられる力作であると思います。
安渓遊地
以下引用です。
http://archive.mag2.com/0000083496/index.html
世界の環境ホットニュース[GEN] 787号 2011年3月18日
無「計画停電」決定までの舞台裏(1)
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
無「計画停電」決定までの舞台裏(1) 原田和明
首都圏はいきなりの「計画停電」に翻弄されているように見えます。「計画停
電」は、東京電力が全原子力発電所の操業停止に陥ったため、首都圏の電力供
給不足が懸念され、やむなく実施されていると説明されています。ところが、
実施決定の経緯をたどっていくと、「計画停電」とは、大停電を未然に防ぐと
いうよりも、首都圏を大混乱に陥れること自体が目的なのではないかとの疑い
があります。
▼東電の原子炉全停止は経験済み
まず、今回の首都圏の「計画停電」は回避できたということを確認しておきた
いと思います。というのは、東京電力は過去に原子炉全停止という経験をして
いて、そのときは今回のような混乱もなく、もちろん停電もなく乗り切ってい
るからです。だから、今回も同じように対応すればよかったはずです。
東京電力は、2002年8月 に発覚した点検虚偽記載事件で、全原子炉の再チェッ
クを課され、福島第一原発6号機(出力110万キロワット=以下kW) が検査入り
した2003年4月14日から、柏崎刈羽6号基が点検を終えて再稼動した24日まで、
わずか10日間ではありましたが、今回と同じ管内の全原発が停止するという経
験をしています。
そのときの対応について、「電力危機については、『危機に備え節電必至』と
題して読売は企業の節電や停電の対策を詳しく報道した。(2003/7/4)また、
日経は『電力供給なお綱渡り。東電、火力や節電頼み、他社からも融通。』と
異常事態であるとした。(2003/7/11)」(花岡尚之「東電虚偽記載事件に見る
原子力発電の社会的受容」日本福祉大学情報社会科学部論集 第10巻)とあり
ます。休止中の火力発電所を再稼動させたり、関西電力などから最大90万kWの
融通を受ける一方、顧客の節電努力でこのときは切り抜けています。
西日本エリアからの融通は東日本との周波数の違いから 3ヶ所しかない変電所
の変換能力がネックとなって今でも100万kW が限界とのことですから、当時も
「最大90万kW」に留まったのでしょう。
▼「需給調整契約の発動」が本来の対策
電力危機を乗り切る最も重要なカギのひとつが「顧客の節電努力」です。この
場合の顧客とは節電効果を算定しにくい一般家庭ではなく、大口需要家(大企
業)を言います。東京電力はこのような電力危機に備えて、大口需要家と「需
給調整契約」を結んでいます。東電は今回もこの契約を発動、大企業に節電を
要請して、電力危機を乗り切ろうとしていました。(日刊工業新聞2011年03月
12日 05時03分より以下引用)
東京電力は東北地方で起きた地震に伴い、一部発電所を停止したことを受け、
電力の供給が足りなくなる恐れがあるため、需給調整契約を結んでいる企業
に電気の利用を抑制するよう呼びかけを始めた。
需給調整契約は大口企業の電気代を割安にする代わりに、電力需給が逼迫
(ひっぱく)した際、電気利用の削減義務を負うもの。契約者数は 3月10日
現在で約700件。東電が需給調整契約に基づく電力利用の抑制を求めるのは、
猛暑で電力供給不足の恐れが生じた2007年8月以来。(引用終わり)
需給調整契約は、使用制限開始までの猶予が(1)通告後ただちに、(2)1時間
後、(3)3時間後という まさに緊急事態に 即応するもので、しかも 50%以上
(2日以上に亘る場合は 30%以上)の使用制限を強制できます。(1997年2月7
日東京電力プレスリリース)契約者には昭和電工、旭硝子、神戸製鋼所、東京
製鉄、東京鋼鉄、朝日工業、東邦亜鉛などの大企業を中心に1200社以上が名前
を連ねています。これら大口需要家の使用量が全体の 2割として、50%節電を
実現すれば、全体需要の1割を節電できることになります。(需要予測が 4100
万kWでしたから、約400万kWの節電に相当)
東京電力の方針とは異なる報道
東電は12日朝の段階では前例に従って、需給調整契約を発動しようとしたので
は ないかと 推測されます。もともと東電にとって経験のない「輪番停電」が
突然出てくる方がおかしいのです。ところが、「輪番停電」実施のニュースは
3月12日の夜に突如流されています。(産経ニュース 2011.3.12 21:24 より以
下引用)
東京電力は12日、電力供給が需要に追いつかない見通しとなったことから、
14日にも地域ごとに停電する「輪番停電」を行うと発表した。家庭、工場、
公共施設の区別なく 3時間ずつ送電を止める。需要が供給を上回ると管内全
体が停電する恐れがあるため。東電は、自宅で医療機器を使う人には発電機
を貸し出すなどして対応するとしている。東電が輪番停電に踏み切るのは初
めて。
病院や公共施設などを停電の枠外にするのは「技術的にできない」(藤本孝
副社長)といい、自家発電などによる対応を求める。信号も止まる。電車は
一つの路線でも広いエリアから電力供給を受けており、影響は出にくいとみ
られる。
東電の供給力は現在、夜間の電力で水をダムにくみ上げて昼間の発電に使う
揚水発電などを含めて3700万キロワット。今後、揚水ダムの水を使い果たす
と供給力は3100万キロワットに落ちる見通し。産業活動が本格化する14日の
需要は4100万キロワットが見込まれ、輪番停電でしのぐしかなくなった。
(引用終わり)
需給調整契約を発動して400万kW の節電ができれば、なんとかギリギリですが
大停電の危機を乗り越えられるはずでした。東電も当初そのつもりだったと考
えられます。ところが、東京新聞も 3月13日の朝刊で「輪番停電」に言及して
います。(以下引用)
電力需要が増える週明けの十四日にも、電力需要がピークを迎える夕方の時
間帯にあらかじめ停電エリアを決めて停電する「輪番停電」を初めて実施す
る構えだ。(引用終わり)
このように、3月12日の朝には「需給調整 契約を発動」だった従来通りの対策
が、昼間のうちにひっくり返って「輪番停電」実施へと転がり始めています。
▼海江田万里経済産業大臣は蚊帳の外
ところで、海江田経済産業大臣はどこまで知らされていたのでしょうか? 海
江田は3月12日の談話では国民に節電を呼びかけ、供給側も最大限「安定供給」
に努力すると述べていて、安定供給断念を意味する「輪番停電」については一
切ふれていません。(経済産業省HPより以下引用)
平成23年3月12日 海江田経済産業大臣談話・声明
1. 今回の地震により、東京電力及び東北電力管内の電力供給設備に大きな
被害が出ており、復旧に全力を挙げているところである。
2. 一方、復旧後も、発電施設の状況により供給力不足が生じることが見込
まれる。このため、電気の使用に当たっては、極力節電いただくようお願い
したい。
3. 電力の安定供給は、国民生活の最も重要な基盤。引き続き、電力の安定
供給確保に全力を挙げて取り組んでいくので、国民の皆様の御理解、御協力
をお願いしたい。(引用終わり)
海江田も「輪番停電」について知らされていなかったと思われます。一方、石
原都知事に対しては事前に根回しがあった模様です。蓮舫節電啓発担当大臣と
の会談では、「計画停電」に対してクレームをつけないまま、5分で 切り上げ
ています。(ANNニュース03/14 15:46より以下引用)
蓮舫節電啓発担当大臣は石原都知事と会談し、「東京都は電力の 3割を使用
しているので節電をお願いしたい」と要請しました。
これに対して石原都知事は、蓮舫大臣の言葉を遮るようにして「街のなかに
はネオンがまだまだ光っている。禁止措置にするべきだ」と述べ、できる限
り早く政令で対応するべきだという考えを強調しました。(引用終わり)
その他にも「震災は天罰」だと言い放つ一方で、計画停電についてはなぜか噛
み付いていません。(産経ニュース2011.3.14 22:59より以下引用)
東京都の石原慎太郎知事は14日、東日本大震災について緊急記者会見を行い、
計画停電について、「自らの生活を守るだけでなく、被災地の復旧を後押し
することにつながる。傷ついた同胞を遠くから支えることになる」と話し、
冷静な対応を呼びかけた。(引用終わり)
海江田が蚊帳の外だった理由は、彼の3月13日の会見に表れています。(3月13
日15時、海江田経済産業大臣の会見より以下引用)
電力の安定供給確保のための需要対策について(平成23年3月13日)
1. 東京電力及び東北電力管内における電力供給設備に大きな被害が出てお
り、両電力会社に対しては、発電設備の早期復旧に全力を挙げるとともに、
他社からの応援融通の増加等により最大限の供給力を確保するよう指示して
いる。
2. しかし、十分な供給力が近日中に復旧する見込みは低いことから、明日
以降、東京電力及び東北電力管内において、相当量の供給力が不足する異常
事態に直面する可能性が高い。
3. このため、予測不能な大規模停電を回避するためには、需要の抑制によ
り対応せざるを得ない。そこで、産業界に最大限の電力の使用抑制を求める
こととし、本日、中山政務官から、日本経済連合会及び日本商工会議所にお
願いしたところ。
4. 具体的な需要対策として、産業界におかれては、産業用の電力需要、業
務用の暖房、照明、給油等の電力需要について、最大限の使用抑制をお願い
したい。また、夜間に電力需給が逼迫する可能性も高いことから、夜間のネ
オン等の使用についても自粛ありたい。
5. これらの措置によっても相当量の供給不足が生じる場合、域内全域に及
ぶ不測の大規模停電を防止するため、東京電力及び東北電力において、予見
性のある形で地域ごとの「計画停電」を行う可能性がある。仮に「計画停電」
を行うときは、国民生活に与える影響を最小限にするため、政府及び関係事
業者が一体となって、万全の対策を講じる予定。
6. こうした異常事態にかんがみ、国民の皆様におかれても、不要不急の電
気機器の使用を控えるなど、最大限の節電に御協力願いたい。(以下引用)
海江田はこの時点でも「(東電に対し)最大限の供給力を確保」と「(大口需
要家に)最大限の電力の使用抑制」を要請していますので、「輪番停電」には
最後まで反対していたと推測されます。中山義活政務官も海江田の会見前に経
団連を訪問。恐らく「需給調整契約」に基づく協力要請だったのではないかと
思われますが、時事通信では「輪番停電への協力要請」と報じられています。
(時事通信3月13日(日)14時38分より以下引用)
経済産業省の中山義活政務官は13日、都内で日本経団連の中村芳夫専務理事
と会い、東日本大震災による電力供給不安に関連して「産業界には、東京・
東北電力管内で最大限の電気の使用抑制を求めたい」と述べ、東電が検討し
ている「輪番停電」への協力を要請した。(引用終わり)
日経新聞(2011/3/13 13:08)には「中山 経産政務官は『産業界は最大限の電
力使用抑制を』と要請。東京電力・東北電力の電力供給地域外への生産シフト
なども求めた。」とあるだけで、「輪番停電」への協力要請だとは言っていま
せん。
菅首相はさらに外野の立ち位置で、話を聞いたときには既に外堀も内堀も埋め
られていた感があります。(読売新聞2011年3月13日19時56分より以下引用 )
菅首相は 13日夜、首相官邸で 国民向けのメッセージを発表し、東京電力が
14日から計画停電を実施することを了承したと明らかにした。
首相は、「国民に大変な不便をかける苦渋の決断だ。しっかりした対応をし、
情報を提供していく」と述べ、理解を求めた。(引用終わり)
▼「輪番停電」の発案者
「輪番停電」は東電も当初考えておらず、経済産業大臣も、もちろん菅首相も
知らないところで、経産官僚とマスコミがグルになって既成事実化し、石原都
知事には根回しがあったという構図が明らかになりました。もともと東電は意
思に反してやらされる側だったので、実施前夜になっても、23区が含まれるか
どうか答えられなかったのだと推測されます。そして、14日になってもできる
だけ停電は回避しようとしたところ、マスコミにバッシングを受けたと考えら
れます。
それでは一体誰が「輪番停電」を言い出したのでしょうか? 不思議なのは、
産業界から当然予想される猛反発が出ないことです。大企業にとっては対応可
能な「需給調整契約を発動」の方がはるかに影響が少ないはずです。
「経団連は16日の会長・副会長会議で、停電対象を大きく産業用や家庭用、病
院用などに分け、それぞれの事情に応じた停電手法に改めるよう東電に求める
ことを決めた。産業用は、停電を丸1日実施した後、数日間はとぎれることな
く電気を使えるようにするなど、工場の生産体制に合わせたやり方が望ましい
としている」(2011年3月17日19時12分 読売新聞)などと 実施前でもわかっ
ていただろうことを今さら言い出しています。産業界も騙されていたのでしょ
うか? さて、読売オンライン「用語解説」に、「輪番停電」の解説がありま
す。(以下引用)
行きすぎた電力自由化で需給がひっ迫した米カリフォルニア州が、2001年に
行った計画停電。地域をいくつかのブロックに分け、順番に一定時間ごとに
停電させた。操業停止に追い込まれた工場が続発したり、信号機の停止で交
通事故が多発するなど、大きな影響が出た。(引用終わり)
経験者はアメリカでした。そして、大混乱になるのも経験済み。すると、発案
者はアメリカで、首都圏を大混乱に巻き込むことが目的だった疑いがでてきま
す。具体的にはアメリカのどの部門が関与しているのでしょうか? 疑わしい
のは彼らです。(NHK3月13日 9時30分より以下引用)
福島県の原子力発電所で起きた事故を受けてアメリカの原子力規制委員会は、
専門家2人を派遣したことを明らかにしました。
2人は原子炉の専門家で、USAID=アメリカ国際開発庁の緊急援助隊の一員と
して、13日、日本に到着したあと、日本側の専門家と今後の対応などついて
意見を交わすということです。原子力規制委員会は、アメリカの原子力発電
所の管理や監督を行う政府機関で、ジャズコ委員長は「われわれは、世界で
も最も専門性の高い技術者を抱えており、できるかぎりの支援をしたい」と
話しています。(引用終わり)
彼らが日本で何をしているのかまったく不明ですが、興味深いのは枝野官房長
官の会見(14日午後4時15分)です。(産経ニュース 2011.3.15 01:16より以下
引用)
――米国の原子力規制委員会が担当者2人を日本に派遣したと発表した。ど
ういう支援を求めるか
「専門的な技術の分野だ。具体的に海外の専門家の皆さんの知見が必要な情
報があれば、適宜、その知見を活用させていただくべく相談する体制はとっ
ている。すみません。これは対応本部、全体の構造のなかでは、直接具体的
にこういうことを相談をするという状況は、報告を受けてはいない。専門家
のレベル同士では一定の連絡、相談はしている」
――東電の手に負える状況ではないような気がするが、海外支援は必要とい
う認識はないか
「今、私ども対策本部の立場、状況から見ているところでは、いわゆる技術
的な専門的な知識、知見の問題以上に、状況、情勢の正確かつ早期の把握と、
それに対して、原子力に対する知見が前提にはなるが、それ以外の対処手段、
その迅速さが問われてきている場面がこの間、主に続いてきたと私どもなり
には判断しているが、同時に原子力に関する、あるいは、原発のシステムに
対する専門的な知見が必要である状況については、さらに海外の専門家の知
見も活用できるよう、現場の専門家の皆さんに伝達をしたい」
――政府として、計画停電だが現実的に必要性が高いといつ把握したのか。
なぜ発表しなかったのか。最終決定は首相の発表のどれぐらい前か。なぜ遅
れたのか。
枝野「この状況の連続だ。正確に東電から可能性の情報として、本部に上が
ってきた時刻などについては、必要があれば改めて確認して報告したい。当
然、発表の前の段階で可能性については報告を受けた。そして、決定と公表
のタイミングだが、さまざまな最低限の発表にあたって、整理していく状況
について、整理されて、これでいこうということの段階からは、そうした大
きな時間差はなく公表させていただいたと記憶している。そのあたりの時間
的流れについては必要があれば改めて報告したい」
枝野の一連の発言は意味不明で、かなり動揺していることがみてとれます。こ
れまでの検証からも「輪番停電」は東電の提案とは考えられませんから、対策
本部に東電から提案が上がるはずがありません。だから「いつ把握したのか?」
と聞かれ、動揺したのでしょう。
アメリカの原子力規制委員会の2人が来日したのは13日ですから、その前に、
「輪番停電」のお膳立ては完了していたことになります。アメリカ側から「輪
番停電」の指示が出たことを機に、枝野が菅を裏切って、アメリカ・官僚・マ
スコミ連合軍と同盟を結び、海江田と菅、東京電力が見放されたという構図が
浮かんできました。
世界の環境ホットニュース[GEN] 788号 2011年3月22日
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
無「計画停電」決定までの舞台裏(2) 原田和明
福島第1原発事故との関連
マスコミが 東京電力の方針と異なる「計画停電」実施を報道した 背景に何が
あるのでしょうか? 経済産業省は海江田大臣にも報告せずにマスコミに情報
を流して既成事実化し、さらに東京電力が発案者であるかのように偽装したと
考えられるわけですが、その動機、目的は何が考えられるでしょうか? 私は
当初、福島原発事故への関心を逸らすためかと想像してみたのですが、事故の
規模から考えると、その程度で隠しとおせるものではありません。手段があま
りに拙劣で可能性は低いだろうと思いました。
東京電力が 震災翌日の 3月12日の未明に「需給調整 契約の発動」を検討して
いたのに、夜になって突然、「東京電力が輪番停電の実施を決めた」との報道
がなされたわけですが、最大のポイントは、その間に福島第1原発1号機で爆発
事故が発生していることとの関連です。福島第1原発の異常は、震災当日の夜
からわかっていました。
産経ニュース2011.3.11 21:16より以下引用。
政府は11日夜、東北・関東大地震の影響で自動停止した福島県の東京電力福
島第1原発の1、2号機で、外部からの電力供給が失われるなど緊急に対策を
講じる必要があるとして、原子力災害対策特別措置法に基づく初の「原子力
緊急事態宣言」を発令、現地対策本部を設置した。
枝野幸男官房長官は同日夜、同原発から半径3キロ以内の住民は避難し、3キ
ロから10キロまでの住民は屋内に待機するよう指示したと発表した。枝野氏
は記者会見で、「(同原発の)炉の一つが冷却できない状態になっている。
放射能は炉の外には漏れていない。今の時点で環境に危険は発生していない」
と述べた。(引用終わり)
このときに公表された資料には、福島第1原発の2号機をめぐる現状の記載事項
の中で「炉心損傷開始予想22時20分頃」「燃料被覆管破損予想、23時50分頃」
といった記載があったとのことです。(朝日新聞3月13日朝刊)
そして、問題の3月12日の出来事を時系列で列挙してみます。(深水英一郎氏
「福島原発事故時系列まとめ」より引用させていただきます。(以下引用)
●6時42分放射線量1000倍に 福島第1原発・中央制御室(毎日新聞)
●6時44分福島第1原発、避難区域10キロに拡大 放射線量8倍(日経)
●7時36分菅首相、福島第1原発近くに到着(毎日)
●7時36分第2原発でも緊急事態通報(NHK)
●7時46分福島第2でも重大事故 原子炉の圧力抑えられぬ状態(朝日)
●8時0分: 福島第2原発で作業員1人死亡 第1では1人が不明(朝日)
●12時33分: 東電幹部「燃料が損傷の可能性」 福島第1原発1号機(MSN産経)
●13時14分: 東電副社長が会見 停電で原子炉の空気圧下げは人力(MSN産経)
●15時36分:福島第1原発第1号機が爆発。4名負傷。白煙があがる。(この事
実は2時間隠蔽された。詳細が発表されるまで5時間を要した)
●16時半頃:福島第1原発にて爆発音。白煙が上がっているとの報告もあり。
作業員4名が怪我。(朝日新聞)
●17時45分:爆発音の発生を受け、官房長官が緊急会見。
●19時16分頃: 福島第1原発の避難指示が半径20キロに拡大された。
●20時20分: 福島第1原発第1号機の圧力容器へ海水注入が開始される
●20時30分: 菅直人首相が会見。続いて枝野幸男官房長官が会見。
(引用終わり)
東京電力はどの程度の規模の事故を予想していたかはわかりませんが、11日夜
の時点で少なくともしばらくの間、全原発の停止は覚悟したことでしょう。だ
から翌未明に「需給調整契約の発動」を大口需要家に要請することを検討し始
めたのでしょう。「点検虚偽記載事件」のときは、東京電力に全面的に非があ
ったため、「需給調整契約の発動」は憚られましたが、今回は震災という不可
抗力の面があり、大口需要家の同意を取り付けられると考えたことでしょう。
それが、原発の事故の規模がどんどんエスカレートして放射能が周辺に拡散し
ていくという状況の中で、火力発電にも大きなトラブルがあったとか、燃料の
調達ができなくなったとかの事情があれば別ですが、「需給調整契約の発動」
よりも企業活動に混乱を招き、国民の反感を買いそうな「輪番停電」に東京電
力が方針転換できるはずがありません。未だに火力発電にもトラブルがあった
との発表はありません。「輪番停電」を強行するということは、原発事故と並
んで、国民の東京電力に対する反感を高める効果しかないように思われます。
▼東京電力株がなぜか急騰
そこで、興味深いのは、東京電力の株価の推移です。原発事故はなかなか終息
しそうには見えず、さらに輪番停電で首都圏は大混乱となると、東京電力株は
下げ止まらずかと思いきや・・・。ヤフーファイナンスから3月9日以降の始値
と出来高を引用します。
3月 9日(水) 2,135円(3,468,900株)
3月10日(木) 2,151円(3,984,000株)
3月11日(金) 2,149円(7,070,500株)←震災発生
3月12日(土) 東京電力、未明に「需給調整契約の発動」を検討
15:30頃 福島第二原発で爆発、夜「輪番停電」実施の一報
3月13日(日) 夜、菅首相が「輪番停電」承認の発表
3月14日(月) 1,621円(1,775,800株)
3月15日(火) 1,221円(2,125,400株)
3月16日(水) 921円(6,251,000株)
3月17日(木) 741円(181,489,400株)
3月18日(金) 886円(113,368,000株)
福島第一原発で爆発事故が続いていたので、株価の暴落は仕方のないところで
すが、「輪番停電(計画停電)」は、さらに追い討ちをかける形になったと推
測されます。しかし、意外なことが16日から起こっています。東京電力株に、
ものすごい買いが入って、17日はついにストップ高となりました。この現象に
ついては次のように解説されています。(産経BIZ 2011.3.18 15:46より以下
引用)
東電株、ストップ高の948円 放水など原発事故の取り組みを好感
18日の東京株式市場で東京電力が6営業日ぶりに大幅反発し、ストップ高の
前日比150円高の948円で取引を終えた。11日の東日本大震災発生から前日ま
での5営業日で株価が63%下げた反動から、買い戻しが入った。
この日は午前中の取引でいったんストップ高を付けた。その後、売りに押さ
れる場面もあったが、午後に入って福島第1原子力発電所3号機に向けて地
上からの放水を再開したとの報道が伝わると、再び値を切り上げた。市場で
は「原発の冷却と放射性物質の拡散防止に向けた取り組みが着実に改善に向
かい始めたのを好感した」(日興コーディアル証券)との声が聞かれた。
(引用終わり)
テレビを見ていても、繰り出す手段がいずれも、まさに「焼け石に水」のよう
に感じていましたので、投資家が「着実に改善に向かい始めた」と判断した理
由がわかりません。枝野の会見も都合の悪いことを色々隠しているような雰囲
気があり、マスコミ報道もやたらと「安全」を言い立てて却って不安になると
いった感じで、どうもこの一連の報道はウソくさいなあと感じていましたが、
そこへ更に、「急激な円高」という不可解な現象が重なりました。
▼不可解な円高
震災で生産能力に大打撃があったはずで、企業の被害状況はこれから明らかに
なっていくという段階でなぜ「円高」なのでしょうか? 各紙とも解釈に戸惑
っています。(以下引用)
(産経新聞2011.3.17 20:57 より)
日本企業は、外国為替市場の円相場が「想定を超えた急騰テンポ」(金融関
係者)で戦後最高値を突破した事態に強い危機感を抱いている。東日本大震
災からの復興に動き始めた直後に襲いかかった「超円高」に基幹産業の輸出
メーカーは持ちこたえられるのか。震災と円高のダブルパンチへの対応が迫
られている。(引用終わり)
(東京新聞2011年3月16日 朝刊より)
東日本大震災以降、外国為替市場で円高ドル安の流れが続いている。震災や
福島第一原発事故への懸念から、日本から資金が逃げて円が売られ、円安が
進むのが自然なはず。なぜ円が買われるのか。背景には、過去の震災でもみ
られた投資家の思惑と、世界の中では安全資産とみられる円への資金の流入
がある。(中略)震災後に円高が進んだのは、一九九五年一月の阪神・淡路
大震災でも同じ。同年四月、円は一ドル=七九円台の過去最高値を記録した。
当時の投資家は、保険会社が多額の保険金支払いに備え、海外に投資した外
貨資産を円に買い戻す「レパトリ」(自国への資金回帰)を進めると連想。
為替市場で、円買いが加速した。(引用終わり)
この見方に対して、日経新聞は否定的な見解です。(日経新聞2011/3/17 0:44
より以下引用)
Q 日本の損害保険会社が保険金支払いに備えて円買い・ドル売りを進めて
いるとも言われるね。
A 実際には、保険会社の円買いは少ないと言われている。ゴールドマン・
サックス証券の試算によると、国内損保業界の支払予想額は6千億円強。大
手3社の手元資金は1兆円近くあるため、わざわざ海外の資産を売って国内
に資金を戻す必要性は低い。ただ、被害がどこまで拡大するか分からないた
め、「損保の円買い」がまことしやかに語られている面もある。実際のお金
の動きというよりも、投機が円相場の動きを大きくしているといえる。(引
用終わり)
福島原発事故が予断を許さない状況の中で東京電力株が大量に買われたり、突
然の円高が起きたりと不思議で理解不能なことばかりです。ところが、この2
つを重ねてみると、ある事情が浮かんできます。
▼東京電力は外資が買収か?
アメリカドルの交換レートと東京電力の株価を並べてみると次のようになりま
す。
3月11日(金) 82.91円(7,070,500株)
3月14日(月) 81.80円(1,775,800株)
3月15日(火) 81.67円(2,125,400株)
3月16日(水) 80.73円(6,251,000株)
3月17日(木) 77.66円(181,489,400株)
3月18日(金) 78.99円(113,368,000株)
東京電力株が買われ始めたタイミングと円高のタイミングが一致しています。
「円高」は外資が東京電力株を大量に買い漁るために膨大な「円」を必要とし
た結果と見ることはできないでしょうか?「輪番停電」は東京電力株をさらに
暴落させるための手段だったとも考えられます。東京電力の 発行済 株式数は
1,607,017,531株(ヤフーファイナンス)ですから、2日間で発行済株式数の実
に18.3%が買収されたことになります。これまでの筆頭株主はウィキペディア
「東京電力」によると第一生命4.07%、2番目が日本生命の3.90%(2009年9月
30日現在)ですから、すでに首都圏の電力供給を担う東京電力が外資の手に落
ちた可能性があります。
東京電力株の購入に必要な資金量を試算してみます。
3月17日分 741円×181,489,400株=1,345億円
3月18日分 886円×113,368,000株=1,005億円
わずかこれだけの資金で買収に成功したことになります。
▼財務省も加担か?
さて、日銀は「急激な円高」対策として18日に円売り介入にでました。(産経
新聞 3月19日(土)7時57分配信より以下引用)
円相場が一時1ドル=76円台前半の史上最高値を更新する急激な円高の進行
を受け、先進7カ国(G7)の財務相・中央銀行総裁は18日朝、緊急の電話
会議を行い、円売り・ドル買いの協調介入で合意した。また共同声明で「必
要とされるいかなる協力も提供する用意がある」と表明した。日本を皮切り
に各国の通貨当局が順次、介入を行い、円相場は、介入前の79円台前半から
一時82円まで3円近く円安に戻った。
日銀が午前9時に東京市場で口火を切り、市場関係者によると、1日当たりの
介入額は2兆5千億円規模に達したとみられる。昨年9月に単独で行った約2兆
1250億円を上回り、過去最高に達したもようだ。(引用終わり)
ところで、日本企業が震災から立ち直り、従来の生産体制を取り戻して輸出に
転じられる見込みはまだ立っていません。増産体制に入れても製品の多くは輸
出にまわすよりも復興のために内需に回る可能性が高く、当面は復興資材を輸
入に頼る場面も多いはずです。震災に遭わなかった各地の原発も点検を迫られ
るはずでエネルギー供給における火力発電への依存度が高まると推測され、石
油製品価格はこのところ急騰しています。従って今後特に原油輸入が急増する
と見込まれ、しばらくの間輸入超過も仕方ない日本経済にとって円高は当面望
ましいのではないかと思われます。
それなのになぜ財務省は震災直後の今の段階で、輸出産業への配慮を口実とし
て「円安」政策をとる必要があるのでしょうか? 日本が買うべきは石油であ
ったはずなのに、ドルを買ってしまいました。経済産業省に続いて、財務省は
外資への資金(円)提供という形で、外資の東京電力買い叩き工作に加担した
ということはないのでしょうか。首都圏の重要なライフラインのひとつを外資
に握られるとどうなるのでしょうか? 今こそ東京電力を国民が守らなければ
ならないのではないかと思います。
世界の環境ホットニュース[GEN] 789号 2011年3月23日
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
無「計画停電」決定までの舞台裏(3) 原田和明
▼「企業の使用制限検討」は順番が逆
政府と東京電力が夏の需要増に備えて企業、工場に使用制限を課す検討に入っ
たと 3月23日報じられましたが、従来「企業に対する使用制限」は供給量に限
界を来たした場合に「輪番停電」よりも先に行なわれるべきものでした。順番
が逆なのです。
毎日新聞(2011年3月23日 2時33分)より以下引用。
電力:夏の需要増で企業、工場の使用制限 政府・東電検討
政府と東京電力が、冷房需要が増える夏場に、政令で事業所や工場などの電
力消費を強制的に減らす「使用制限」実施の検討に入ったことが22日、分か
った。計画停電では夏のピーク時は乗り切れない可能性が高いため。
東電は夏までに、火力発電の復旧などで5000万キロワット程度の供給能力を
回復させたい考え。それでも、夏のピーク時には6000万キロワット超の需要
が想定され、供給不足が生じる。現行の計画停電だと、5グループ中3グルー
プを同時に停電させないと間に合わない規模だが「停電の回数も増え、家庭
や事業所への影響が大きい」(東電幹部)。このため、電気事業法の規定に
基づいて政府が大口需要家の使用電力に制限を設け、電力消費を減らす検討
に入った。
同法によると、経済産業相が定める政令で大口需要家に使用電力量の制限を
設けることができる。第1次 石油危機の74年に発動した際は、事業所などに
ネオン消灯や営業時間 短縮などによる石油・電力消費の1割削減を求め、15
%程度の消費抑制効果があった。(引用終わり)
政令で「使用制限」を課すというのも国民を納得させる情報操作です。大口需
要家が安い電気料金を適用してもらうための対価として、緊急時の節電に協力
するという「契約」を東京電力が実行するだけの話なのです。ところで、記事
にある電気事業法は、電気事業者(東京電力など)の供給義務について次のよ
うに定めています。(「電気事業法」より以下引用)
(供給義務等)
第十八条 一般電気事業者は、正当な理由がなければ、その供給区域におけ
る一般の需要(事業開始地点における需要及び特定規模需要を除く。)に応
ずる電気の供給を拒んではならない。(引用終わり)
逆に言えば、「正当な理由があれば電気の供給を拒むことができる」と読むこ
とができ、今回の「輪番停電」は震災と原発事故による過度の供給不足を理由
として第18条違反にはあたらないと解釈することもできます。しかし、東京電
力は大口需要家との間に電力危機の場合使用制限を強制できるとの「需給調整
契約」を結んでいるのですから、「需給調整契約の発動」をしてもなお供給不
足が解消されない場合でなければ、割高の電気料金を支払っている一般家庭が
一方的に供給を止められる「正当な理由がある」とは認められません。従って、
「需給調整契約の発動」をしない段階での「輪番停電(電気の供給拒否)」は
電気事業法第18条違反にあたると考えられます。
▼騙しのテクニック
実際、経産官僚たちは次の記事のように「需給調整契約」のことを明かさずに、
菅首相を説得したのではないかと推測されます。
「東電の供給力は現在、夜間の電力で水をダムにくみ上げて昼間の発電に使
う揚水発電などを含めて3700万キロワット。今後、揚水ダムの水を使い果た
すと供給力は3100万キロワットに落ちる見通し。産業活動が本格化する14日
の需要は4100万キロワットが見込まれ、輪番停電でしのぐしかなくなった」
(産経ニュース2011.3.12 21:24)
しかし、経済産業省が想定していた3月14日時点の需要は 最大でも3700万kWで
したから、「需給調整契約」を発動すれば、3200万kW程度に抑制することは可
能だったのです。東京電力の供給能力は3300万kW(3.16東電プレスリリース)
でしたから、「輪番停電」は必要なかったと考えられます(実績も3100万kW)。
それなのに、菅首相は騙されて了承させられたと推測されます。
第1回で 大口需要家の使用制限での節電効果を10%と仮定して400万kW の節電
(冬場の平均的需要量を4000万kWとして)としましたが、第1次石油危機での
15%という実績を他の日にも適用して再計算してみます。大口需要家に使用制
限を課してもなお供給不足に陥る可能性があった日を●で、供給が上回ると推
定できていた日を○で示します。
○3月13日の需給予測(3.13 東電プレスリリース)
需要想定 3,700万kW(18時~19時) ※実施前
供給力 3,700万kW
●3月14日の需給予測(3.13 東電プレスリリース)
需要想定 4,100万kW(18時~19時)→3,480万kW
供給力 3,100万kW
(※需要増が予想されていたのに水力分が一切含まれていない。水力を活用す
れば前日並みの供給は可能だったはずで「輪番停電」は回避できた。意図的に
供給を減らした疑いあり。)
○3月15日の需給予測(3.13 東電プレスリリース)
需要想定 3,700万kW(18時~19時)→3,145万kW
供給力 3,300万kW
○3月16日の需給予測(3.16 東電プレスリリース)
需要想定 3,500万kW(18時~19時)→2,975万kW
供給力 3,300万kW 最大電力需要量は3,250万kW
○3月17日の需給予測(3.16 東電プレスリリース)
需要想定 3,800万kW(18時~19時)→3,230万kW
供給力 3,350万kW 午前中に3,292万kW
●3月17日の需給予測(3.17 東電プレスリリース)
需要想定 4,000万kW(18時~19時)→3,400万kW
供給力 3,350万kW
●3月18日の需給予測(3.17 東電プレスリリース)
需要想定 4,000万kW(18時~19時)→3,400万kW
供給力 3,400万kW
○3月20日の需給予測(3.20 東電プレスリリース)
需要想定 2,900万kW(18時~19時)
供給力 3,450万kW
○3月21日の需給予測(3.20 東電プレスリリース)
需要想定 3,400万kW(18時~19時)
供給力 3,400万kW
○3月21日の需給予測(3.21 東電プレスリリース)
需要想定 3,400万kW(18時~19時)
供給力 3,550万kW
○3月22日の需給予測(3.21 東電プレスリリース)
需要想定 3,700万kW(18時~19時)→3,145万kW
供給力 3,550万kW
○3月22日の需給予測(3.22 東電プレスリリース)
需要想定 3,700万kW(18時~19時)→3,145万kW
供給力 3,700万kW
○3月23日の需給予測(3.22 東電プレスリリース)
需要想定 3,800万kW(18時~19時)→3,230万kW
供給力 3,750万kW
こうしてみると、「需給調整契約の発動」だけで「輪番停電」は十分に回避で
きたと推測されます。●とした3月17日と18日も需給ギャップは ほとんどあり
ませんから「輪番停電」を何とか回避できた可能性があります。東京電力が当
初検討していたプラン通りでよかったのです。
ところで、「輪番停電」初日の3月14日の供給力は 需給ギャップが大きく見え
るように意図的に細工がされていると思われます。「揚水ダムの水を使い果た
すと供給力は3,100万キロワットに落ちる」(産経ニュース2011.3.12 21:24)
ということですから、3月14日の供給力3,100万kWには水力発電分が一切算入
されていないことになるからです。
水力発電にトラブルがあったわけではありません。水力発電への震災の影響は
3月12日午前中に「福島県内で5発電所が地震により停止中(山梨県内の発電所
は復旧済み)」でしたが、午後9時までに全発電所が復旧しています。(東京電
力3月12日プレスリリース)ですから、需要の少ない13日に 水力発電分をフル
稼働させておいて、供給不足が懸念されていた14日に水力発電分が一切算入さ
れていないのは、意図的と考えざるをえません。
▼柏崎刈羽原発は稼働中
福島原発の事故処理が連日報道されていることから、柏崎刈羽原子力発電所も
緊急停止しているのかと思っていましたが、震災直後でも「1、5、6、7号機が
通常運転中(2~4号機は定期検査中)」で、「3月12日午前3時58分頃に、長野
県北部で発生した地震による停止はありません」(東京電力 3月12日プレスリ
リース)とのことです。
▼火力発電所が被災
前回までは、東京電力管内の火力発電所の被災状況が発表になっていなかった
ので、火力発電所は無事だったのではないかと推測していましたが、火力発電
所も被災していました。東京電力管内の火力発電所の被災状況、ならびに再開
の見通しが3月19日に東京電力より発表になりました。(日経新聞 2011/3/19
21:18より、以下引用)
東電の発電能力、震災前7割に回復へ 2火力再開で
東京電力の藤本孝副社長は19日、東日本大震災で停止した東扇島火力発電所
(川崎市)を3月中、鹿島火力発電所(茨城県神栖市)を4月中に全面的に運
転再開する見通しを明らかにした。他の火力発電所の稼働率も引き上げる。
4月末までに発電能力を現状より2割高い約4200万キロワットに増やし、震災
前の約7割に回復させる。ただ需要が拡大する夏場の水準にはまだ届かない。
地震で停止した東電の発電所は福島第1、第2原子力発電所(計900万キロワッ
ト強)と、東扇島、鹿島、広野(福島県広野町)、常陸那珂(茨城県東海村)
の4か所の火力発電所など。このうち、東扇島の発電能力は全体で約200万キ
ロワット、鹿島全体で約400万キロワット。2つの火力発電所が 全面的に再
稼働すれば、合計で約600万キロワットの発電能力を上積みできる。
東電は稼働中の火力発電所設備でも定期点検の期間短縮などで設備稼働率を
引き上げる考え。ガスタービン発電設備の調達も進めており、電力不足解消
のため、火力の発電能力を積み増す。
東電の被災後の電力供給能力は他社からの受電分も含めて約3400万キロワッ
ト。火力発電所の再立ち上げなどが進めば、供給能力は大幅に増える。しか
し広野と常陸那珂は需要期の夏までに「復旧できるか今のところ分からない」
(藤本副社長)という。
東電は通常、冬場で5000万キロワット、夏場で5500万~6000万キロワットの
電力供給力が必要。電力不足を完全に解消するには時間がかかる見通しで、
東電は「夏には東京都の千代田、中央、港の3区を除く20区でも本格的に計
画停電を実施せざるを得なくなるだろう」としている。(引用終わり)
広野と常陸那珂が復旧のメドが立たないのは、福島原発に近いことが理由だと
思われます。広野と常陸那珂の発電能力はウィキペディア「東京電力」による
と、
常陸那珂火力発電所(茨城県) 100万kW
広野火力発電所(福島県) 380万kW
です。一方、ウィキペディア「柏崎刈羽原子力発電所」によると、同所で稼働
中の1、5、6、7号機の定格出力は「1、2号機110万kW、3、4号機135万kW」です
から、ほぼ広野と常陸那珂の発電能力に匹敵します。やはり、5月以降の 東京
電力の供給能力は、全原発が停止した場合と同じと考えて差し支えないと思わ
れます。2003年4月には「需給調整 契約の発動」なしに切り抜けているのです
から、今回は利用制限を課すことで「輪番停電」は回避できると思われます。
▼夏を乗り切れるか?
私たち一般家庭の節電意識が試されるのが夏です。(時事通信 3月23日(水)1時
0分配信より以下引用)
計画停電、夏も不可避=より大規模の可能性―東電
東京電力の藤本孝副社長は22日の記者会見で、今年夏の電力需給見通しにつ
いて「1000万キロワット程度(の不足が)発生するのではないか」と述べた。
その上で、計画停電の実施は「避けられない」との認識を示した。現在実施
中の計画停電は 500万キロワット前後の供給不足が見込まれるケースでの対
応。今夏に、より踏み込んだ需要抑制がなければ、計画停電の規模が大きく
なる可能性がある。
東電は、点検中の火力発電所の運転前倒しや他社からの電力融通などで供給
力を現状の3500万キロワット程度から 4月末までに4200万キロワット程度へ
高め、5月の大型連休明けに計画停電をいったん終えたい考え。
ただ、夏場は例年、冷房での使用量が増え、電力需要が6000万キロワット前
後に達する。藤本副社長は夏に向け「5000万キロワット以上は確保したい」
と電源の確保を急ぐ方針を示したが、それでも不足する見通しだ。さらに、
冬の電力需要も5000万キロワットを超えることから、来冬の計画停電も「回
避できるか分からない」としている。(引用終わり)
夏に向け5000万キロワット確保できれば、真夏の電力需要6000万のうち17%を
カットできれば乗り切れることになります。「需給調整契約の発動」15%、一
般家庭の節電 5%の組み合わせでよいのです。なぜ節電努力を訴えずに、「計
画停電」をちらつかせて脅しをかけるのでしょうか?「やっぱり原発は必要だ」
と日本人に思い込ませたい工作の一環でしょうか?
世界の環境ホットニュース[GEN] 790号 2011年3月26日
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
無「計画停電」決定までの舞台裏(4) 原田和明
3月12日未明の時点で東京電力は 週明けに想定される管内の需給ギャップに対
し、これまで何度か経験がある「(大口需要家に対する)需給調整契約の発動」
を検討していたにも関わらず、夜になると突然マスコミから「東京電力が輪番
停電実施」と報じられました。輪番停電そのものも米国カリフォルニア州で大
混乱を引き起こしたという実績があり、今回も首都圏を大混乱に陥れるだろう
ことは容易に想像がついたはずです。
それに、「需給調整契約の発動」は単なる契約の実行ですが、強制停電となる
と電気事業法違反の可能性があります。「需給調整契約の発動」でもなお電力
危機が回避できない 場合に、政府、および管内住民に 要請するという順番の
はずなのです。しかも方針転換した12日は福島原発で爆発事故が発生していま
す。なぜ わざわざ東京電力が さらに国民の反感を買うような強制停電に突如
方針転換したのか? これが「計画停電」に関する私の疑問の出発点です。そ
して、調べれば調べるほどヘンなことばかり出てきます。
▼東電の需要想定量はデタラメ?
前回、東京電力が発表した需要想定量をもとに、「需給調整契約の発動」だけ
で計画停電は回避できた可能性が高いと結論づけましたが、この需要想定量は
根拠がない数値であることが明らかとなりました。需要量は最初から供給能力
の範囲内だったかもしれません。枝野官房長官が記者会見で、「計画停電」実
施の可否を決める基礎データ(電力の需給量)は東京電力が出してくるものを
鵜呑みにしていることを白状しています。(3月18日午後4時48分から開かれた
官房長官記者会見-朝日新聞-から以下引用)
――計画停電。本日、東電の技術者に聞いたところ、電力量の数字は東電側
から政府に提出していると。
それぞれの個別の日々によって時間帯によって電力需要の見通しについては
変化しているが、それぞれについて一定の報告は受けている。
――電力需要量も東電の数字をもとにしているということですね。
国民の需要量と実際の需要で使われた電力量、それぞれについて、そのつど
そのつどではないが、報告を受けている。
――政府のオリジナルの数字は持っていないということですね。
これは当然、電力消費量は電力会社が供給しているものだから、その消費量
を把握できているのは当然東京電力。
――東電の言いなりじゃないか。
実際の需要見通しだけではなくて、実際に供給された電力量、消費された電
力量についての報告も受けている。 (引用終わり)
福島原発の対応を政府に依存し、国民に多大な不安を抱かせている東京電力が、
政府に対し裏付けのない数値を報告して、経済産業省もその数字の妥当性を検
証しないまま、電気事業法違反の疑いがある計画停電をすんなり承認している
というのはどういうことでしょうか? 東京電力の背後に経済産業省がいて、
東電は経済産業省の指示通りに動いているだけで、経済産業省が輪番停電を正
当化できるように、都合のよい数字(需要想定量が供給量を上回る)を東京電
力に出させていると推測されます。官邸は、経済産業省の言いなりに輪番停電
を承認しているものと思われます。
▼官邸は誤情報をつかまされている?
官邸は原子力の専門家から騙されているのではないか? と危惧する記者がい
ました。(3月18日午後4時48分から開かれた官房長官記者会見―朝日新聞―か
ら以下引用)
――官邸に情報が上がっていない、官邸が誤情報をつかまされているのでは
との危惧がある。海外に情報を出しているが、齟齬(そご)がある。アメリ
カ、イギリス、フランスは福島原発から80キロ圏外への避難を言っている。
日本政府は30キロ。地域住民が心配している。
日本政府としては、いま様々お話あったが、いま私どもが把握している専門
家の意見を含めたデータのなかで適切と思われる退避に対する指示等を出し
ている。その数字の違いについては、アメリカ政府の方のなかからも日本政
府の判断は適切であるという趣旨のご発言も出ていると承っている。
――オバマ米大統領は80キロ圏外に出ろと発表。
それは我が国のまさにきちっと責任ある立場として実際に得られているデー
タ、情報、専門家の分析に基づいて、日本政府としては国民の皆さんに対し
て適切な判断として、いまの指示をさせていただいている。
――長官は1週間前は3キロと言った。それから10キロ、20キロ、30キロと。
不信感を生む結果になっている。
私はそれぞれの事態の状況に応じて、その時点で必要とされる判断を専門家
の皆さんの意見をふまえて政府として判断したものを伝えさせていただいて
いる。(引用終わり)
米国が「80キロ圏外に出ろ」と言っているのに日本はなぜ20キロでいいのか?
という疑問が質問した記者にあったのでしょう。実は「20キロ」には根拠があ
りませんでした。(産経新聞 3月20日(日)7時56分配信より、以下引用)
福島第1原発から放射性物質が漏れている問題で、政府は原発から半径20キ
ロ圏内の住民に「避難指示」を出し、20~30キロの住民に「屋内退避指示」
を出している。この範囲はどういった根拠で決められたのだろうか。
原子力安全委員会が作成した「原子力防災指針」では、原子力発電所から約
8~10キロの範囲を「防災対策を重点的に充実すべき地域」として指定。
(中略)各自治体もこの指針を基に防災計画を作成。福島県もこの指針を基
に第1原発と第2原発から半径10キロの範囲を重点地区とし、避難所もこの外
に指定していた。11日の地震発生直後、第1原発から3キロ圏内を避難させ、
10キロ圏内に屋内退避指示が出たのもこのためだ。
しかし、事態は想定より深刻だった。翌12日に第1原発1号機で水素爆発が
起きて計測値が急上昇すると、避難地域は20キロに拡大。15日には20~30キ
ロの住民に屋内退避指示が出された。
経済産業省原子力安全・保安院は「予想をはるかに超える事態が起きており、
20キロや30キロの根拠を明確に示すものはない。混乱が発生しないように、
さまざまなことを総合的に考慮して導き出した政治判断だ」と話す。
一方で、米政府は17日、日本政府よりも広範囲となる半径50マイル(約80キ
ロ)以内の米国人に避難を勧告した。これについて、東京大の野村貴美特任
准教授(放射線化学)は「海外からは国内の状況が正確に分からないので、
慎重になって いるのでは ないか。神経質になる必要はない」とした上で、
「旧ソ連のチェルノブイリ原発事故ですら避難範囲は30キロ。政府が30キロ
まで屋内退避指示を出したのは、最悪の事態を想定したもので、妥当な判断
だ」と話している。
過去の原発事故では、1979(昭和54)年の米スリーマイル島の原発事故で半
径10マイル(約16キロ)の住民が避難。茨城県東海村の 臨界事故では 半径
350メートルで避難、10キロに屋内退避指示が出されている。(引用終わり)
記事中の、東京大・野村貴美の説明も偽情報です。米国が「80キロ圏外に出ろ」
というのは福島市の測定値が参考になっていると思われます。(毎日新聞
2011年3月22日 19時42分より、以下引用)
福島県や文部科学省の測定値を毎日新聞が積算したところ、同原発の北西約
65キロの福島市では14~21日の間に、日本人が1年間に浴びる自然放射線量
(平均1500マイクロシーベルト)を上回る1770マイクロシーベルトに達した。
政府は「直ちに健康には影響しない」としているが、原発事故の収束が遅れ
れば、累積被ばくが問題になる恐れもある。
積算は、文科省や福島県が公表している 1時間当たりの放射線量を足し合わ
せ、14日午前9時~21日午後5時の累積放射線量を推計した。その結果、福島
市以外では、原発の南約50キロの福島県いわき市で 299.7マイクロシーベル
トに達した。(引用終わり)
日本人が浴びる1週間分の平均的自然放射線量は 約29マイクロシーベルトとの
ことですので、65キロ離れた地点でも風向きによっては60倍もの被ばく量にな
ることが実証されたわけですから、「80キロ圏外に出ろ」というのは妥当な指
示だと思われます。従って、枝野も(テレビ、新聞を通じて国民も)東大教授
らの学者グループに騙されていると考えられます。
▼枝野に口止めされた?
東大教授らの専門家グループを管轄している文部科学省も枝野を陥れようとし
た形跡があります。(毎日新聞 2011年3月16日 10時31分より以下引用)
東日本大震災:原発から20キロでも放射線量が高濃度
福島第1原発から北西に 約20キロ離れた福島県浪江町内の放射線量が、一般
の人の年間被ばく限度の2233~2890倍に当たる 1時間当たり255~330マイク
ロシーベルトに達していることが、文部科学省の調査で分かった。浪江町内
には介護施設などに避難できない住民が多数いるとの情報もあり、文科省は
「問題がある数値で官邸に報告した」と説明した。
調査は15日午後8時40分~同50分にかけ、同町内3地点で計測機器を積んだ
「モニタリングカー」を使って実施した。(中略)
文科省によると一般の人の年間被ばく限度は1000マイクロシーベルト、同町
内の数値は屋外にいると3時間前後で限度に近付くことになる。(中略)住
民の健康被害については「枝野幸男官房長官からコメントするなと指示があ
った」と説明している。(引用終わり)
文科省のコメントからは、いかにも枝野が情報操作を指示したかのような印象
を受けますが、それが文科省の狙いではないかと思われます。
菅直人首相は12日夜の記者会見で 福島第1原子力発電所の爆発を受けて避難区
域を半径10キロメートルから20キロメートル圏内に拡大したと説明した際、
「枝野幸男官房長官は、避難区域の拡大について『万が一の対応策として20キ
ロメートル圏内から退避してもらうことにした。念のために万全を期す観点か
らで、冷静に対応してもらいたい』と理解を求めた」(日経新聞 3月13日)と
のことです。
文科省の調査は20キロ圏外も「万が一の対応策」ではないことを示すもので、
さらに「枝野からコメントするなと指示があった」と公言するのは、学者グル
ープに騙されている枝野に責任を押し付ける効果を狙ったものと思われます。
このように、経済産業省、文科省、学者グループが一丸となって、国民の目か
ら原発事故を矮小化したり、責任を官邸におしつけようと努力している様子が
垣間見えます。